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ちゃんと行ってました

「なんか意外です、サリバンさんが留守番だなんて」

「小僧がいれば問題はないだろう。それに、昼出歩くのは身体に合わん」

「あ、夜行性ですもんね」


そんなわけで、かなり出がけに渋ってたけど無事に魔王様は九条くんに連れていかれたよ。そのままじゃ目立つからって変装して普通の服だったし案外目立たないかも。というか、そうであってほしい。

ギルドは冒険者自体がかなり時間にルーズってこともあってほとんど24時間営業に近いらしいんだけど、嫌な事はさっさと片付けるに限るって具合に朝に出発してった。私はそもそもバイトがあるしで辞退させてもらったわけだけど、時間帯的にサリバンさんも着いていかなかったみたい。2人ってセットみたいな感覚があるからちょっと新鮮だな。


「サリィならば兎も角、俺がアレに付き添う必要のある場面は早々無いぞ」

「あ、あー…マリエラの時くらい、ですかね?」

「あぁ」


魔王様がそういうことに一切興味なくても、横に弩級の美女が控えてたら絵としての圧が強いもんね。それでも近寄ってくる人がいるっていうのが驚きなくらいに、さ。どうみたって勝ち目ないよ、本人達は付き合ってないわけだけども変な人避けには効果抜群だもん。でもサリバンさんが横に並んじゃうと、あのイケメンな魔王様と比べても美男だから霞んじゃうし一緒にいると逆効果なんだろうな、こっちは。


「アレと長いのは確かだが、番でも侍従でもないのでな。向こうもそんな期待はしていなかっただろう」

「え、そうですか?サリバンさんってなんやかんや魔王様に頼られているような気がしますけど」

「言っただろう、長いだけだと」


なんか名前呼ぶだけで意思疎通が出来てるイメージ、サリバンさんが魔王様の言いたいこと汲み取るのが上手いだけかもしれないけどそれって凄いことだと思うんだよね。私に言われてサリバンさんはふっと顔を逸らしてしまった。うぅん、複雑な気持ちとかあるのかなぁ、この辺あんまり突いちゃダメだったかなぁ。やや気まずくなって目を泳がせてしまう。


「…魔王様、問題起こしてなければいいですよね」

「10割無理だな」

「わかります」

「そも、アルカディアは魔性への警戒が強い。入って誤魔化せるかどうか」

「え、魔王様ならやれそうじゃないですか?」

「…だといいが、アレはヒトに合わせても根本でズレている。よくわからない場所でボロを出しかねん」

「…んー、まぁ、その、それを見越しても九条くんがいるから大丈夫、なんですよね?」

「あぁ。こういう時に役立ってもらわなくてはな」


そう言ってサリバンさんが喉で笑う、うわぁ、悪どくも綺麗な笑顔だなぁ。面倒ごとを九条くんに押し付けられて喜んでいらっしゃる、何だかんだで苦労人だもんなぁ。結構飄々としてるから忘れがちだけど、ずっと魔王様と暮らしててよく胃が痛くならないよね、そもそも無いからかな。なんて、ははは。


それにしても、アルカディア側の魔性への警戒って絶対魔王様由来だよね。あの人の勇者への恨みも中々根深いけど、7000年経ってもお互いの禍根?みたいなものは消えないのかなぁ。私が働いてる村は末端も末端だけど、アンナさん達が魔王様のこと嫌ったり怖がったりするの嫌だし、さっさと風化してほしいよ。


「綺麗事なのはわかってるんですけど…仲良くなれないものですかね」

「面倒な話だ、意地を張っているのは奴だけだからな」

「え、え?じゃあアルカディア側は魔王様をそこまで嫌ってはいないんですか?」

「ふ、どう思う?」

「あ、それずるいですよ!」


思わせぶりな笑顔を見せてはぐらかされてしまう、ううん、顔が綺麗すぎて誤魔化されちゃうなぁ。えーと、つまりは警戒してるイコール嫌いではないってこと、だよね。怒らせないようにしろっていう警戒だったりするのかな、そうだったらまるで猛獣扱いだよ、間違ってはいないけど。聞いてもいまいち何が嫌で何がいいのかわからない人だもんなぁ。頭をひねって悩んでいると、サリバンさんが小さく笑った。


「正直な話、俺はお前が1年保つとは思わなかった」

「あ…えー…でも、ほら、まだたった1年ですよ?」

「ただでさえ腹が立つだろう、嫌にならなかったか」

「だってそこは、ほら、ヒトじゃない人に押し付けるのって違うかなって…あ、徹底は出来てないんですけど」


うん、やっぱり失礼だなって思うときは怒っちゃうんだよね、魔王様は沸点が低いくせして意外と心が広いから甘えてしまって人間の考えで突っ込んでいっちゃうことばっかりで。でも魔王様がサリバンさんの言う通り合わせるつもりが無い人、ならお互い様、なのかもね。それに甘えたら今度こそダメなんだろうけど、今のところムッとしても嫌じゃないや。たまに怖く思うことがあるけど、何か遠い話をされてる感覚もあって実感もないし。卑怯な私は、見えないものは上手く怖がらないみたいです。生きる世界がそもそも違う人ならしょうがないのかもって、口に出せない臆病者なのかもしれないけど。苦笑すると、サリバンさんはゆっくり目を閉じてふっと息を吐き出した。


「お前は、その諦観を恥じるかもしれないが俺はそれを好ましく思う」

「…えっ?」

「そのままでいいという話だ」

「…サリバンさんもサリィさんも甘やかし上手ですよね」

「甘え上手でもある」


お互いに軽く笑いあってから、お茶を飲む事にした。少しくらい、九条くんと魔王様のお土産話を期待したりなんてしてみた。









「なぁ…周りがさっきからばったばった倒れてるんだけど」

「ん?おう。絡まれるのダルいってさっき言ってただろ、だから魔力で意識から吹き飛ばしてる」

「そんな力技するか?」

「しょーがねーだろ、俺アルカディア人に絡まれたらムカついて殺しちゃうかもよ?ははっ」

「あぁ…そう…」

「なんかアレだったらライムの殺気とかにびびって気絶してるってことにしといてくれ」

「無茶言うな。本部着いたらやめろよそれ」

「りょーかいりょーかい」


魔王の残虐性を花子が直接目にする事はこれからもないです、周りのみが知るというものですね。モブの限界。

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