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アトリビュート・ソード  作者: 阿久亦 志帆
下級剣(スペアソード)編
1/1

Story1ー1「彩月町の悪夢〜fog and slaughter〜」

人の数だけ、心はある。人の数だけ、剣はある。




キーン、コーン、カーン、コーン。

ウェストミンスターの鐘のような予鈴が彩月(さつき)高校の校内に響き渡る。

今日も毎日同じような退屈な授業の終わりを告げ、帰りのホームルームが始まる。

多少騒がしい教室で教壇に立っている先生は気だるそうに

「はい静かに。皆もニュースなどで見たことはあると思うが、ここ最近殺人事件が発生している。なので今日から部活は中止。生徒は即帰宅。決して夜道は出歩かないように。」

と注意を促した。


夜霧(よぎり)殺人事件。この町、彩月町(さつきちょう)で最近頻繁に起きている殺人事件だ。その名の通り夜道を歩いていると霧が発生しその霧に巻かれた人は無惨に殺されてしまうという物騒な事件だ。

警察の操作では証拠の1つすら見つかっていないらしく、不可解な事件として話題を集めている。


「という事で今日は終わりだ。まっすぐ帰るように。委員長、号令。」

と先生が今日の学校のスケジュールの終わりを知らせ、委員長が「起立、気をつけ、礼。」と号令をかけると、クラスの皆は友達と雑談をしながら教室から姿を消した。

「勝丸〜!帰ろうぜ!」

「おう山村。帰ろ帰ろ。夜にならない内にな。」と友達の山村に名前を呼ばれた俺、炭野(すみの) 勝丸(かつまる)は冗談交じりで返答した。

そして帰路で道を歩きながら山村と会話を交わす。

「しっかし部活中止か。まぁ仕方の無いことよな。ね、勝丸部長?」

「そうだなー…そろそろ大会が近いから練習したいんだけどな。ってその呼び方やめろむず痒い。」

俺は剣道部に所属していて、そして部長である。

部員のみんなは全国大会で優勝しようと日々練習に励んでいる。来月末には県予選があるため練習も詰めていきたいのだが、皮肉なことにこのタイミングで部活中止だ。悔しい。

だがしかし部活を行い、夜道で夜霧殺人事件の犯人に遭遇したら元も子もないため大人しく学校側の指示に従う。

「ホント、早く犯人捕まってくれないかな…」

「そうだな…あ、やべそういえば今日バイトだった!じゃあな勝丸!また学校でな!」と言うと急に山村は走り出しバイトに向かっていった。


その後俺は帰宅し、夜ご飯を食べて自室に戻り勉強をしていた。

勉強をしていると唐突に横に置いていたスマートフォンに通知が来た。見てみると山村から「すまん!バイト終わったんだけど家の鍵忘れて家に入れねえから迎えに来てくれ(泣)」とメッセージが来てた。山村の両親は仕事で夜は家を空けることが多いため山村はいつも鍵を持ち歩いている。しかしどうやら今日は家に鍵を置いてきてしまったらしい。

帰宅してからもずっと制服だったため、制服で外に出る。現在時刻は夜20時を回り、少し冷たい夜風が頬を撫でた。

山村と待ち合わせの約束をした近くの公園まで歩きながら夜霧殺人事件のことを思い出す。

何故霧が発生するのかなど思考を巡らせるが結局そんな事を考えても仕方の無いことなので考えるのをやめたが夜ということもあり少し足早になりながら公園に向かった。


しばらくして、近くの公園についた。

ここの公園はかなり広く、ウォーキングコース、遊具などがあるため昼などは老若男女問わず賑わう場所なのだが夜はその広さが多少の不安を誘う。

そして山村と合流するために公園に足を踏み入れた。

公園のベンチで待ち合わせているため公園の中を歩く。そして何気なく公園の真ん中を見るとそこには


おびただしい血を流しながら人が倒れていた。

瞬間的に走り出し倒れた人に近寄り「大丈夫ですか!?」と声をかける。だが俺はすぐに近寄り、声をかけてしまったのを酷く後悔した。何故ならその倒れていた人が友人の、山村だったからだ。

山村の体には深い切り傷があり、刺されたような跡がありそこから血が流れている。

あまりの衝撃に言葉を失い、腰が抜け、体が震え出す。

思考が停止しひたすら震えてるなか、後ろから様々な負の感情を詰め込んだようか低く唸るような声が聞こえた

「次はお前かな」


俺は咄嗟に後ろを振り向いたがそこには人影すらなかった。恐怖と不安に駆られ、とりあえずこの公園から出て警察に行こうとする。その瞬間周りに濃い霧がかかり周囲が全く見通せなくなった。

夜霧殺人事件が頭の中に思い浮かぶ。夜に霧がかかり、その霧に巻かれたものは無惨に殺される。

「逃げなければ」「助けを呼ばなければ」頭の中では分かっていても体が言うことを聞かない。

腰が抜け力が出ない体でなんとか移動しようとすると急に霧の中から白いパーカーを着てフードを目が隠れるくらい深く被り薄ら笑いを浮かべている人が現れた。

その霧から出てきた人の手には

ー剣が握られていた。

U字の鍔、赤い柄、月明かりに照らされ80cm程の薄く光る銀色の剣身(けんしん)、そしてその剣から霧が出ていた。

俺はそれに気付いた瞬間、死を感じさらに震えが止まらなくなっていた。

パーカーの男は薄ら笑いを浮かべながら俺に

「今からお前はあの倒れていたやつと同じように死ぬわけだが、どんな気持ちだ?」と聞いてきた。

「お前が…夜霧殺人事…件の…」俺は消え入りそうな声で言う。

するとパーカーの男は高笑いをし、「あぁそうだ。俺の名はフォウグ。巷で噂の夜霧殺人事件の犯人さ。」

と名乗りを上げた。

「何故こんな…」と口に出した瞬間剣先が俺の額の方に向いた

「おいお前その前に俺が質問しているだろう。今からお前は死ぬがどんな気持ちだ?って。…そういえばさっき殺したやつ、死ぬ時に勝丸来るなみたいな事を抜かしていたなぁ。お前が勝丸というやつか?良かったな、今からお前はあの友達と一緒の方法で殺されるぞ、あの世でも仲良くできるぞ。」

俺は額に剣先を向けられながら震えてフォウグの発言を聞くことしか出来なかった。立て続けにフォウグは喋る。

「冥土の土産に教えておいてやるよ。この霧はこの剣の力で発生している。属性剣といってな、心の中から生み出される強さの証みたいなものだ。残念だな、お前も属性剣を持っていたら死なずに済んだのになぁ。可哀想に。まぁこんなことはいいんだ。あくまで間話みたいなものだからな。さぁ話を戻そう。今からお前は死ぬ。どんな気持ちだ。答えろ。」

俺は力を振り絞り涙を流しながら答える。

「怖い、悔し、い、辛い…」

「そうか。それで終わりか。一般的な感情だな。つまらない男だ。じゃあ人生に別れを告げるがいい」

フォウグはそう言い放つと剣を振り上げた。その瞬間山村のことが思い浮かんだ。

待て。即座に俺は自分の心に問いかける。こんな所で死んでいいのか。大切な友達を殺されたんだぞ。それなのにこんな所ですぐ死んでいいのか?いや、ダメだ、いい訳がない。こいつを許してはおけない。(かたき)を打ちたい。打たなければならない。

決意した俺は叫ぶ。


「でも何より!!!!!!」フォウグの手が止まった。

「でも、何より、山村の…俺の大切な友達の命を奪ったお前を許さないという気持ちが!!!強い!!!」

涙を拭い、立ち上がり、フォウグを睨む。

「なんだお前、俺に抗おうっていうのか?哀れ、非常に哀れだ。早く逝け。」再びフォウグの手が動き出す。その瞬間俺の胸の中心部がまばゆい光を放った。

フォウグは眩しさに目を抑え後ずさりした。

「何が…起きてるんだ…?」俺は自分の体の異変に疑問を感じる。突然、脳内に声が響いた。

「友を殺され悔しいか。許せないか。ならば己の心の剣を引き抜け。勝利は剣にあり」と。

すると光り輝く胸の中心部から銀色に艷めく剣身が姿を見せた。そこからどんどん剣がせり出してくる。U字型の鍔、そして赤い柄が出てきた。

「なっ…属性剣を生み出しただと…!?」フォウグが唖然としている。

俺は目の前に浮かんでいる属性剣と呼ばれる剣を手にした。

「やはり早く殺す。」と言ってフォウグが剣を構えながら向かってくる。

「剣身を指で弾け。そうすれば己の決意と怒りの紅蓮の炎が燃え上がる。」と再び脳内に声が響く。

俺はその声に従うように剣を指で弾いた。すると剣から小さな火が出てきた。その火はだんだん火力を増し、剣身を覆うように燃え上がった。

「何が起きてるんだこれ…すげぇ」と感心していると

「感心している暇はない。今だ、戦え。」という脳内の声に反応し俺はすぐに剣を構え戦闘態勢に入った、。フォウグの属性剣が俺の属性剣にぶつかる。

フォウグをなぎ払い剣を振ると火が霧を吹き飛ばした。

「そんな馬鹿な…クソガキがぁ!!!」怒りをあらわにしたフォウグが再び向かってくるが再び俺はフォウグの剣を受け止め、逆に反撃に出る。

「おい脳内で喋ってる誰かさん!なんで俺こんなに戦えてるんだ!?」と声に出しながらフォウグと鍔迫り合いになる。

「それは己の心と体が連動しているからだ。気持ちが強ければ強いほど貴様の体を速く、より強く動く」と脳内に声が響いた。

「なら今の俺は…誰にも負ける気がしない!」

そう叫びフォウグを突き飛ばした。

脳内にまた声が響く「決着をつけよ。想像せよ。剣先から己の怒りと決意を炎に変え、放つイメージを。」

言われた通りにイメージをする。山村を殺された怒り、憎しみ。そして仇を打つという決意。

それを心の中で炎に変え、放つ。

俺は体勢を低くし、剣を後ろに引く。

「ぐっ…お前は…絶対に首を斬る…切り刻んでやる!!!」フォウグは叫び、剣から霧を出しながら向かってくる。

「今だ、放て!」脳内の声と同時に俺は剣を前に勢いよく突きだした。

「フラッシュオーバーフレイム!!!!!」

俺の叫び声と共に突き出した属性剣からさっきとは比べ物ならない程の火が燃えだし光線のように一直線にフォウグの体を貫き、周りに残っていた霧全てを払った。フォウグは体を燃え上がらせながら断末魔を上げ、消滅した。フォウグの属性剣は剣にヒビが入り壊れていた。

今までの疲れが一気に押し寄せてきたのか俺はその場に座り「はぁ…なんだったんだ今の。」とため息をもらす。だがそれは一瞬で止め、立ち上がり警察に通報した。手元からはいつの間にか属性剣が消えていたが忙しくて脳内に響いてた声の主も追求してる暇がなかった。


数日後、山村の葬儀が執り行われ、別れを告げた。

そして家に帰り、もう一度あの日の出来事を整理する。

とりあえずあの脳内の声の主は誰なのか。

と思い

「なぁ、あんたは誰なんだ?」と独り言を漏らす。

すると声が聞こえた。「我は己の心の中だ。今はそれしか言えぬ。」

「んーなんかよく分からねえけど、とりあえずあの属性剣って何なんだ?何で俺の体の中から剣が出てきたんだ?」と質問する。


「分かった。質問に答えよう。」と声が返ってきた。

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