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報告聞きました

「ほっっ、んとありえねー」

「まぁまぁ」

「お前のせいだよ」

「まぁまぁ」

「あんたは他人事だからってさ」

「ふっは、まぁまぁ」

「せめて笑い堪えろ!」


予想してたことだけど九条くんがこれまた疲れて帰ってきたよ、魔王様は荒んでるわけでもないから変な事は起こらなかったんだろうけど純粋にトラブルが起きたんだろうなぁ。それでも丸投げせずに連れ帰ってくれたんだから真面目だなぁ、あ、ほっといた方が怖いって言われたらグゥの音も出ないんだけどさ。


三者三様の雑な労いをかけて、しかめっ面のひどい九条くんにお茶を差し出した。一瞬むっとされたけど喉は乾いていたみたいで複雑そうな顔で受け取られる、申し訳ない、もので釣ってるみたいだよね。ソファに腰を下ろして早速事情聴取に移ることした。


「そんなにひどかったの?」

「もう通りがかる人って人をばったばったと…」

「た、倒して…?」

「気絶させただけだぞ?」

「気絶させたの!?」

「抑えの効かん男だな」

「優しさに満ち溢れた男といえ、無血で帰ってきてめちゃくちゃ偉いだろーが」

「は?」

「えぇ…風当たりつっよ…」


何故血を流さなければオールオッケーみたいな感覚なのか、魔王だからか、さいですか。怖いよ、平和に生きる感覚を備えてほしい。取り敢えずは凄んだ九条くんに心からのごめんを言えるところから始めてほしいです。


魔王様に聞いてみたら、完全に善意だったらしく。いや、この段階でどうかと思うんだけど、九条くんが絡まれやすいからそもそも絡んでこないように吹っ飛ばすところから始めようと魔法で周りにいる人達を昏倒させて回ってたらしい。そんなマッチポンプなセコムある?結局本人疲れてるし、よく早く帰って来られたよね。そもそも周り全員を気絶させてるから問題にもならなかったのかなぁ、あはは、明日のバイトで恐怖!突然の集団気絶!みたいな噂聞かされたらどうしよう。ボロ出ないように出来るかな。


「えーと、魔王様的にお出かけはどうでした?」

「もうちょっと城にギルドが近かったら流血沙汰だったかもなぁ」

「魔王ジョークは置いといて、他は平気だった?」

「まぁ、なんとか。用事も片付いたし」

「あ、そうそう。なんだったの?」

「これ」


九条くんが胸元からチェーンで吊った透明なカードを出した、ガラスみたいに透明なのに向こう側は透けてない不思議な素材だ。冒険者に配布される身分証明書みたいなもので、ランクによって色が変わってくらしい。Eランクなら白、Dは緑、Cは黄、Bの赤にAの黒。そしてSの透明。九条くんのこれは周りからクリアカードって言われてるみたい、見たまんまだね。


こんなものが身分証になるのかなって首を傾げたら、九条くんがカードの本体に触る。そうしたら表面に顔写真みたいなものと名前が浮き出てきて横にはレベルまで載ってる。おぉ、ちゃんと証明書だ。これ、意外と多機能らしくて関所もこれを門番の人に見せれば通してくれるし、お金をギルドに預けていればカードを提示するだけで現金を持ってなくても支払いが終わるんだって。うわー、免許証兼クレカじゃん。いいなぁ、便利。

昨日の大乱闘の時にこれが壊れちゃったみたいでそれを直しに行ってたんだって。確かにこれが無くなったり壊れたままなのは辛いね。


「別に、各支部でも変えてもらえるけど情報も欲しかったから」

「うわぁ、便利だね」

「へぇ、結構面白い作りだな」


魔王様がそのカードを見るなり目を輝かせてカードを摘んだ、すると大音量でブザーが鳴って透明だった色が真っ青に染まって罰マークが大きく表示される。あまりのうるささに、私は思わず耳を塞いだ。


「うわ、うるさっ!」

「使用者以外が持ったり、触れたりすると音と軽い刺激がくる術式っぽいな、改変できるけど良い工夫だ」

「普通は術式の組み替えなどやれないものだぞ」

「そこはほら、俺だから」


魔王様が指を話したら音は鳴り止んだ、近距離で騒音を聞かされた九条くんは凄い顔をしてる。ダメージとかないと思うけど純粋に嫌だよね、音って。サリバンさんの冷静なツッコミを受けて当然のように魔王様が頷くけど、わざわざ言うってことはこのカード相当凝ってるってことだよね。だってこの人が良い工夫っていうくらいなんだし、ちょっとほしいなとか思っちゃったけど夢のまた夢ってところだね、そもそも私冒険者なんか慣れそうもないし。


「でもクレカっていいなぁ、使いやすそう」

「いちいち両替もしなくていいから便利そうだなぁ、俺もギルド入ろうかな」

「アルカディアが本部なのにか」

「そこだよな。世界的に成り立てばいいけど、両替業で生計立てるやつもいるから…あ〜!それにあれだ、冒険者ってのもルーツは勇者なんだよな、やっぱなし!」

「拘るなぁ…そこまで嫌ですか」

「嫌う要素しかねぇよ、せめて俺に殺されて死ねば普通だっただろうけど勝ち逃げって感じに死んだし」

「あ、そう…」

「こ…怖…100パー私怨じゃないですか…そこまでくるとアルカディア関係ないし嫌わなくても…」


魔王様、かなりゴーイングマイウェイだけど勇者関連になると駄々っ子ってレベルじゃなくなるな、どこぞのガキ大将が可愛く思えるレベルというかさ。かなり物騒なこと言うけど、つまり俺様に負けてから死ねってこと…だよね?うーん唯我独尊ってやつかな、よくもまぁここまで嫌われるものだよ。私と九条くんの引いた眼差しとサリバンさんの呆れた目線を受けて、当の本人は不思議そうに首を傾げている。やっぱり負担がどうのとかプライベートを差し置いても感情視は常に使ってほしい。


「?、俺別にアルカディアも王族個々人も嫌いじゃないぞ、勇者の国で、勇者の末裔で、勇者の国民だから腹立つだけで」

「……え?いや同じですよねそれ…?」

「全然違うって」


何が違うんだろう、今度は私が不思議な顔をする番だった。魔王様は指を折りながら淡々と話し始める。


「アルカディアの国力が目を見張るものということは確かだし、代々の国王も良く出来てる。まぁ国民の喧嘩っ早さは玉に瑕だが研鑽なんかに取り組んでる姿勢も評価出来るな、あとは兵の練度は世界一高い」

「そうか。勇者が拓いたとなれば?」

「領土拡張しか能がない傭兵崩れの国を傀儡が続けてるってところだな」

「差!!」

「主観と客観はあるもんだろ」

「そんな極端になるなよ…」


そして、サリバンさんが勇者の話題を出すと、握り込んだ手から親指を抜いてそのままビッと首の前で一字に切る。さっきまで自然な顔で話してたっていうのに嫌悪感丸出しで、極端すぎる切り替えに私と九条くんが戸惑うばかり。

確かに主観的意見だけっていうのは良くない、良くないけど、それだけ好意的に見られている国をたった1人の故人の存在だけで斜に構えて見てしまうのってどうなんだろう。なんだかなぁ、0か1しかないってこういう人、なのかなぁ。

そんなことを考えつつ私はすっかりぬるくなったお茶を飲んだのでした。

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