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第一章 part5 思い出

第一章 part 5 思い出


此所は第24区「無能」ギルド本拠地の二階、東から西へ日が沈み月光がギルド拠点周りの草原を照らし出す。明日は22区との練習試合がある。ケイにとってもアキにとっても今日は色々と疲れていて、じっくり休憩したいところだが・・・。


「あんたは、廊下で寝なさいよ!っていうか、何であんたと一緒の部屋なのよ~!」


静寂に包まれた草原を切り裂くように響くのは、ケイに向けられたアキの叫び声。まさに、お姫様が下僕に対して命令するような口振りで、突き刺さるような目線を向けケイに枕を投げつけてくる。


「嫌に決まってんだろ廊下で寝るなんて?!それとしょうがないだろ?空き部屋此所しかないんだからさ~。てかっ二人で仲良く使いますって啖呵切ってたじゃねーか!」


さっき、二人仲良く声合わせて「二人で仲良く使います!」って言ったのに、何ていう手のひら返し。廊下で寝るなんて、ごめんだと言わんばかりにケイは否定する。


「あっあれは言葉の綾ってやつよ!何、本気にしてんの?!キモいんですけど?!」


ケイの言葉に対しての反応なのか、自分自身で言った事に対しての恥じらいを持ったのかわからないが、アキは堪らず赤面し、ケイに罵声を浴びせた後プイッと目線を背ける。

何を思ったのかアキはケイから2メートルほど後退し、まるで変質者を見たかのような怯えた様子で視線向ける。


「年上のあんたと居ると貞操の危機を感じるわ・・・」


「おっ!お前なぁーー・・・」


散々言われたケイは、アキにありったけの怒りを言葉に変えようとするが、遮るかのようにガイヤが怒りの形相で怒鳴りつけにケイ達のいる部屋のドアを強く開ける。


「おい!お前らうるせーぞ!仲良く使わないなら外で寝かすぞ!」


「「ごっごめんなさーい!!」」


はぁ、っとため息をつきガイヤは頭を左手でかきながら下へ戻っていった。

ていうかやっぱり、俺達って相性良いよなーっと感じたケイだった。

結局ケイとアキは、都合良く二段ベッドが無い為押し入れにしまってあった布団を取り出し二人で背と背を向け合いながら使用する事になった。

俺達の部屋は、まさに殺風景で今まで使用されなかっただけあって必要最低限の家具しか置いてなかった。

一つしかない布団を独り占めしようとしていたアキを宥めるのに10分以上かかってしまった。あんたと布団を共有しないといけないなんて絶対無理!!って言ってたことを思い出す。

明日が22区との練習試合という事があってか緊張や焦燥感により中々寝つけなかった。ジィージィーっという虫の鳴き声が何重にも重なった虫時雨がケイの睡眠を阻害する。

目を開けふと、アキに問いかける。


「なぁ、起きてるか?」


「起きてるけど何か用?」


ムスッとした口調で聞き返して来た。

起きているのを、確認し先ほどふと思いついた質問を聞いてみた。


「アキはさぁ、何でギルドに入ろうと思ったわけ?」


「何であんたに話さないといけないのよ」


「い、良いじゃーねぇか!少し気になったからさ」


素直に答えてくれると思ったが、そううまく事は運ばないなこの女の前では。

アキは一つため息をつき、淡々と話始める。


「まぁいいわ・・・。特に深い理由があるわけでは無いのだけれど、英剣舞祭で優勝して父の後継ぎする事が私の夢なの。夢を現実にさせるためにはまずはギルドに入らないといけないからね。」


深い理由ではないとアキは言っていたが悪い思い出でも思い出したのかいつもの強い口調は無く少し寂しく弱々しい声音で話してくれた。ケイは気になった部分をアキに聞いた。


「父の後継ぎ?」


「そうよ、父はトンブ監獄の看囚だったの。あんたも知ってるでしょ?トンブ監獄襲撃事件。」


「あぁ・・・知ってる・・・」


ケイは、普段の口調より控えめに返事をした。

ケイは、この事件をよく知っている。まだ、明らかになっていない首謀者も、当時監獄内で何があったのか、どうして起こったのか。ケイはその全てを知っている。なぜならー。


「その事件で父は死んだの。私の目の前で・・・。」


ケイは、思い出した。あの時、監獄内にいた黒いワンピースに銀髪が特徴的な少女を。そうか、アキお前だったのかあの場にいたのは。


「すまない・・・。」


ケイはアキに掛ける言葉が見つからず、謝る事しかできなかった。


「いいわよ、もう昔の話だから・・・。じゃあ私、今度こそ寝るわね。もう話かけてこないでよ?!」


「あっあぁ・・・」


物静かに返事をした。

自己紹介の時、アキからハールドという名を聞いた時、聞いた事がある性だと思ったが今完全に思い出した。ハールドという名を名乗り俺達に勝ち目のない闘いしかけた看囚が居たことを。アキは覚えていなかった。無理もない監獄内は、暗闇の状態だった人の顔が認識出来るほどの灯りはなかったのだから。彼女の父を殺し、襲撃事件を引き起こした首謀者の一人が、「俺」だということに・・・。


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