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第一章 part10 第二試合

第一章 part10 第二試合


「まずいわね、まさかラディが出てくるとは・・・」


アリスが眉をひそめながら言うと、「無能」ギルドがいるギャラリーに不穏な空気が漂う。

予想外のラディ登場に「無能」ギルドメンバー全員は意表をつかれた様子だった。

すると、アリスの後方で座っている険しい顔をしたガイヤが口を開く。


「アリス、アキにもしもの事があったら・・・頼む。お前にしか、奴は止められん。」


「わかってるよ、でももしかしたらアキなら・・・」


振り向く事をせず、アリスはガイヤに背を向けたまま少しの希望をアキに持たせつつ静かな声音で言った。


「あっあの~、ラディって奴はそんなに強いんですか?」


ラディをよく知らないケイが突拍子もなくアリスに聞く。


「強いも何も化け物よ。7年前、私達があの三兄弟に負けたって言ったけど実際には、ラディ一人に負けたって言った方が良かったかもね。」


ケイは肝を潰されたような顔をする。


「あっあいつ一人にですか?!しっ信じられない・・・。」


ケイの後方で座っているカイトが腕を組みながら口を開く。


「エディやラディには、苦戦を強いられたが何とかガイヤと俺でも勝てた。しかし、あと一人倒せば俺らの勝ちって時に、最後に現れたのがラディだった。俺とガイヤも全力を出した、しかしラディにはまったくと言っていいほど歯が立たなかった。」


「私達ギルドの中で、一番強いアリスでさえ負けちゃったの・・・けど接戦だったんだよ?!後ちょっとの所でね・・・。」


簡単にアリスは負けていなかった事を焦った様子でサレーネ言う。

いくら「能力者」とは言え、無限に体力があるわけではない。

「能力者」のエディやラディを倒したほどの実力者であるガイヤとカイト、それに「無能」ギルド最強と謳われているアリスを相手にすれば、疲労や能力発動時間にも限りがある為、基本立て続けの試合は二回までが限度だ。

それを踏まえてラディはやってのけた。

英剣無祭で名高いだけの実力は確かにある。

リング上に立つラディに視線を向けながら怪訝そうな顔をする。


「今の私なら、昔のアイツに勝てるかもしれない。けど、一試合目を見てわかったが、エディは7年前まで能力強化段階「中」のはずが、「極」まで進化を遂げている所から見て高い確率でラディも強くなっている。」


「無能」ギルドのメンバーが7年前より力を上げているように、「ジェスター」ギルドのメンバーも日々強くなっていると考えるアリス。


「もし、アリスの言ってる事が現実になったらこのギルドでラディを倒せる可能性があるのは、アキちゃんそれと、ケイ、君達だけだよ。」


サレーネはリング上で戦闘体勢に入ったアキに真剣な眼差しを向けた後、ケイに視線を返す。

サレーネだけじゃない、アリスやカイト、ガイヤが真剣な面持ちでケイを見ていた。

試合開始の合図が聞こえ、ケイはリングの地を蹴り走り出したアキを見つめながら口を開く。


「ギルドに入って初の練習試合でこんなにプレッシャーを受けるなんて思いもしませんでしたよ。まぁ・・・出来る限りの事は尽くしますよ。」




「『アーム 強化 強』、『レッグ 強化 極』!!」


ラディは能力の詠唱を咆哮のように叫ぶ。

腕と足の周りの大気が、額にある異能者の烙印が

山吹色の如く輝き出す。

リングの地を火花が散るほどの力で蹴り、風を切る音を響かせ電光石火の如くアキに詰め寄る。

軽く飛び槍を大上段に振りかぶる。

狂喜じみた笑みを浮かべ、鋭利に尖った矛先をアキの脳天めがけ振り落とす。

長剣の横腹で防御するのも容易ではないが、ここは後方にステップを使った回避が最善と考え、ラディが槍を振り下ろす直前に軽くジャンプし後ろへ退く。

アキに突き落としを回避され、勢いのまま切っ先がリングに衝撃音とともに突き刺さる。

突き刺さったリングの地の部分が破砕される。

ラディは、瞬時にリングから槍を引き抜き後退するアキに追撃を開始する。

ラディの右からの斬り払い、中段狙いの突き、左斜め下からの薙ぎ払いなどの連続攻撃をアキは捌く事はせず、後方へのステップ回避を行うばかりだった。


「逃げてばっかりじゃあ俺にかすり傷一つつけらんねぇぞっ!!」


そう言うとラディが、槍を思い切り体側に引きつけ勢いの乗った突き攻撃をアキの体の中心やや右に仕掛ける。


「今だっ!!」


アキは叫びカッと目を見開き叫ぶ。

上半身を屈め突き攻撃を避けると、アキは左足のつま先に力を入れ瞬時に間合いを詰める。

体を屈めた状態で、白銀のように輝く長剣を右斜め下から振り上げる。

『反逆の雷刀』アキのカウンター技。

相手の攻撃を避けた後、間髪入れずに窮屈な体勢から迅雷が如く斬り払う。

しかし、ラディは突き攻撃の体勢を咄嗟に変え、槍を回転させ逆手に持ちリングの地に突き刺す。

ラディは技を柄で受け止めた後、突き立てた槍を軸にしてアキの鳩尾狙いに飛び蹴りを仕掛ける。

アキはリングを強く蹴り飛ばし、ラディの回転力を込めた飛び蹴りをギリギリの所で避ける。

後ろに大きく飛び、アキはラディから十分な距離を取る。

相変わらず笑顔を崩さないラディを裏腹に、アキは一試合目の体力消耗が響いたのか、汗と荒い呼吸が止まらない。

ギルドの先輩方から聞いてはいたが、ラディはやはり強い。

スピードに関してはアキに引けを取らないほど速い ー いやアキより若干速いくらいだ。

英剣舞祭出場経験のあるギルドのリーダーを担うだけの実力は確かにあった。

アキは息を整え前傾姿勢で右足を引き足に力を極限まで溜める。

長剣を逆手に変えて『狂い刹那』の体勢に入る。

その姿を見たラディは、槍を斜めに持ち防御の体勢に入る。

ドンッと強く踏み切り風切り音とともに、コンマ数秒の内に長剣の届く間合いに入りラディの首下めがけ右横に薙ぎ払う。

並の人間の動体視力では追いつく事が出来ない速さで斬り払ったが、ラディは「おぉ~はやいはやい。」と呟き槍でがっちりと受け止める。

長剣の刃と槍の柄が強くぶつかり合う甲高い音が大きな室内中に鳴り響く。

『狂い刹那』を止められるとは思わなかったのか

、アキには驚きを隠せない形相があった。

アキはグッと歯を噛みしめ、間を空けず体を一回転させ追撃に転じようとするが、『狂い刹那』の反動により足が動かない。

身動きが出来ないアキをラディは見逃すはずもない。

ラディは尖った槍の先端を突き出すのではなく、槍の石突きをアキの鳩尾に直撃させる。

ドンッと鈍い音とともに嗚咽し、アキは突き攻撃により後方へ大きく後退する。

リングの地を削るように足を引きずりながら勢いを殺す。

リングの端ギリギリで留まり、腹を左手で抑えながらラディに目を向け眉をひそめる。


「・・・どっどうして・・・練習試合とは言え真剣勝負っ!女だからって情けはいらないわ。」


刃で突いていれば、アキに致命傷を負わせる事が出来たはずだ。


「なぁ~に、もう少しお前との試合を楽しんでみたくてなぁ~。まぁでもお前がそこまで言うなら、次から容赦はしねぇでやるが?」


「最初からそうしてちょうだい?容赦なんて能力者にされるほど虫酸が走るものはないわ。」


「しっかし、無能で俺とここまで闘えるとは思いもしなかったぜ。もし、お前が異能を持っていたのであればもっと良い試合が出来たかもなっ!」


叫ぶように言うとラディは、ドンッとリングの地を強く蹴る。

さらに、スピードの増したラディに動揺するもグッと長剣を右手で握りしめ、右斜め下から襲い掛かってくる槍を左斜め上の斬り払いで受ける。

衝撃がアキの右手に伝わり長剣が撥ね飛ばされる。

アキは、追撃を行う為瞬時に立て直し中段右横払いを始めに連続斬りを開始する。

刃と柄がぶつかり合う轟音と、時折刃と刃が捌き合う金属音とともに火花が散る。

苦しい顔のアキに対して、エディはまるで戦闘を楽しむかのような笑みを浮かべていた。

ギャラリーでラディとアキの凄まじく速い剣戟を見守る「無能」ギルドのメンバーには、喫驚の顔が張り付いていた。

それもそのはず、英剣舞祭で「邪道騎手」と恐れられるラディと互角に渡り合っているのだから。

傍から見ればそう見えるかもしれないが、実際はそうではなかった。

激しい受け、捌きの応酬の中、徐々にアキの体に掠り傷が刻まれていくにつれ、体力や精神力が削られ剣筋も乱れていく。

二十四連撃目の大上段からの振り下ろしをラディに弾かれる。

ここで攻撃の手を緩めれば必ず反撃を食らう。

しかし、アキに攻めいる体力はほとんど残っていない故にやることは一つ。

つま先に力を入れラディの追撃突きを左斜め下からの薙ぎ払いで弾き、アキは、「はぁぁぁぁーっ!」と気合いを入れ白き長剣を突き出す。

激しい体力の消費により、アキにとって次がラストの技となる。

一度だけでなく、目では決して追うことは出来ない十三連突き(『泉下の雨』)を仕掛ける。

アキには、この攻撃が必ず通ると確信していた。

槍は弾かれている上に、現状の体勢からラディは突き攻撃を受け流す事は不可能と考えたからだ。

しかし、ラディの顔には危機と感じさせる様子はなくむしろ笑っていた。

そのままラディは一度バックステップした後、アキの『泉下の雨』を槍の柄で正確に全て受け止めてみせた。


「ーーーー!?」


アキは目を見開き唖然とする。

止められるはずないと思っていた、しかし技量に関しても力量に関しても全てに対してラディに、劣っている事を思い知らされる。

ラディの判断力、戦闘知識に経験値はアキの数倍上だった。

異能だからしょうがない、一試合目で体力が減っていたからしょうがないなどと片付けられるものではない、能力使わずともラディは勝てていたのかもしれない。

異能という壁だけだという浅い考えに、アキは強く平手打ちをされた気分だった。


「突きってのは、こうやるんだよぉっ!」


正面にいたラディが一瞬にして、姿を消す。

ステルス系統の能力なのか?と考えたが、「ジェスター」ギルドのメンバーは身体能力向上系統の能力者が大半だ。

じゃあ一体どこへ?と刹那の内に考えた末、アキはすぐに上を向く。

真上には、アキの体を覆い尽くすほどの無数の矛先があった。

ラディの代名詞とも言えるこの大技『冥界驟雨(デスレイン)』は、高速の突き攻撃に緩急をつける事により、相手の眼に切っ先の残像を百個以上写し出す事が出来る。


「無能でよく頑張ったよ、じゃあな『冥界驟雨(デスレイン)』!!」


「なっーーー!!」


アキの透き通るような青い瞳に何百という槍突が写し出される。

アキは瞬時に思考を巡らせる、しかしどう考えてもこの絶望的状況を打破出来る考えが浮かばない。

受け身をとらず回避?いや間に合わない。

受け流すなんて以ての外、あの数の突き攻撃を止められるはずがない。

じゃあどうすれば・・・。

心の中で呟きながら、ただ呆然と立ち尽くすばかりだった。

刃の先がアキに直撃する直前、走馬灯とでも言うのだろうか、ふと昔の記憶が蘇る。


それはアキがまだ幼い頃の記憶だった。

アキ(幼少期)の前には、「無能」ギルドの制服を着た長身で、整った顔立ちに銀灰色の髪。

腰にアキと同じ鞘を身につけ、アキ(幼少期)と向かい合うように立っているのはアキの父だ。


「パパ!私もいつかパパみたいに強くなってギルドに入って、英剣舞祭?だっけ?で絶対優勝するの!!それが私の夢なの!!」


眩しいほどの笑みを向け、まるで夢を語るかのように意気揚々と父に言い放った。

アキの父は、アキ(幼少期)の様子を見てたちまち笑みを浮かべ、アキ(幼少期)の頭にそっと右手を添える。


「ハッハハハ!そうかそうか。アキ夢を叶えるのは簡単じゃないぞ?より一層努力しないと叶わない夢だ。努力したら必ず叶うなんていう事は言わない。だけどなぁ、努力をしない人間には必ず夢は訪れないものだ。」


そう言うとアキ(幼少期)の背丈に合わせるように、膝を曲げ笑みを崩さないまま再度口を開く。


「アキ、信じる事が重要なんだ。夢は必ず叶うという信じる心だ。アキが大きくなって今の夢が小さい頃の思い出となり消えてしまうのかもしれない。でも、それを責めたり咎めたりはしない。周りが世界がアキの夢を認めなくても、父さんや今は亡き母さんだけは、信じ続ける事を約束しよう。父さんもアキの未来、運命の行く末を見守り続けたいが、この先何が起こるかわからない。」


最後の部分だけが少し寂しげな声音だった。

アキ(幼少期)は父の笑みの奥底に、ほんの少し哀愁を帯びているように見えた。


「だからな?母さんに似て、何かを大きなもの背負ってしまう癖がある。夢っていうのは一人で叶えるものじゃないと私は思う。誰かの支えがあってこそ成立するもんだ。いつか必ずアキの夢を認めてくれるいや、同じ想いを抱いた人間が現れると私は信じているんだ・・・。」


アキの父が笑顔でそう言うと、アキの幼き頃の記憶が途切れる。

アキは覚悟を決めたかのように、目を閉じる。

父さんごめん、私こんな所で死んじゃう。英剣舞祭で優勝する所見せてあげられなくてごめんなさい・・・。

アキは心の中で呟く。

迫り来るラディの『冥界驟雨(デスレイン)』を真っ向に受ければ即死は免れない。

ポロっ淡い水色の空のような涙が瞼から溢れる。

そして、槍突がアキの鼻を最初の着地地点にして目と鼻の先まで近づいて来た、そんな時ーーーー。

アキの体が何者かの手によって動かされ、間一髪の所で『冥界驟雨(デスレイン)』の脅威から免れる。

もっと、正確に言えば死を覚悟し気が抜け倒れそうになったアキの体を何者かが支えたまま、『冥界驟雨(デスレイン)』の攻撃範囲外まで運んだと言った方が正しい。

ラディの『冥界驟雨(デスレイン)』は虚しくもアキがいたであろうリングの地に降りかかった。

轟然と鳴り響く衝撃音とともに、規模の小さなクレーターらしき地形がいくつも有り『冥界驟雨(デスレイン)』の攻撃範囲より少し大きめなサイズの集合体が作られた。

火力だけ見れば、エディの力を上回るほどの技だ

った。

ラディは、アキと何者かが避難したであろう方向を見やる。

先ほどの衝撃でリングを覆い尽くすほどの煙が発生し、よく見えないが二人の姿が煙の中でぼやついた黒い影のように浮かび上がる。


「誰だ?!俺達の試合に水を差した愚か者は?!」


鬼の形相で怒りを露にしたラディの問いに対し煙の中から、申し訳なさそうな口調で返ってくる。


「いや~すみません。でも、許してください本当だったら俺が相手だったんですから。」


「だから誰だっつーのっ!!」


ラディは強く言うと、右手で持っている槍を大きく横に薙ぎ払うと風力により煙が晴れ、先程殺り損ねたアキを抱えるように声の主「ケイ」が特に笑う事もなく涼しい顔をラディに向けながら姿を現す。

双桙を細めラディは、右肩に槍を乗せる。


「テメェ、俺は試合を邪魔されるのが一番嫌いなんだよぉ!その女を後少しで殺せたのに、テメェどう落とし前つけてくれるんだ?」


そう聞かれると、ケイは腕の中で横たわるアキを見た後、ラディに視線を戻す。


「悪いですけど、こいつを殺されるわけにはいかないんです。ということで、俺が次の相手になります、それで許してください。」


「お前なぁそれで許してもらえるとでも?」


鋭い視線を外さないラディは、返答次第ではぷつんと何が切れるような質問をケイに聞く。


「はい。」


ケイは涼しい顔を崩さず、特に考える様子もなくすぐに返事を返す。

ケイの返事を聞いた後ラディの中で何かが切れた音がした。そしてたちまち、カッと目を見開き、槍を垂直に持ちケイに矛先を向ける。


「バッカか、お前わぁ?!それにお前試合前に俺らを虚仮にした奴だろ?尚のこと許すわけにはいかねぇなぁ?しょうがねぇー、お前との試合受けてやるよ。けど、簡単に死ねると思うなよ?!」


憤怒の顔のラディはケイに、尖った声音で言い放ったが、ケイは臆せず笑みを浮かべる。


「死にたくないんで、お手柔らかにお願いします。」


そう言うとケイはアキを抱えたまま踵を返しリング外まで足を運ぶ。

剣士として相手に背を向けるのは、何事だと言われるかもしれないが、今はアキを無事にギルドメンバーが待っているギャラリーに戻す事で頭がいっぱいで考えていられなかった。

アキは体が横になった状態で誰かに支えられ、運ばれている感覚だけがわかった。

先ほどの衝撃と激しい体力消耗により朦朧とした意識の中、目をゆっくりと開ける。

室内の眩いライトで顔がよく見えず、アキは目を細め凝らして見る。

たちまち光にも慣れ、よく見るとアキに笑顔を向け、支えていたのはケイだった。


「ったく、何が『私は大丈夫』だよ。」


普通なら皮肉に聞こえるケイの言葉だったが、透き通るような優しき声音にアキは色々な意味で救われた気がした。

アキは今は亡き父の笑顔と、アキに向けているケイの笑顔を重ね合わせていた。


「大丈夫か?アキ」


頬を赤らめ、青き海が陽光によって照らし出されたようにキラキラとアキは瞳を輝かせケイを見つめていた。


「・・・ケ・・・イ?」


ボソッと呟き、完全に意識を取り戻したアキは自分の体勢にさらに赤面する。

何故か、それはケイがアキをお姫様抱っこをしている状態だったからだ。


「ちょっちょっと!ケイ!ななな何してんのよぉ!!」


「んっ?何だってお姫様抱っこ。」


ケイは何食わぬ顔で返した。


「ばばばバッカじゃないの?!こんな所で!早く離しなさいよっ!」


頬も耳も赤く染まったアキは、離れようとケイの腕の中で体を動かし始める。


「おっおいアキ暴れるなって・・・わかったわかったから!今降ろすからっ!」


そう言うとケイは、アキの足を支えていた右腕をゆっくりと降ろした後、アキは自力で立とうとするが、足にまったく力が入らず横にグラッと倒れそうになる。


「わぁっ!!」


倒れそうになるアキの体を右腕で優しく受け止める。アキの脇に腕を回し、ケイは自分の胸元に顔を引き寄せもたれさせる。


「まったく~言わんこっちゃない。もう足が限界なんだよ。」


ケイと密着した状態になり、心拍数が急激に上がりまたもや赤面してしまう。

アキはドッドッドッと自分の鼓動がケイに聞こえてしまうのではないかと思い右手をソッ胸元に添える。


「しし知ってるわ、そそんなこと・・・っていうか離すんじゃないわよ・・・」


「わかってるよ・・・。」


ケイは頬の赤くなった顔をアキに見られないよう、左手で覆い隠した。

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