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教室
初投稿
これは蝉の声か。それとも鈴虫の声か。ふわふわとした感覚の中、その騒がしさに嫌悪感を抱く。
涼しい風が教室を通り抜け、一種の爽快感と、なびく前髪に困惑する君の顔を届けてくれる。普段人前で見せる顔とは明らかに違う、その油断した顔をもう一度見たくて、窓の外を見るふりをして机に突っ伏してみる。
黒板を見つめる君。その真剣なまなざしが、私に罪悪感を与える。
教科書をめくる指や、何かを書き込む動作を見ていると、虫の声は聞こえず、本来は聞こえないはずのその動作の音が聞こえてくる。まるで、教室には私と君しかいないかのように錯覚する。
浮遊感のような、高揚感のような、何とも言えない感覚の中で癒されていると、鐘の音が一瞬にして私を現実へと返した。