プロローグ 襲撃
プロローグ・襲撃
雷鳴が剣と剣が交わる剣声の音をかき消すかのように轟く。雷が暗闇に染まった監獄の中を照らしだす。
剣声--。
監獄最後の看囚を倒した後俺は一つ嘆息をし、放つ。
「ーやっとこれで最後・・・終わった・・・んだな」
ちらりと金色に輝く髪を垂らし涙を流しながら、石畳の地に膝をつき叫ぶ男を見る。二度と息を吹き替えす事のない屍に。
「親父ぃ~~!」
女は叫ぶ男を横目に駆け足でこちらへ詰め寄り、紅く塗られた唇の色は頬に付いている血となんら違いはなく。疲弊している俺に話かけてきた。
「大丈夫?ケガはない?膝枕してあげよっか?」
「(しなくていーわ(心の声))あぁ大丈夫少し疲れているだけだ。それより撤退するぞすぐに追っ手が来る。」
坊主頭の頬に三本線の傷がある男が拳と拳を突き合わせ戦闘は焦燥にかられながら発する。
「くそっ!物足りねー看囚どもはこれしかいねーのかよ!」
「戯言はよせ、帰るぞ。俺達の目的は・・・もう終わったんだ。」
皆俺の言葉を聞きわかってはいたけど、目を背けたくなる現状に酷く落ち込んだ様子だった。
そう作戦は失敗に終わったのだ。
静か、そう酷く静かだった。
今この監獄内で酸素を吸収し二酸化炭素に変える事が出来る者は俺達含め4人しかいない ー 。いや前々から俺達の闘いを見ている、俺達よりやや年下と見られる黒いワンピースを着た銀髪が特徴的な少女がいた。
少女は、何が起こったかわからない様子で唖然としていた。しかし、目の前で倒れている脈打つ事すら出来ない人間を見て堪えきれなかったであろう涙を流していた。少女は駆け寄り膝を落とした。雷鳴や雨がしたたる音で聞き取りずらいはずが俺達皆の耳にしっかりと届き、喉を震わせ声を張って叫んだ。
「・・・お父さん!お父さん!お父さん!おと、、、
うぅぅぅあぁ~~~~~~~」
口紅の女が少女に声をかけようとするのを俺が手で右肩を掴み首を振り静止させた。そう、俺達に声をかける事や慰める資格などありはしないのだ。
何度も叫んだ、だが死者に声が届くはずもなく、少女の咆哮のような声は本来届けるべき場所には届かず監獄内深奥まで響き渡っていった。
周りは看囚や囚人たちの内股から出る血の海と化していた。
それともう一人。
倒れている男は目を瞑り瞼と瞼から滲み出る涙はまだ乾いておらず、雷鳴とともに光を帯びた雫それはもう美しかった。
その男は死んでも尚笑顔を絶やさずその笑顔は、今までの余生を何の不満もなく過ごしたかのように大層ご満悦だった。
俺達はあいつから全て教えてもらったそう行き場のない俺達を。まだあいつにはやるべき事や帰りを待つ人がいたのにも関わらず先に天へ旅立った。それはあの男だけじゃない看囚や囚人たちも同じ事だろう。
返り血で染まった手を握りしめ、精一杯その男の亡骸に、全ての感情が入り交じった声音で言い放つ。
「あんたが標してくれた道は俺達で必ず・・・」