雑なレベル上げでした
「正直引く」
「わかる」
「えぇー」
魔王様がザクザク手首を切って、血を塊にして、なんか魔法をかけてそしてアイテムを作る一連の流れに九条くんが至極真っ当な感想を述べた。ありがとう、ずっと言えなかったんだよね。普通にしてるからツッコミにくくて。
「魔法の材料って、宝石とか薬草とかが基本だろ。なんで血使うんだよ」
「一番効率良いからな」
「…身体大切にする気あるんですか?っていうかいつも思うんですけど、痛くないんですか?」
「痛覚消すくらいさっと出来る」
そういう話はしてないんだよね。痛くなければいいとかじゃなくて、人間の身体だからダメージに弱いっていうくらいなら身体を守る努力をしてほしいっていうか、はっきり言って見ててかなり怖いっていいますか。まぁ、かなりお世話になってる手前文句も言えなかったんだけどね、ネックレスの赤玉を触りながら溜息をつく。
出回ってるマジックアイテムは宝石がこの部分に使われているらしくそれもあって結構お高めなんだそう。いや、まぁ、わかる。魔王様の血の一滴の方が何倍も高いんだろうなってことは分かる。その上ちゃんとしてれば復活するんだもんね、鉱石とかと違って掘り尽くすことなんてないし便利で効率もいいだろうね。はは、本当にやめてくれないかな。
「俺の場合神の血だから使わない手は無いし、普通のヒトだって血は良い材料なんだぞ」
「え?そうなんですか?」
マジか、魔王様だけじゃなかった、信じたくない。いよいよ、なんだっけ?黒魔術?じみてきたなぁ。魔王様の血は元から魔力が通ってて、かつ外からも取り込みやすいって話だから普通のヒトとはやっぱり違うんだろうけどね。私の疑問に頷いて、魔王様は赤メッシュの髪を摘みながら話し出した。
「材料の基準として、血、髪、爪、あとは皮膚とか…身体の一部はかなり良いぞ。魔力の伝導がいいからな」
「う、なんかホラー…なんでそんなものが…?」
「それだ」
「え?」
「だから、それ。聞いてゾッとしただろ?」
ピンとこなくてまた首を傾げてしまう。魔王様が言うには、魔法っていうのは想像力が必要なんだそうな。まぁ、そこは分かる、脳内のイメージを出力するっていうのは何回か聞いてた話だしね。で、簡単なものならそれだけでいいんだけど、ちょっと応用を効かせると魔法には想像させる力、ってものも備わってくるんだそうな。
どういうことかっていうと、例えば火の近くに油があったらふとした拍子で引火するかもって考える。それと同じで、これだけの仕掛けをするなら不思議なことが起こっても不思議じゃないって周りの人とか環境に思い込ませる力ってことらしい。魔法を使う側だけじゃなくて、受ける側とか見る側にも想像させる、心を惹きつけるほど魔法っていうのは強くなっていくんだって。うーん、なるほど。思い込みは凄い、ってことなのか。たしかに魔王様の神様の血なら何が起こっても不思議とは思わないや、こういう感覚ってことだね。
「宝石は言うまでもないけど、薬草だって使いようによっては感情を揺らせるってわけ」
「…へぇ、そんな理由あったんだ」
「勉強になったろ?ま、ヒトは大変だなって思うけどさ」
「あ、嫌味ですねー、魔性だって自傷行為なんて滅多にしないと思いますけど」
「ん?あー、違う違う」
他の奴らならこんなに苦労して可哀想って言う自然体の上から目線かと思いきや、魔王様は手と頭を両方振ってから腕組みした。
「そのせいで臓器とか人身売買減らないんだよな。ヒトの命って大体宝石よか安いし」
「………」
「…………………あぁ、なんだ、そういうこと」
「えっ、待って、九条くん?何?心当たりあるの?」
「…オレはやってない」
「やってたら通報するよっ!?」
シビアな理由だった、まぁ分かりますよ!分かりたくないけど私達が生きてた世界でもめちゃくちゃ大きい宝石とか何億もしてましたしね!でもそんな普通に言われると真顔になります。あー、そういえば夜危険って言われた時も臓器関連の話されたなぁ、移植手術とかじゃなくてそういうオカルトな方面での利用だったのかぁ。
そして既に世界の闇の片鱗に触れていたらしい九条くんの重い沈黙に慄きつつ、軽く腕をさすった。
「うー、怖…ファンタジー世界…」
「魔獣素材の方がギルドだと人気あるけどな」
「そんな柔に産んでないし、実際さして出回ってないだろ?」
「あー…まぁ、アルカディア以外だとそうかも」
「…チッ」
「舌打ちした…」
「どうにかならねえの、その変な拘り」
「勇者が作った国だからしょうがないだろ。あ、ライムは好きだけどな」
「…ふーん、オレの勇者認定、アルカディア本部直々だけど」
「うぅん…」
唸るほど嫌か、それにしても九条くんって国から直々に勇者って言われてたのか、すごいね、やっぱり。
そしてアルカディアってあのかなり強そうな魔獣をまともに相手にしてるんだ、魔王様も褒めてた軍事力って並みじゃないんだな。
「あ、でも、ライムが勇者ってのは納得」
「は、なんで」
「なんでも何も。お前こっちにきたらえっと、カンスト?してたんだろ、俺だってこんなに鍛えるまで数百年かけたんだからな」
「え、生まれつきじゃねーの」
「そんな赤ん坊怖ぇだろ、腹突き破ってきそうだわ」
驚く九条くんに半目になる魔王様、悪いけど九条くんの気持ちわかってしまうなぁ。なんか本当そのまま生まれてそうだもん、あ、でも確かにカンストの赤ちゃん怖いにもほどがあるな。いろんなもの口に入れたり触ったりするのに筋力凄まじいわけでしょ、お母さんが育児ノイローゼどころの騒ぎじゃなくなってしまうわ。っていうか魔王様のお母さんってどんな人なんだろう、過去のことがあるから大っぴらには聞けないけど相当肝っ玉とか心広くないとこの人の相手出来なそうだよね。
私が勝手な想像をしていると、魔王様は腕を組んで大きな深い溜息を吐いた。
「本当大変だったんだからな、村にいた頃は100程度だったし」
「でも21歳?では200レベルだったんですよね、ペース早いし結構楽そうじゃないですか、レベル上げ」
「え、ん、まぁ、その、魔性だから上がりやすくはあるけど……その、それは特例っていうか…」
たった3年で100上がったのにそれから先でいきなり上がりにくくなるなんてあるのかな、ゲームとかだと強くなるほど強い敵倒さないといけないと大変だけどこっちの世界でもそうだったりする?でもいきなり数百年に期間が延びるっていうのはやり過ぎなような。急に挙動不審になった魔王様を不思議な気持ちで見ていると九条くんが少し視線を彷徨わせてから耳の後ろを指でかいた。
「………経験値」
「え」
「だから…経験値。そいつ、アレしたんだろ」
「………………あっ」
そっか、世界の半分をアレしたって相当なパワーレベリングってやつでは。そりゃ3年で100も上がりますわ、適正な期間は数百年だったってことね、なるほどなるほど。いよいよ麻痺してきてたけど、100越えってだけでもとんでもないんだね、そして目の前の人は途方も無いよね。
「そんな目で見るなよ」
「…いや、まぁ、魔王様ですもんね」
「言っとくけど、オレは人殺しとかしてないから」
「九条くんも九条くんで相当なことしてるのわかるからね」
「こいつと比べてほしくない」
「なんだよライムまで!」




