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世知辛い話でした

はっきりいって、この世界の文化レベルは日本と比べて低いと思う。まぁ、ファンタジー世界っていうとそういうもんだろうし、異世界に来てまで日本とそんな変わらない環境だったらなんていうか生き返り損?みたいな、そういうがっかり感味わいそうなので全く構わないんですけどね。そんなちょっと遅れてる世界で、明らかに恵まれすぎな魔王城の居候を続けて思ってしまうのは発展の遅さなのでした。


「何で魔法があるのに文明栄えてないんだろ…」

「情報の普遍化には金がかかるから」

「し、シビア…」


そこは俺が凄すぎるから、とかドヤ顔で言ってほしいポイントでした。独り言のつもりで言ったけど、魔王様の耳に届いてしまった疑問はあっさり打ち返されてしまった、うーん、なんて無味乾燥。お金か、どの世界でも大事だね。なんか魔法使う人ってお財布に打撃が行きがちって話聞いたことあるし。私は現代人だから魔法があれば何も無しに部屋の片付けが終わったり何か唱えるだけで遠出できたりって想像しちゃうけど、この世界結構甘くなかったりするんだっけ。


欠伸を我慢もせずうだうだソファで寝転ぶ魔王様はこっちに首だけ向けて話を続けた。


「貧富の差って国の問題でさ、末端まで富んでる国なら識字率も高いんだけど、教育機関を作るにしろ、交通網を整備するにも金がかかるんだよ。大規模な魔法技術使ってってなれば倍以上だな」

「うぅ、なんでそこファンタジーなのにふわっと解決しないんですか」

「お前の言うファンタジー?は夢がありすぎ」


だってファンタジーは夢だもの、仕方ない。なんの犠牲とか対価もなしにフワッと面倒な事が片付きそうな気がするじゃないですか、そんなこと言ったらきっと呆れた顔で見られるし絶対言わないけど。いや、前聞いたよ、魔法の素材として宝石とか薬草使ってるって話は。お金かかるよね、わかる、魔王様みたいに無から作ってるわけじゃないんだし、資源は有限だし。なんでファンタジー世界に来てまで世知辛さを噛み締めなきゃならないんだろう。


それで、文明が栄えるには常識レベルが上がってないといけないし、その為には学校がどこにでもあって当たり前にみんなが通えるようになってないといけないしで、なんか途上国みたいな話だ。実際カロン村でも子供たちは基本的に親の手伝いするか遊んでるかであんまり本とか宿題とかやってるとこ見たとこないね。アルカディアとはいっても辺境も辺境だし、整備は進んでないんだろうな。


ちらっと隣のソファで優雅に紅茶を飲むサリィさんに視線を向ける、こっちでの私の先生っていうと魔王様とサリィさんなんだよね。物知りな人が多かったらいいんだけどな。


「こう…先生やりたがる人っていないんでしょうか…」

「いないわね、学者ってどんどん自分で掘り進めていってしまうから」

「頭に直接いれちゃえば簡単なんだけどな、はは」

「あの、宇宙人みたいな発想やめてもらえます?」

「宇宙人って何?」


あ、この世界宇宙人いないんだ、いや、こっちの世界でもあるかどうかわからないけども、概念としてなさそうだね。でも頭に直接知識入れるって怖いっていうか、結構古い発想だけどチップとか入れられるようなもんでしょ。にこやかにいうところがさりげなく怖いよ。


一応識字率が低いって言っても全員が全員、その、文化レベルが低いってことはなくてちゃんと学者とか賢者って呼ばれる人達は存在してるみたい。ただ、知恵の独占って言ったらいいのか、自分の発見を広めることを早々に諦めていけるところまで調べ尽くして気が付いたら御臨終って風らしく、その人の遺品を整理している時に新事実が分かるってことの方が多いらしい。

なんて勿体無い、って思うけど世紀の大発見みたいなのをしたとしても発表する場も聞いてくれる人も少ないわけだからそういう結果になってしまうのは仕方のないことなのかも。それだったらまだ、異端視されてでも話を知ってもらえるほうがいいだろうになぁ、とかこっちの偉人を頭に思い浮かべちゃったりする。


「この世界最大の学術都市っていうと、ドワーフの国ね」

「えっ、あの…物作りしてる種族じゃ…?」

「解析と発明が得意な種族が頭悪いわけねぇだろうが、アイツらは知恵の確立まで含めて物作りが好きなの」

「な、なるほど…」


ドワーフって、魔王様がオーバーテクノロジーなマジックアイテムの設計を委託したところじゃなかったっけ。

ていうかなんかイメージと違う、聞いてみるとドワーフは来るもの拒まず去る者追わずな大きな街を地下に作っているらしくて、各国から頭の良い人がそこに留学して色々学んでくるんだそうだ。

地下都市っていうとなんとなく汚くて不便な印象だけど、魔法やら何やらで自給自足が出来てるちょっと暗いだけの立派な都市らしい。凄い。そして変な感じ。


「アニメとかゲームとかだとドワーフっていうと鍛冶とか、お酒好きなイメージあります」

「そういう伝わり方なのね、鍛治も得意だけれど…嗜好品は人それぞれではないかしら」

「ご、ごもっともで」


そ、そうだよね。どんな種族にでも個人差ってあるし、誰でもお酒好きってことは珍しいよね。サリィさんの不思議そうな顔にそれ以上を言えなくなる。うん、私もいつもの又聞きだから別にドワーフを詳しく知ってるわけじゃないしいいんだけど。


「えっと…文字ってやっぱり学校行かないとダメなんですかね」

「大きめの教会だと子供向けにやってるとこがあるらしいが、芳しくはないみたいだな」

「学校といった場所は、まず文字の読み書きができてから入れる場所だもの。最初が狭き門なのはどうしようもないわね」

「ま、そこは国の仕事だし?実際大国だと識字率は高いぞ、世界全体で見たらかなり下がるだけだ」


まず勉強したいって気持ちはある程度物事に興味が無いと意味がないし、その前段階で勉強の楽しさを分かってないと続かない、と。私って恵まれた国にいたんだなぁ、楽しい楽しくないに関わらず義務教育ってものがあったし普通に読み書きができるって凄いことだったんだ。その辺噛み締められてないから、カロン村の遊んでる子に勉強しなさいとか、お説教出来ないね。もっともこっちの世界でも義務教育みたいな考えが浸透すれば、色々変わっていくと信じたいけど。

ちなみにマリエラはかなり教育に力入れてるみたい、なんかホッとするね。


「あ、そういえば言葉って世界共通なんですか?」

「まぁ、一応はね。ただどうしても国ごとに…なまり、というのかしら、そういう小さな違いは出てくるし種族ごとに名前の付け方だとか尊重する文化は違っているわ」

「でも、大体同じなんですね?話通じやすくていいなぁ」

「だってそもそも、話通じても闘争は起こるだろ?言語だけでも揃えとかないと簡単に国とか種が滅ぶ」

「へ、へぇ〜…」

「ふふ、言葉が通じてもダメな実例がここにいるものね?」

「本当こまめに突っかかってくるなぁお前は!」


なんでそう物騒なの?まぁ確かに言葉が通じない悲劇って往々にしてあるけど言葉が通じる理由が色んなのが死ぬからってそんなことある?舐められすぎでは。いや、完全否定できるほどこっちに詳しいわけでもないですし、向こうのこと思い出してもおかしい判断ではないと思うけどね。


なんでもここの世界ってヒトも魔性も色々種族がいるから、本当にちゃんと標準語を定めておかないと種族によって聞き取れなかったり発音できないものがどうしても出てきちゃうんだって。だから、創造神様が色々な種族が産まれた後にそうやって世界を定めたんだとか。

確かに強くて怖くて何言ってるのかわからない生き物とかがいたら、恐怖心に駆られて戦争を起こそうとする人達がいるのかもしれない。

ちなみに、古代種も古代種のガルム様は独自の言語体系を作っちゃったけど標準語は話せるし、まぁ問題なしなんだそうで。


言葉はほとんど1つなのに、未だに国々が繋がってない世界と、言葉が色々なのに世界が繋がって、でもやっぱり戦争はある世界、かぁ。


「…つくづくどっちもどっちな世界だなぁ」

「無理にどっちが一番なんて考えるべきじゃないと思うわよ」

「そうそう、都合がいい場所なんて基本どこにもないんだぞ」

「世知辛い、ですねぇ…」

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