第一章 part2 俺達は・・・無能だ!
第一章 part2 俺達は・・・無能だ!
「はぁ、はぁ、やっと着いた~。ここがあの無能者だけを集めてる。「無能ギルド」かー・・・」
バジェスト帝国第24区の中心部マギリヤ-ベルン。10年間の間に急激に増加した「能力者」は、10年前のスラム街のような荒れた町並みを変え中世時代風に存在を変え、石造りで出来た建築物が並んでいる。石畳みで作られたメインストリートを学校帰りであろう学生が友達と談笑しながら歩き前髪で隠れていた額にあるエトワールが風によりちらつかせていた。
そう、「能力者」と「無能」を見分ける方法は簡単で、額の右上部に黒く塗りつぶされた星のマークがあれば「能力者」、なければ「無能」というシンプルな違いだ。異能は、遺伝や人の所業によって作られたものではなく、歳層関係なく突然変異によって現れるものである。つまり、家族5人いてその内の一人が異能が発症していないという事も当然ありうる。現在世界の九割以上が能力者であり、9割にも入れない人間は「無能」と罵られ迫害され学生の中では虐めの対象になっていて自殺が起こった事例もある。
ここ、24区に星の付いていない人間はいないー、いや居る事が許されない。
マギリヤ-ベルンの民は、24区の中でも一二を争うほど「無能」を嫌い迫害や近年不当な差別が重度を越え、「無能」を一つの場所へと追いやったー。そこが、今目の前にある24区の中心部から20kmも離れた見渡す限りの草原にそこはある。石造建築で二階建ての建物は、所々の壁の石材が砕けコケが繁茂し、「無能!!」っと誰の仕業かはわからないが、十中八九24区の異能者共の仕業だろうと大きくデカデカと落書きが書いてあった。屋根は所々穴が空いていて雨が降る時は、雨漏りが必須と言っても過言ではない位に半壊していた。「本当にこんな所で住めんのかー?」っと呟いていると、後方から声をかけられる。
「ねぇっあんたって、此所のギルドの人?」
声をかけて来たのは、一目見てわかるほどの美少女だった。煌めく銀髪は肩に届かない位のショートカットで、華奢な体つきに服の上からでもわかる豊満な胸は22歳独身の俺の心を揺さぶる。
少し冷えた春風が白銀の髪を揺らし桜の花びらやまだ色褪せていない落ち葉が彼女の周囲を舞い、より一層彼女を輝かさせた。俺がその美しさに目を奪われていると、
「ちょっと!聞いてんの?あんた」
「・・・あっあーごめんごめん。見とれて・・・じゃなくて、違う違う俺はこれからギルドに入れてもらうつもりなんだ。っていうことは、君も此所のギルドに?」
彼女は一つ嘆息し、腕を組む。
「ーそうよ。無能だけを入れるギルドがあるって五年前に聞いてね。此所が最後・・・」
最後の部分だけ聞こえなかったが、何かただならぬ思いを持って来たのだと肌で感じた。
「っていうか!何処のギルドもバカばかりだったわ!実力も見る前に門前払いばっかしやがって~、受け入れてくれたと思えば性的に見てただけだしもうなんなのよ!うぅ~~~~」
さっきまでの、重苦しい雰囲気はどこにいったのやら愚痴が止まらない。
「まぁいいわ、此所に入って目標を達成すればそれでいいし。んでっあんたも此所に来たって事は
「無能」なのよね」
突然俺に話が振られ驚きはしたが、すぐに対応した。
「あっあーそうそう俺も無能なんだ。本当に帝国の異能者共はわかってないよなー。無能でも、強い奴はいるのになぁー 一度実力見てから言えってのっ!」
「そうそう、本当にそうなのよ・・・って何であんたごときに同情されなきゃ行けないのよ!無能の雑魚は黙ってなさい!。」
ってあんたも無能だろ?!って言いたくなったがやめておいた。チラリと彼女を見て聞こえないくらいの声量でー。
「この女多分、めんどくさい系だ」
「何?あんた何か言った?文句でもあるわーー。」
「おいっ!家の外から声が聞こえると思ったらあんたら何者だ!見ない顔だな・・・どうせ24区の人間だろ?お前らの遊びに付き合っている暇はない!帰れ!」
会話を遮られ何かと思い声がした方に同時に振り向くとそこには、新緑の色となんら違いはない髪に、顔立ちは強面で眉をひそめ此方を睨んでいた。
俺は慌てて勘違いを正すため、すぐに訂正を入れた。
「ちっ違います!違います!俺は---俺達は、此所のギルド介入に来たんです!24区の異能者共と一緒にしないでください。信じられないなら額をみればいい、俺達は・・・無能だ!」