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32 第三のダンジョン

 有名婚活についてダンジョンちゃんに話すと、概ね同意を得られた。

 ダンジョンちゃんの世界にも名前を売って結婚相手より取り見取り引く手あまた、というダンジョンがいるらしい。

 未成年雌ダンジョンが色っぽい通路の絵やえっちなダンジョン入口の絵を違法に売りさばいて売れ過ぎて社会問題になったり、巧妙な罠でつよつよ冒険者の軍勢をハメ殺しにするイケメン雄ダンジョンの動画が一世を風靡していたり、そういう感じだ。それで名が売れて良い相手を捕まえてゴールイン。

 ワケが分からないがなんとなく分かる。種族が違っても社会の仕組みは大差ないらしい。


 俺が有名になる手段は色々あるが、趣味と実益を兼ねて「第三のダンジョンの発見」を目指す事にした。


 第一ダンジョン(東京ダンジョン=ダンジョンちゃん)は第一発見者がはっきりしない。本当は俺なのだが、ぬるぬるじわじわ知名度が広がっていったため、今更私が第一発見者ですと名乗り出ても売名目的の嘘つきだと思われるだけだ。実際自称東京ダンジョンの第一発見者が何人も湧いて出ていて炎上したり相手にされずガン無視されたりしている。

 第二ダンジョン(自衛隊駐屯地に出たダンジョン)は誰か個人が発見したという訳ではなく自衛隊が発見したという事になっている。

 第三のダンジョン発見は十分名声を轟かせるキッカケになるだろう。


 ダンジョン発見は俺の婚活に役立つだけではなく、ダンジョンちゃんの婚活にも役立つ。かも知れない。

 ダンジョンちゃんの故郷ではダンジョンは会社を作り団結して冒険者を相手にしていた。聞く限り相当腐敗したブラック企業が多かったようだが、それでも会社が必要とされていた。団結しなければ生き残れなかったのだ。

 そして地球でも恐らくそうなる。


 地球の全人口は約70億人。そのうち何パーセントかは知らないが、冒険者としてダンジョンちゃん一洞に押し寄せてきたらキャパシティオーバーする。今はまださばき切れているが、冒険者の数はどんどん増えているし、刻印の力が見出されていけば奥に進めるだけの力を持つ冒険者も増える。

 客を独り占めなんて言っていられなくなるだろう。複数のダンジョンで客・脅威を分散させなければ相手にしていられない。


 複数のダンジョンが協力態勢を敷くメリットは他にもいくつかある。

 まず生命力(ライフ)の融通ができるのが大きい。

 ダンジョン同士は同意があれば生命力(ライフ)の共有ができる。会計係に負担と責任が集中したり横領や不正の温床になりやすいが、便利なものは便利だ。

 危機に陥ったダンジョンに余裕のあるダンジョンから生命力(ライフ)を渡し、冒険者が一つのダンジョンに群がり集中攻略する事を避けられる。未熟な、それこそ一層でモンスターゼロの死亡三秒前ダンジョンに生命力(ライフ)を渡し戦える状態まで持って行ってやる事ができる。


 ダンジョンちゃん的には社会的ステータスにもなる。ダンジョンちゃんの故郷では群れないダンジョンというのは完全に頭のおかしいあっぱらぱーだ。単独でダンジョン業をやっているだけで良くても引かれる。普通は蔑まれる。最悪排除対象になる。

 地球にはまだダンジョンが全然いないから群れられなくても仕方がないのだが、群れられるなら群れた方が断然いい。大規模なダンジョンを抱える会社のトップにでもなれればダンジョン界の婚活で引く手数多だ。


 そして他のダンジョンに恩を売れる。

 地球に初めてやってきたダンジョンはダンジョンちゃんで、一番稼いでいるダンジョンもダンジョンちゃんだ。経営は余裕たっぷりというわけでもないが、節約したりちょっと無茶をすれば結構な量の生命力(ライフ)を捻出し渡す事ができる。

 最初期の生命力(ライフ)が足りなさ過ぎて身動きが取れない時に生命力(ライフ)を渡してやれば大きな貸しを作れる。貸しはあればあるほどいい。


 というわけで第三のダンジョンを探すためにダンジョンちゃんにダンジョン探知魔法を使ってもらった。第二ダンジョンの所在確認の時に使ったやつだ。ダンジョン探知魔法は発動コストが一回10万生命力(ライフ)で10秒しか持続しない代わりに探知範囲がめちゃめちゃ広い。聞く限りでは地球全域は余裕でカバーできるようだ。ダンジョンちゃんの会社では専ら音信不通になった社員が死んだのか着信拒否をしているのかどちらなのか確かめるために使われる魔法だとか。


 安くないコストを支払うため頻繁に使うわけにもいかず、ダンジョンが発生したら噂になるだろうという見込みもあって今までは使ってこなかった。

 しかし今は出費を切り詰めれば一日一度は使えるぐらいの稼ぎがあるし、よく考えればダンジョンが出現したとしてもそこが人の寄り付かない僻地だったら誰にも見つからないまま静かに息絶える事も有り得る。


 地球にやってくるダンジョンは異世界のダンジョン会社で何かやらかして追放刑を喰らったヤツだ。追放刑が制定されたのは割と最近らしく、ダンジョン界のニュースを追っていなかった――――仕事が忙し過ぎてニュースを追う余裕も無かった――――ダンジョンちゃんはどの程度の罪で追放刑になるのかイマイチよく分かっていない。

 だから重犯罪を犯した極悪ダンジョンが追放されてやってくる可能性もあるわけで、そういったダンジョンとは流石に手を組めない。


 しかし探知魔法で分かるのはダンジョンの場所と性別だけ。どんなダンジョンなのか知るためには探知魔法で居場所を確認した上で現地に行って確かめないといけない。


 タチの悪いガチャをダメ元で回す空気の中それでも一抹の期待を胸に探知魔法が発動される。

 驚いた事に、即座に反応が1つ返ってきた。

 第三のダンジョンは既に地球にやってきていたのだ。


 場所は試される大地、北海道。

 俺は第三のダンジョンを見極めるため、北の大地へ飛んだ。

飛行機で北海道に向かっていた俺は、窓から外の景色を見ていた。そして雲の切れ間から姿を現した北の大地を見て驚愕した。

「あれは、あの形は……評価ボタン!?」

そう! 北海道は上空から見ると評価ボタンの形をしていたのだ!!!

驚き戸惑っている内に飛行機は北海道に着陸! 北海道=評価ボタンの上に降りる、これは紛れもなく評価ボタンを押すという行為に外ならない!

胸騒ぎをして空港の売店で世界地図を買ってチェック! するとやはり予想は当たっていた! よく見ると日本全土が、それどこか地球そのものが評価ボタンの形状をしているではないか!!!

人間は生きている限り大地を踏む。大地とは評価ボタンである。つまり全人類は生まれながらにして評価ボタンを押しているのだ。


~Q.E.D.Happy End~

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― 新着の感想 ―
確かに僻地だと誰にも気づかれないまま餓死する可能性もあるか。 もうすでに何洞か消えた後かもしれんなぁ。
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