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【アニメ化】転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す  作者: 十夜


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184 王城勤めの聖女たち3

聖女たちは好奇心が旺盛だと思ったのは、私の勘違いだったのかしら、と思っていると、突然、小さな拍手が起きた。


視線をやると、シャーロットが小さな手で一生懸命拍手をしていた。

どうやら歓迎の気持ちを表してくれているようだ。


見学者の私にまで拍手をしてくれるなんて、シャーロットは気遣いの達人だわ、と嬉しく思っていると、「シャーロット、拍手をする場面ではないわ」と隣の聖女から注意されていた。


まあ、シャーロットは善意で拍手をしてくれたのに、と申し訳なく思ったけれど、私が口を開くよりも早くロイドがなだめる言葉を口にする。

「シャーロット聖女の行動を見逃してくれないかな。彼女は僕たちを歓迎してくれたのだし、僕は嬉しさを感じたのだから」


シャーロットに注意をした聖女は、白けた表情を浮かべると、ぷいっとそっぽを向いたため、ロイドはシャーロットに向かって苦笑を浮かべた。

ドロテはそれら一連のやり取りを見ていたものの、口を差し挟むことはなく、何事もなかったかのように再び説明を始める。


「聖女は祝福を与えられた特別な女性の呼称で、その数は限られています。その聖女を20名も集めている施設は、大聖堂と大規模な教会を除くと王城以外にありません。ここにいる聖女たちの主な業務は、騎士団の魔物討伐に同行すること、病人の病を治すこと、回復薬を作ることの3つになります」


ドロテの説明を聞いた私は、あれ? と思って首を傾げた。

病人を治すことが主業の1つならば、ペイズ伯爵家のエステルもここで治してもらえばよかったのに、と思ったからだ。

ペイズ伯爵は貴族だし、その立場を利用して、王城勤めの聖女たちに娘の治療を頼むことができたのじゃないかしら。


私の疑問は顔に出ていたようで、隣で私を観察していたロイドが補足してくれる。

「王城勤めの聖女様の業務は、あくまで王城に関することに限られているんだ。そのうえ、病人を治すためにはより多くの魔力が必要になるから、基本的には王族のみが対象になるんだよ。王城で死にかけた高位貴族や高官がいれば、運が良ければ治療してもらえるかもしれないが、その辺りまでだ」


以前、魔物討伐に同行した聖女たちが、怪我を治すのにも3人がかりで対応していたことを思い出す。

あの姿を基準に考えると、病気であれば、もっと多くの人数で対応するのかもしれない。

そうだとしたら、ロイドの言う通り、対象者を限定しないと対応できないに違いない。


「そうなんですね」

納得して頷くと、ロイドは仕方ないとばかりに両手を広げた。

「うん、他の施設に比べたら20名という数は多いと思うかもしれないけど、王城の規模を考えたら全く足りていないからね。正直に言って、よそに割ける人員はいないんだよ」


ロイドの言葉に従うならば、聖女の数は思っていた以上に少ないのだわ。

300年前は女性の半分以上が聖女だったから、随分減ったものね。

思わず無言になった私を何と思ったのか、ロイドが皮肉気に唇を歪めた。


「恩恵に浸っている者は気付かないのかもしれないが、そもそも魔物討伐に聖女様を同行できる騎士団がものすごく優遇されているんだよ。筆頭聖女が王妃であるからこそ、許された特権だろうね」


そう言えば、以前、レッド、グリーン、ブルーの3人と魔物討伐に行った際、3人がちっとも怪我をしないので驚いたことを思い出す。

あの時、3人になぜ怪我をしないのかと質問したところ、『聖女様は王侯貴族に付随するもので、冒険者には絶対に同行しない。回復薬を飲んでも、怪我が治るまで時間がかかるから、怪我をしないような立ち回りをする』というようなことを返されたのだった。


つまり、魔物討伐に聖女が同行するのは、限られたケースなのだろう。

「本当に聖女様の数が少ないんですね」


思わずそう感想を漏らすと、その通りだと頷かれる。

「そう。そして、その少ない聖女様の世界は、筆頭聖女を頂点とした縦社会になっているんだ。基本的に上位の聖女様に逆らうものではないんだよ」


「なるほどですね」

以前、上位の聖女たちには序列が付けられている、と聞いたことをふと思い出す。

あの序列は筆頭聖女を選定する際に、付け直されるのだろうか?


だとしたら、筆頭聖女の選定会は10年や20年に1度しか開かれないみたいだから、その間は一切、順位の入れ替わりはないのだろうか。

さらに、シャーロットのように新たに聖女になった者の順位はどうなるのだろう。


次々に疑問が生まれてきたけれど、シャーロットを前に質問する内容ではないように思われたため、後から尋ねようと胸の中にしまい込む。

シリル団長、デズモンド団長、カーティス、ファビアン、セルリアン……ちょっと考えただけでも、すらすらと答えてくれそうな人物がたくさん思い浮かんできたため、世の中には物知りな人が多いわよねと安心した私は、先送りにすることにしたのだ。


ほほほ、私がちょっとくらい物を知らなくても、何でも答えてくれる人を知っていれば解決するのだから、持つべきものは賢い知り合いよね。

世界の真理を掴んだ気になって、むふふと笑っていると、ロイドに呆れたように見つめられた。


けれど、ロイドはすぐに気を取り直した様子でドロテに向き直る。

「ところで、この部屋で聖女様方は何をしていたのかな?」


ドロテは広間の中にいる聖女たちを見回した後、ロイドを見つめた。

「聖女の魔力量は限られているので、1日に使用できる魔法は限られています。また、魔物討伐に同行するなど、大量に魔力を使用した後の3日間は魔法を使用しません。そのため、魔力を使わない方法で自分を高めておりました」


具体的にはどういうことかしらと目を瞬かせたけれど、ロイドは理解したようで、にこやかに頷く。

「なるほど。あの窓際で本を読んでいた聖女様方は、薬草の知識を高めていたのかな?」

「その通りです。薬草は全部で82種ありますが、それらの中には雑草と似通った形状のものや、特殊な場所でしか見つからないものも多いため、図鑑と実物を見比べながら、学習していたところです」

その説明を聞きながら、思わず窓際に視線をやると、ソファ近くにあるテーブルの上には、図鑑とともに薬草が入った籠が置いてあった。


そのため、ロイドは「熱心な聖女様たちだね」と、感心した様子でプリシラに話しかけていたけれど、ここで着目すべきはそれでなく……

「…………」

おずおずとした様子でこちらを見ているシャーロットと、いつの間にか見つめ合ってしまう。


……そうだった。以前、シャーロットからも『現在、薬草として指定されているものは82種しかない』と聞かされて、驚いたのだった。


以前はもっと多くの種類の薬草があったので、この300年の間に薬草の数が数分の1に減ってしまったようだ。

もちろん、82種以外の薬草も立派に現存しているのだけど、薬草の知識が失われてしまったようで、ただの雑草だと認識されているのだ。


昔は300種類とか、400種類とかの薬草があったのに……と残念に思っていると、「私は図鑑に載っている薬草は全て覚えていますわ」とロイドに返すプリシラの得意気な声が聞こえた。

「それはすごいね。プリシラはその82種の薬草全てを使用したことがあるの?」


好奇心も露に尋ねるロイドに対し、プリシラは一瞬言葉に詰まったけれど、すぐにつんとして答える。

「82種のうち、20種ほどは非常に入手が困難な薬草になりますわ。さらに、その中の5種はまず滅多に手に入らない薬草で、図鑑にも『生きているうちに、どれか1つでも目にすることができたら、あなたは幸せです』と記載されているほどの代物なんです」


「…………」

またもやシャーロットと目が合う。

以前、シャーロットからサザランドのお土産に珍しい薬草がほしいと要望されたため、サザランドで目に付いた、3種類の薬草を持ち帰ってきたことがあったのだ。

喜んでくれるかなと期待しながら贈ったものの、それらは全て薬草図鑑の最高級難易度のページに載っている代物だ、とシャーロットに目を丸くされたのだった。


「黄風花」、「赤甘の実」(ただし、甘いものに限る)、「海大葉」と、私としては黄、赤、緑の彩りが綺麗なものを集めたつもりだったのだけれど、現在においてはものすごいレア薬草だったらしい。


面倒を起こしてはいけないからね、と床を見つめて口を噤んでいると、プリシラの物言いにカチンときたらしい聖女の一人が、馬鹿にしたような声を出した。


「まあ、そんなに大した薬草でもないんじゃないかしら! だって、まだ幼子のシャーロットですら、スーパーレア薬草と言われるものを簡単に入手してきたくらいだから」


「何ですって?」

プリシラが睨むようにシャーロットを見つめてきたので、驚いたシャーロットはびくりと体を跳ねさせる。

それから、シャーロットは困ったようにプリシラを見上げたまま口を噤んでいたので、彼女の後ろにいた聖女が代わりに、馬鹿にしたような声で続けた。


「そうね、シャーロットは『黄風花』、『赤甘の実』、『海大葉』の3種類を入手したんだったわね! ふふふ、図鑑でいくと、最高級難易度に当たるのかしら?」


そうよね。よく考えたら、シャーロットのことだから、贈った薬草を独り占めするはずもなかったわよね。


そう彼女の性格を分析していたけれど、ふと顔を上げると、勝ち誇る王城の聖女たちと、腹立たし気に睨み付けているプリシラ、その間で俯いているシャーロットの構図ができていたのだった。


いつも読んでいただきありがとうございます!

2/15(水)にノベル8巻&ZERO2巻が同時発売されることになりましたので、お知らせします。

今回は、ノベル8巻のご紹介を(ZERO2は次回ご紹介します)。


挿絵(By みてみん)


以下、内容紹介です。


〇WEB掲載分

 全体的に結構な量を加筆修正しました。読みやすくなったと思います。


〇加筆分

1 【SIDE】オルコット公爵ロイド「君を守ると誓ったから」 

 「この現状を打破するために必要なのは、既にこの世にない奇跡だ! 一体どこをどう探して、何に希望を求めればいいのだ」

妹が長い眠りにつき、苦悩するロイドの前に現れた光は……?


2 【SIDE】国王ローレンス「世界か君かであれば、君を選ぶ」

 日一日と僕を魅了し、夢中にさせ続けた僕の聖女は、眠りに付いた。そのため、僕が享受していた楽しくて、笑いに満ちて、輝いていた日々は終わりを告げる。決断を迫られた僕は、即座にコレットを選んだ。世界か君かであれば、迷うことなく君を選ぶ。もう王でありたいとは望まない。


3 ザビリア、「粛清リスト」を更新する

「ザビリア、何を見ているの?」

「んー、『粛清リスト』だよ。久しくそのままにしていたので、そろそろ更新しようかと思って」


4 【SIDE】カーティス「休暇の正しい使い方」

 「完全に休暇の無駄遣いだな!」

フィー様のための行為を無駄だと表現されたことにムッとしたため、私はデズモンドとザカリーに問いかける。

「では聞くが、休みというのは、好きなように過ごしていいものではないのか?」


5 【SIDE】クェンティン「クェンティン・アガター(29歳・独身)、母になる」

 大袈裟なほどにのけ反って、オレの腹を凝視してくるギディオンを前に、オレは誇らしげに胸を張った。ああ、世の母親は、妊娠した際にこれほど誇らしげな気持ちになるのだな、と考えながら。

「オレはこれからしばらくの間、母親業を優先させる。まずは腹の子が無事に生まれるよう、最良の環境を整えたいから、オレの前では絶対に大声を出すな! オレを揺さぶらず、走らせず、静かに過ごせるよう努めてくれ」


6 セラフィーナと騎士団長食事会(300年前)

 「本日はご招待いただきありがとう。お土産にクッキーを作ってきたので、よかったら皆さんで食べてちょうだいね」「ク、クッキー? を、つ、作った?? オレのためにですか!?」

ツィー団長がそう口にした瞬間、隣に立っていたアルナイル団長がツィー団長のお腹に拳をめり込ませた……ように見えたけれど、ツィー団長はかっと目を見開いただけで平然としていたので、見間違いに違いない。

「ツィー、お前、それ以上妄想を垂れ流したらマジで殺すぞ」という、脅すような小声が聞こえた気がするけれど、これも空耳に違いない。


〇初版特典SS(※初版のみ、別葉ではさみこんでもらうペーパーです)

「【SIDEローレンス】コレット(9歳)、王城の牢に入る」

 驚いた様子で顔を上げたコレットを見て、単純で可愛らしいなと心の中で思う。どうしてもこの冷たくて居心地の悪い地下牢に居続けたいならば、僕に同調する様子をこれっぽっちも見せてはいけないのに。だが、そんなことは君にできないだろうから、この牢に入った時点で君の負けなんだよ。残念だったね。


とっても楽しいできあがりになったと思いますので、どうぞよろしくお願いします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

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★【大聖女 (本編) 】コミカライズへはこちらからどうぞ
★【大聖女(ZERO)】コミカライズへはこちらからどうぞ
ノベル11巻が発売中!
【SIDEザカリー】国宝の鎧を真っ二つにしてしまったオレの顛末、続・シリウスと恋人デート(300年前)など、5本を加筆しています。

また、通常版に加えて、小冊子(これまでの超美麗カバー等ポストカード+SS「フィーア、シリル団長の騎士服に刺繍をする」)付きの特装版もあります!

ノベル11巻

ノベル11巻特装版

10/16ノベルZERO6巻が発売!
立派な聖女になりたいと思ったセラフィーナは、聖女の修行をしようとするけれど……
『騎士団長たち酷い』案件勃発。

ノベルZERO6巻

10/10コミックス13巻発売!
フィーアがサヴィス総長にとっておきの花を取ってきたり、クェンティン団長に特別なお土産を渡したりします。
半分以上がWEBにないノベルオリジナルの話になります。

コミックス13巻

10/10コミックスZERO4巻発売!
とうとう西海岸に到着した近衛騎士御一行様。不審な男性に遭遇するも……
コミックスZERO4巻
どうぞよろしくお願いします。

― 新着の感想 ―
[一言] ≫300年前は女性の半分以上が聖女だったから、随分減ったものね。 日本なら何度か書いたように、ちちんぷいぷいや、飛んでけ飛んでけみたいな?もちろん地方により風習や習慣の違い、言葉の違いはあ…
[一言] これは現代社会でも言えるけれど、草花も一つの生命体。当然ながら薬草も同じく。 ならば私達と同じく、同じ仲間同士で通用する言語が有っても不思議ではないですし、他の動植物とも会話できる共通言語…
[良い点] シャーロットが大分フィーアに毒されている [気になる点] > 300年前は女性の半分以上が聖女だった そんなに多かったんですね。 精霊のおかげなのかな
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