表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ化】転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す  作者: 十夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/318

24 肉祭り3

今回のために、「肉祭り」を開催しました。楽しんでもらえると、嬉しいです。

会場中を美味しそうな匂いが埋め尽くす。

今か今かと待ち続けていた私の耳に、「フラワーホーンディアが焼けましたよぉ!」という料理長の声が届いた。


しゅたっとお肉の側に近づくけれど、あれれ、誰も並んでない?


不審に思って周りを見渡すと、第3小隊の騎士たちに周りを取り囲まれていた。


「フィーア、フラワーホーンディアの第一功労者はお前だ。お前が一番に食え」


えええええ。このお肉、本当に美味しいんですけど、いいんですか?

「では、遠慮なく。料理長! 背骨のところのロース肉をください!」


そして、渡されたお肉にかぶりつく。


「はふっ、おいしい! おいしい! おいしい! 熱いけど、おいしい!」

肉本来の美味しさが、完全に出ている。ああ、美味しいお肉を食べること以上の幸せってあるのかしら?


いつの間にか、第3小隊の騎士をはじめ、みんながフラワーホーンディアを食べ出している。


「これは! …………マジで、うまいな!!」

「肉汁がすげぇ! ドバっと出てきたぞ。そして、柔らけーな!」

「この脂身のなさがいいな。サッパリしているから、いくらでも食べられる!」


ですね、ですね。どれだけでも、食べられる気がします。


私は、とってもいい気分になって、第3小隊の騎士たちとお肉を食べてお酒を飲んだ。


「フィーア、マジでありがとな。はったりに基づいた指揮だったってのは驚いたが、お前の指揮は、すげー戦いやすかったぞ」

「ああ、シリル団長には、魔物について無知すぎるって怒られたがな。フラワーホーンディアは深淵に棲んでいて、普通なら絶対に遭遇することなんてない魔物だ。確かに、第六騎士団に配属された際に、魔物リストはもらったけどよ。そんな何年も前にチラリと見ただけの魔物の特性なんて、覚えているわけねぇって!」

「まじ、お前がいなかったら全滅もありえたわ。助かった! よし、飲め! そして、食え!」


それから、一人の騎士に肩をたたかれる。


「フィーア、お前は新人だが、もう立派な仲間だ! オレたちへの敬語はやめろ、いいな!」

「了解です! フィーア・ルード、今からは敬語を使いません!」

「「「いや、それ敬語だから!!」」」


みんなから一斉に突っ込まれ、大笑いする。

ふわーん、騎士ってやっぱり気持ちいいなぁ。男気があって、好き!


それから、どのくらい飲んだのだろうか。第3小隊の騎士たちから次々にお酒を注がれ、嬉しくなって全部飲んでいて……ん? 誰だコレ?


私の隣で、上半身裸の騎士が熱弁をふるっている。


あれ? 誰だっけ、コレ? 私、この騎士、知っているんだけど……誰だっけ?

さっき、シリル団長のちょい後ろで見たんだけどな――。


「だから……聞いているのか、フィーア!」


その上半身裸の、錆色の髪の騎士に怒られる。


「へ? いや、聞いていませんでしたよ。何でしたっけ?」


周りを見渡すと、第3小隊の騎士がげんなりとした表情でこちらを見ている。


はて? ……ああ、そうか。敬語は止めるんだったっけ。


「ええと、それで? なんで上半身が裸なの?」


くだけた口調で話してみると、なぜだか、第3小隊の騎士たちが慌てたようにこちらを見る。


なぁに? 敬語は止めろって言ったり、止めたら慌てたりって、どうすればいいのよ。


「だから、総長はシックスパックなんだよ!!」


「しっくすぱっく?」


6個のパック? パックって、あの女性が美容のために顔にはるマスクのことだよね? んんー? 総長は、パックを6個も顔に貼るってこと?


「ええ、総長って、そんなに顔が大きかったっけ?」

「何で、顔の話になるんだよ! お前、本当に人の話を聞いてないな!」

「えええ、聞いているでしょう! 心外! 侵害されて心外!! ぷふー、私、何言っているんだろう!!」

「もういい! だから、総長はな、腹筋が6個に割れているんだよ!!」

「えええ―――!! それは、ちょっと、個人エロ情報じゃないの? いいの? ばらしていいの?」

「え? これ個人エロ情報なのか? オレ、憲兵に捕まるパターン? お、おい、お前ら! デズモンドに酒を飲ませて、潰してこい!!」


錆色の髪の騎士は、慌てたように、周りの騎士たちに命令する。


「いいから、フィーア、オレを見ろ!! オレの腹を!! 腹筋がいくつに分かれている?!」

「ええと………、いち、にぃ、さん、しぃ。4つ! 4つに分かれているわ!!」

「そうだ、オレの腹筋は4つにしか分かれていねぇ。知っているか? 腹筋の形は、生まれつき決まっているんだ。どんなに鍛錬しても、死ぬほど魔物を狩っても、オレの腹筋は4つのままなんだああああああああ!!!」


そして、錆色の騎士は、男泣きに泣き出した。


「また、始まった」

「ザカリー団長が、お約束のくだを巻き出したぞ」


周りで、第3小隊の騎士たちが、諦めたようにため息をつく。

そんな中、一人の騎士が労わるように話しかけてきた。


「悪ぃな、フィーア。ザカリー団長は、こうなると、くだを巻き続ける。酒の席では、毎回この話題を持ち出し、毎回部下に絡んでは、毎回泣き出す。正直、みんなウンザリしているんだが、止めようがない」

「お前には悪いが、今日は、お前が相手をしてくれて助かったよ。オレらもみんな、何十回と相手をしている事実に免じて、勘弁してくれ」


……ふうん? みんな、大変ねぇ。

でも、腹筋が4つに分かれていることの、何が悪いのかしら?


……ええと、今、この錆色の騎士は何て呼ばれたっけ?ああ、そうそう、ザカリーね。


「ザカリー! 私を見なさい!」


私は、男泣きに泣き続けているザカリーに呼びかける。

そうして、彼が私に視線を向けたのを確認すると、おもむろに騎士服の上着のボタンを外し出した。


「お、おい、フィーア、お前、何やっているんだ!!」


ザカリーが慌てたような声を出す。


私は、ボタンを外し終わった上着の前身頃を両手で掴むと、挑むような表情でザカリーを見つめた。そして、「見なさい!」と言いながら、一気に上着を脱ぎ棄てる。


騎士服の下は、ピッタリとした胸当付きのシャツ一枚で、お腹のラインがよく分かる。


「フォーパックが何なのよ! 私なんて、ワンパックよ!! 毎日、騎士の訓練をしているのに、筋肉がつかないんだからああああ!!!」


そうして、自信満々にぽっこりとしたお腹を突き出した。


視界の端で、遠くから私を見守っていたシリル団長が、ぶ――っと口からお酒を噴き出すのが見える。

……あらら、礼儀正しいシリル団長らしくもない。何をやっているのかしら。


「おま、おま、おま、それは……」


目の前でザカリーがあわあわ言い出したので、視線を戻す。


「はん! 4つの筋肉で文句を言うなんて、恵まれた人生ね! 私なんて1つよ! というか、筋肉ですらないわ!!」


「フィ、フィーア、それは、さすがに……。い、妹のところの3歳の姪がそんな腹をしていて、幼児なら可愛くも思えるが、お前、成人していてそれはさすがに……」


ザカリーが酷いものを見る目で私のお腹を見つめる。


「だったら! どうしたらいいのよ!! 私は、小さい頃からず―――っと騎士になりたくて、毎日、訓練をしてきたわ。騎士になれた今だって、日課の訓練は欠かさないわよ。なのに、筋肉が付かないんだもの。これ以上、どうすればいいのよ!!」


まぁ、ちょっと、大げさだけどね。

普段は、さすがにここまではぽっこりしていない。今日は、際限なくお酒を飲んで、お肉を食べたから、限界まで膨らんでいるのだ。

ぷふふ、でも、ザカリーを驚かすには、これくらいでなくちゃあ効果がないわよね。


ザカリーは、私の顔とお腹を交互に見つめると「うぐ―――」と唸っている。

そして、苦渋の表情で口を開いた。


「フィーア、そりゃあもう、どうしようもない。諦めろ」


そして、言いにくそうに続ける。


「お前、その腹は人に見せない方がいいぞ。そして、その話題もやめとけ」


「なんですって――」


私は、不愉快極まりない気持ちでザカリーを睨んだ。


「自分は! お酒の席で、その4つの筋肉を自慢して! 見せつけられた私が、愚痴を言うことは禁止するって、どんだけ自分勝手なのよ!!」

「い、いや、オレはお前のためを思って……」

「思いやり! だったら、私のお腹とその4つの筋肉を交換してちょうだい!!」

「いやだ!! ……あ、いや、だが、さすがに、その腹は……」


私は、もごもごと言い淀むザカリーに、びしりと人差し指を突きつけた。


「だったら! もう二度と、4つの筋肉自慢は止めてちょうだい! 持たざる私にとっては、自慢話以外の何物でもないし、不愉快だわ!!」


「………………それは、オレが悪かった。わ、分かった、約束する。二度と、腹筋の話はしない」


がくりと床に膝を突き、ザカリーが宣言した瞬間、周りにいた第六騎士団全員の口から、歓声が上がった。


「すげえすげえ、フィーア。お前、マジすげえよ!!」

「救われた! あの地獄の永遠リピート話から救われたぞ!!」


……そして、実際にザカリーは、二度と腹筋の話はしなくなったようで、後日、私は第六騎士団から「ぽっこり救世主」という二つ名をいただいた。


いらんわ!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★Xやっています

★【大聖女 (本編) 】コミカライズへはこちらからどうぞ
★【大聖女(ZERO)】コミカライズへはこちらからどうぞ
ノベル11巻が発売中!
【SIDEザカリー】国宝の鎧を真っ二つにしてしまったオレの顛末、続・シリウスと恋人デート(300年前)など、5本を加筆しています。

また、通常版に加えて、小冊子(これまでの超美麗カバー等ポストカード+SS「フィーア、シリル団長の騎士服に刺繍をする」)付きの特装版もあります!

ノベル11巻

ノベル11巻特装版

10/16ノベルZERO6巻が発売!
立派な聖女になりたいと思ったセラフィーナは、聖女の修行をしようとするけれど……
『騎士団長たち酷い』案件勃発。

ノベルZERO6巻

10/10コミックス13巻発売!
フィーアがサヴィス総長にとっておきの花を取ってきたり、クェンティン団長に特別なお土産を渡したりします。
半分以上がWEBにないノベルオリジナルの話になります。

コミックス13巻

10/10コミックスZERO4巻発売!
とうとう西海岸に到着した近衛騎士御一行様。不審な男性に遭遇するも……
コミックスZERO4巻
どうぞよろしくお願いします。

― 新着の感想 ―
ヒロインには、女性としての恥じらいは持ち合わせていないの。
会社でお昼をいただきながら読んでました。 ワンパック→ぽっこり救世主になったところで お口の中の物を吹き出しそうになりました! ギリ耐えてお茶を飲みセーフ 面白かった〜
[良い点] ポッコリ救世主に( ゜∀゜)・∵ブハッ!! [気になる点] 笑うしかありません(笑) [一言] 素敵な小説ありがとうございます♡ 応援してます♡(o⚑'▽')o⚑*゜フレーフレー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ