第一章 part3 相性が良いのかもしれない
第一章 part3 相性が良いのかもしれない
バジェスト帝国第24区の中心部マギリヤ-ベルンから20km離れた見渡す限り草原のその場所に、そこはあるー第24区「無能」ギルドは。異能を持つ者は「無能」への抑圧や人道とされない言動や行動に誹謗する者は帝国にはいない。額にあるエノワールは、「能力者」と「無能」を分ける境界線となっている。境界線の立ち位置が違えば、差別や迫害の対象になり救済の手を差し伸べる者いなくなるだろう。それは、遺族や身内関係であったとしてもー。
「クッカカカカー!わりぃわりぃ。無能が来るのは久しぶりだったから、能力者共と思ってついカッとなってしまった。んでっ俺達のギルドに介入したいだっけ?まぁそうだよな、何処の区も無能と聞いて入れてくれるはずないかー。」
夕方5時頃を過ぎ、日が暮れ始め薄暗く俺達のいるギルドを照らす。家内で響き渡るのは、第24区ギルドの色合いの良い制服を身に付け、髪はエメラルド色が印象的な短髪の強面なガイヤという男の笑い声。俺達二人が「無能」だと分ければ、すぐに家に招き入れてくれた。テーブルを挟んで俺達二人椅子に座り向き合うようにガイヤが座っていた。家内は、長方形の大家族が問題なく暮らせるほどの生活空間であり、所々穴が空いていてそれを塞ぐかのように木の板で何ヵ所も打ち付けてあった。キッチンやソファー、剣やその他の武器を手入れするための作業台がいくつかあり、そこでカイトが自身の剣だろうか、手入れを行っていた。
ギルドのメンバーはガイヤを含め四人いる。家に入ってすぐ、背が高く黄金のように輝いている髪が腰の辺りまで伸びきっていて、一言で美男と呼べるほど整った顔立ちのカイトに冷たい視線を向けられながら疑い深いのか、「額を見せろ」っと一言言われ、「あっはいっ」
っと返事し潔く俺達は前髪上げ、男にしばらく俺達の顔周りを見たのち、「よしっメイクで隠してるわけでもないし、正真正銘の無能だね。」
なるほど、俺達も普段額に星を書いて「能力者」に紛れているのと同じように「能力者」もメイクで「能力者」である烙印を消す時もあるのか。でも、何の為に?
「歓迎するよ、ようこそ「無能」ギルドへ」
っと考えていると、最初の冷たい視線から温厚な目に変わり、カイトは優しく俺達を包むかのように腕を広げ歓迎をしてくれた。
何かを思い出したかのように、ガイヤは口を開く。
「あっそうだそうだ。名前をまだ聞いてなかったな。」
「じゃあ私から・・・」
「じゃあ俺から・・・」
二人の返事は見事に被る。
「って被せてこないでくれる?!キモいんだけど・・・」
「そっちが被せてきたんでしょっ!?後キモくないしー!」
「はぁーあんたねー、、、」
「ふっふふ仲良しなのね、お付き合いでもしてるのかしら?」
二人の言い争いを見て微笑ましそうに目向けているのは、エプロンを肩にかけ青みがかった銀髪を長く伸ばしたコップを3つおぼんに乗せこちらに向かってくるテレサだった。テレサは、ガイヤの家内であり先ほどカイトと一緒に紹介してもらっていたから知っている。誤解を生むような事を言われ俺達は慌てて否定する。
「「ちっ違います!!」」
狙っているかのように、またしても被る。もう、うんざりになる。
「だから合わせないでって言ったじゃない!」
再度始まった二人の言い争いに見かねたガイヤが話題を戻す。
「あっあのー良いか?そろそろ名前を聞いても。」
はっと二人は改まったかのように、だらけていた姿勢を正す。
「今度こそ、私から行くわね。私の名は、ハールド・フォン・アキレミス。名前長いからアキって呼んで頂いても結構です。ちなみにあんたは、話しかけないで。」
俺は、いきなりアキから会話禁止令が出てしどろもどろにもなりながらも、返事をする。ハールド、、、どこかで聞いた事がある名だった。
「なっ何でだよ!俺だって傷つく時は傷つくんだからな!あっそれと、俺の名前はノイザー・ケイです。ケイって呼んでください!」
「アキにケイだな。改めて歓迎するよ「無能」ギルドへ!」
ガイヤの歓迎の言葉を聞きアキは、パッと目を見開き正面にいるガイヤに顔を近づける。
「じゃっじゃあ、介入という事で良いんですか?!私を・・・私を入れてくれるのですか?!本当に・・・」
心底嬉しそうに、胸元近くで手と手を結ぶ。
ケイは悟った先程、ガイヤとの会話で聞いたが彼女は23区全てのギルドを周り続け最後に此処にたどり着いたと。各ギルドでどんな対応受け、どんな思いで此所に来たか。当然、不安だっただろう。
また、断られるのじゃないか。また、門前払いされるんじゃないかっていう不満が此所のギルドに来るまで、頭から離れる事はなかったに違いない。
世界は不条理だと不公平だと何度も思ったろう。なぜ私が、なぜ俺が無能なんだって、自分自身に何回も問いかけた。しかし、自問自答を繰り返しても答えは変わらず単純で残酷だった。なぜなら、運が悪かった、選ばれなかったで全て片付けられてしまうからだ。その答えに背を向け続けた昔の俺とは違うと感じた。彼女は、小さい頃から強い人間だったのだと心の底から思った。
俺は彼女をしばらく見た後ガイヤに目線を変える。
「あっあの!荷物とか色々あるので置きたいのですが・・・」
それを聞くとガイヤは、
「そうだなー、一階部屋は大体埋まってるしなぁ~悪いけど君たち二人で二階の大きな部屋使ってくれるかな?」
「わかりました・・・ってえぇ?!」
さっきまで感傷に浸っていたアキはガイヤと俺の会話を聞きすぐに反応する。
「はぁあああーーーー?!なななに言ってんのよ!こんなやつと一緒の部屋なんて無理無理無理!!」
仕方がないと言わんばかりにガイヤが提案する。
「じゃあ、外にある物置小屋で、、、」
「「二人で仲良く使わせて頂きます!!」」
もしかしたら俺達は相性が良いのかもしれない。