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連れてきました


結果、至貴さんは無害そうということになり魔王様から城に連れてきてよしってらお許しが出た。謁見の間に連れて行ってあげたら至貴さんは時代劇みたいに座り込んで深々と頭を下げる、その仕草が洋風のお城でなんだか不思議だなってどうでもいいことを考えてしまう。


「城主殿、なんとお礼を申し上げていいか…」

「え?俺助けてねぇしハナコに言ってやって」

「ぬぅ、しかし花子殿にも同じ事を言われてしまっている。某はどこに感謝を伝えればよいのだ」

「はあ。律儀だな。じゃあ俺が受け取っとく」


お礼を言ってくる人に対して本気でめんどくさいって顔するの、魔王様くらいなんじゃないだろうか。至貴さんが大らかだからいいけど、もう少し普通にするとかしないのか…うん、しないね、この人。魔王様の拒否に至貴さんがちらっとこっちを見てきたけど、私は苦笑いで首を横に振った。だって、危なそうだと思ってたら絶対助けられなかったし、私の罪悪感のための行いといいますか、逆にお礼いわれると申し訳ないんだよね。


「…あの、この人って本当に方向音痴なんですか?」

「そんなわけあるか、スキルが制御できてないだけだ」

「え?制御出来ないとかあるんですか」

「そりゃな。先天的に高ランクを持ってると苦労する奴が多い」

「へぇ」


そっと気になってたことを魔王様に耳打ちすると、呆れ顔で否定された。

なんでも至貴さんの持ってるスキルは縮地の極、スキルとしては1番高いランクでそれが今回の行き倒れの理由なんだそう。縮地っていうのは単純にいうと歩く距離を縮めるもので本人は一歩足を動かしただけでも数メートル先に行けたりするんだって。至貴さんくらいになっちゃうと一歩だけで海を渡れちゃうらしい、そんなことある?


ちなみに魔王様の使ってる転移は距離を縮めるものじゃなくて本人がそこに飛ぶやつだから全然違うんだって。ふーん、って感じで私からしたら雲の上の話を聞く。なんでこの城って規格外の人ばっかり集まるんだろう、私すごい場違いで心細いまであるんだけどな。


「…あー、えっと。ところで、なんで至貴さんは至貴さんって名前なんでしょう」

「は?」

「だってこの世界って言語が統一されてて文字だって共通ですよね?なのに漢字があるっておかしくないですか?」

「かん…?」

「アズマ文字のことじゃないかしら」

「あぁ、なるほど。別におかしかない、ヒノアズマは外交に消極的な島国だ、異国人を敬遠する傾向にある国民ってのはどうしたって警戒心が強い。侵略された時とかを考えて同郷以外に読めない文字を作ったわけ、それがアズマ文字」


なんとなく疎外感を誤魔化すために気になったことを聞いてみる。


外で至貴さんに教えてもらった名前は私がよく知ってたはずの漢字だった、ちゃんと見ると漢字になる前の象形文字?あんな雰囲気だったけどこっちに来てから何故か書けなくなってた懐かしいアレ。今までに会ったこっちの世界の人は全部横文字だから気にしてなかったけどやっぱりおかしくないかと思ってたんだよ。


サリィさんのアシストで納得いった魔王様が軽く頷いてこっちでいう漢字を宙に書く。暗号化ってことなのか、正直言葉が通じるんだからそんなに意味無いんじゃないかなって思うけど、こればっかりはこっちの世界の人じゃないと分かんないかもね。


「島国は独自の暗号や名を持つ民族が多いわ。逆に大陸なら海を跨いでいてもどこだって似たり寄ったりになるのよ。勿論その地に合わせて違いはあるけれどね」

「はぁ…なるほど…?」


頭を傾げる私にサリィさんが微笑んでくれる、あんまり納得がいかない私はちょっとだけ目を泳がせて、そして、さっきからずっと放置してしまってた至貴さんと目が合った。うわ、完全に忘れてた。至貴さんはこっちが3人で話してるのを怒りもせずに、どちらかといえば興味深そうに眺めている。


「あ!す!すみません!置いてけぼりにして!」

「あいや構わぬ。寧ろ邪魔をしているのはこちらだからな」

「なぁ、ヒノアズマの人間だろ。スキルの暴走があるって言ってもなんでストバイトまで来たんだ」

「どこにでもある話だとも、某には兄上が13あってな」

「じゅ、13!?」

「ふふ、そう驚かなくてもいいわ。あの国は一夫多妻なのよ」

「あ、あぁ…そ、そういうことですか…」


いや、でも多くない?


サリィさんも魔王様も普通な顔してるけどえっ、こっちの日本ってまだそうなの。唖然としてる私を置いてけぼりにして至貴さんは話を続けた。


「これでは最早役などあるまいと、家を出てきた次第。しかし某はそのぅ、旅をするとなるといつもその場所を通り過ぎてしまうようで…」

「その歳になっても制御出来てないのか、厄介だな」

「うむ、まぁ知らぬ土地を歩くのも愉快ゆえ積極的に取り組まなかったのであるが」

「え、いいんですか…?迷子ですよね、それ…?」

「何、言葉は通じる!通じずとも理解していけばよい!祖国は1番だがそこで一生を終えるのはあまりに退屈に過ぎよう」

「…な、なる、ほど…」


豪快だなぁ、大雑把すぎると思わなくもないけど笑顔が眩しいので言う気もなくなるや。魔王様はからっと笑う至貴さんをまじまじ見てから面白そうに笑った。


「あの国の人間にしては開放的だな、俺お前みたいなやつ嫌いじゃないぞ」

「恩人殿にそう言って頂けると某も嬉しい。して、一つ尋ねたいことがあるのだが」

「うん?なんだ?泊まりたいなら部屋貸すけど」

「それはありがたい!否。そうではなく」


お泊り許可に嬉しそうに笑った後、至貴さんは小さく咳払いしてキリッとした顔になる。そして身体ごと魔王様の隣、サリィさんの方に向けて少し緊張した風に口を開いた。


「…そちらの女神が如きお方よ、不躾な問いだが伴侶はいらっしゃるのか?」

「…えっ」

「…まぁ」

「……ん?」


伴侶って確か、結婚してる相手って意味だったよね。

うっとりした眼差しでサリィさんを見つめる至貴さんに、異常なくらい冷静に考えていた。


「おい、サリィ。アミュレット壊れてんのか?」

「馬鹿ね、それならハナコも魅了にかかるでしょう」

「確かに。じゃあ純粋にってことか」

「そうね。ふふ」


ぼけっとしてる私をよそにサリィさんは綺麗な微笑みを浮かべながら至貴さんの方に歩いていった。そして、至貴さんの顔を覗き込むように腰を折って囁くように話しかける。


「恋人はいないわ、私は夢魔なの。ヒトと添い遂げることは出来ないと分かってくださるかしら?」

「なん、と……道理でお美しい」

「ありがとう、あなたのように心根が良い方にお褒め頂けるなんて光栄ね」

「お名前を頂戴しても?貴女の口から聞いてみたい」

「サリィよ、サリィ・アニムス」

「サリィ殿…」


なんだか2人の周りにぽやっとピンク色なオーラが漂っているような気がする。お城でヤバいほど感覚麻痺してるけど、そういえば至貴さんも美形なんだなぁ。ちょっと小悪魔的な美女に一目惚れするさっぱりした気持ちのいい若侍かぁ、うん、そういう話も探せばどっかにありそうな…。


「…ちょ、ちょちょちょ!ちょっと!魔王様!止めなくていいんですか!?」

「え?なんで」

「なんでって…ま、まぁそうですけど!なんかほら!サリィさんはずっと一緒にいた人じゃないですか!」

「そうだけど、なんで?」

「あー!えっと…えっと……ほら!危険じゃないですか!」


完全に余計なお世話なことは分かってる、サリィさんの口振りからしても絶対に至貴さんに脈はない。だけど、私は何だか急な不安感で魔王様の肩を掴んで揺すってしまった。されるがまま揺れてくれている魔王様はこっちをキョトンとした顔で見上げてて、私が勝手に感じてる焦りなんか知りもしない感じだ。


サリィさんと魔王様はそういう仲じゃないし、多分これからもそうなんだと思う。私は何も、それを無理やりくっつけたいわけじゃないけど、けど。でも、なんか嫌だ。サリィさんは綺麗だしそりゃあ誰だって好きになると思う、今までいなかったのが不思議だもん。至貴さんも、ちょっとしか話せてないけど悪い印象はないし今のやり取りで嫌になったとかじゃない。


嫌なのはこっちのよく分かってない魔王様だ、今の2人のやり取りを眺めてた魔王様をチラッと見た時に、凄い「ふーん」って、ただそれだけの顔をしてたのが、嫌。


1000年一緒にいたんだから少しくらい、自分に関係あるかもって顔してくれたって全然いいのに。むっとして魔王様の顔を見つめると、何かに気が付いたように少しだけ目を細めた。


「………あぁ、なるほど。確かに一理ないでもないでもないけど…あんまり俺の流儀じゃないんだよなぁ」


魔王様の目がいつも通り面倒そうに動いてサリィさんを捕まえた、そしてこれまた普段通りに少し気が抜けた声をかける。


「サ〜リィ。食うなよ」

「食べないわよ、失礼ね」

「そうじゃないですぅ!!!」


…まぁ、うん。こんな私だけがモヤモヤしてる気持ちが通じなくてよかったのかもしれないけど、やっぱり大分悔しい、なぁ。



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