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納得いきませんでした

魔王様は案外喜怒哀楽が薄い気がする、なんていうか備わってるけどさっと消えちゃうって感じ。根に持つ性格って本人は言ってたけど、私や他の人に悪口言われたってその場限りで全然引きずってる様子を見せたことなんてない。だからなんていうか、魔王様が心を乱す理由なんて二つくらいしかないんだよね。1つは魔獣、もう1つは。


「なぁハナコ〜滅ぼしたい国とかある?アから始まってアで終わるとこだと良いんだけど〜」

「い…いいえ……特に………」


いつも通りのちょっと気の抜けた笑顔、だけど背後に抱えるオーラのドス黒さといったらもう。思わずどもっちゃったよ、冷や汗止まらないし、春だっていうのに談話室の気温が凄い寒い。震える私にサリバンさんがそっとブランケットをかけてくれた。うぅ、イケメンだ。


「すまないな、この時期になるといつもこうだ」

「何が建国祭だボケ…7000年も続いてるんだから王が死ぬ時にだけやれば良いだろ…」

「えぇ…おめでたいのは、良いことじゃないですか…」

「そうだな〜俺がボコボコにされてるような腹立たしい創作物だのなんだのが量産されてなきゃ俺だってこんなに荒れないだろうな〜」

「めっちゃリサーチしてる…」


理由は当然アルカディア、この時期は建国祭なんだって。魔王様の勇者嫌いは分かってるけど、勇者はめちゃくちゃ真っ当なことしてるしそこで拗ねられてもなぁ。っていうか、下手すればお母さんを殺した人よりも勇者の件引きずってるよね、舐めてかかったのが悪いと思うんですがそれは。口に出せはしないけどつい微妙な顔で目の座ってる魔王様を見てしまう。


なんていうか、魔王様の実在って定期的に暴れるガルム様と違ってあんまり信じられていなくて、でも神話の話が結構魅力的だからって理由で劇作家がリメイク版とか、新解釈とかで色々違うの作ってたりするんだって。昔のこと黒歴史扱いしてる魔王様的には中々色褪せないってわけで、こんな感じになってしまうんだそうな。


「うるせぇ!自業自得だってのは分かってんだよ!何もここまでやらなくていいだろ!バーカ!内乱で滅びろ!」

「で、でも、滅ぼさないんですね!丸くなったんですねー!」

「神罰が怖いだけだぞ、今度こそ始末されるだろうからな」

「誰が怖がるかぁ!死にたくねえだけだ!」

「同じだ馬鹿め」


むしゃくしゃしたで国滅ぼされたらたまらないもんなぁ、流石に今度こそお父さんが反対しても多数決で鏖殺権?っていうの行使されるだろうし。


「…建国祭、皆で行けたらきっと楽しいのになぁ」

「えー…夏にマリエラの建国祭あるからそこにしようぜ」

「梃子でも動かないつもりですか…」

「あまり姫君を困らせるなよ」


こんな状態でお祭り行っても倍で荒れそうだけど、楽しいイベントでイライラするなんて勿体無いよね。前、カロン村のお祭りに私だけ行っちゃったし皆でお祭りは行きたいんだよ。マリエラなら美味しいご飯もあるから嬉しいけど…あの腰の低い王様、気苦労でハゲたりしないかな。ちょっと心配かも。


世界の半分事件が無ければここまで魔王様の話が神話として広がることもなかったんだろうし、それならアルカディアにも普通に行ってくれたんだろうか。ちょっと気になる、まぁ、意味のない話かもしれないけどね。お祭りについて粘っても無駄っぽいから早々に話題変えよう。


「魔王様はもし過去に戻れるなら、悪行はしない…とか考えますか?」

「うん?うーん、ちょっと無理すれば出来ないことはないけど…どっちかっていうと村の奴らを産まれてくる前に殺すかな?」

「あっ…はい…」

「安心しろ、事実上禁忌だ」

「時間軸の干渉って俺でもかなり難しいんだよ、理論立ては出来たんだけど実行に移すとなると色々なぁ」


怖い。過去を頑張れば変えられそうな魔王様と、遡ったらやる事が怖い。でもそこ勇者じゃないんだ、存在が嫌ってわけではない、のかな。わかんないなぁ。


で、やっぱ時間を弄るのは危ない事らしい。事実上っていうのは禁忌なのは未来の方だけだから。過去は干渉が難しくて実行しても大した事出来ないから言うまでもないっていうグレーゾーン。白紙に何か書くより書いたところを直す方が難しいってことなんだそう、へぇ。


「未来の方なんですね?」

「うん、やると絶対時空の神が荒れるからやらない」

「なんか不思議ですね。過去の方が重要そうじゃないですか、タイムパラドックスっていうか、ほら、ここが起こらないと未来が!みたいな?」

「なんで?帰り道歩いたって朝にはならないのに」

「え?」

「え?」


お互いにそれは違うだろって顔で首を傾げてしまった、いや、でも違うでしょそれは。道を戻るのと時間を戻るのは別問題じゃん。


「んーそっちの世界とは理が違うのかもなー」

「ハナコの世界では時は降り積もる地層のようなものなのか」

「あー…えっと、そう、なのかも?少なくとも人の行動ひとつで未来って変わりますよね?だったら過去が未来に向かっていく…みたいな考えになるべきでは…」


地層なんて大したものじゃなくて、過去が繋がってるから今になるんであってそこを弄ったら壊れちゃうんじゃないかな、言うなればジェンガ的な。別のもの押し込んだらグラグラするはずだよね。うーん、私こういう哲学的な話説明するの苦手なんだけどな。ぼやぼやした例えと身振り手振りでなんとか伝えてみると、2人は納得したように軽く頷いた。

ありがたいけど、私が情けないなコレ。2人が頭いいってだけだろうけども。


「ここの世界の考え方は点と点の繋がりなんだよ。例えばここの点からいきなり新しい点が先の方に生まれたとする。そうしたら必ずその点に繋がらなくちゃいけない。縦じゃなくて横の考えだな」

「未来を固定することで過程の行動が縛られる、ということだ」


魔王様が空中に丸を描いてそこから離れた場所にまた丸を描いて線で繋げた。縦じゃなくて横、なるほど、なるほど…?いや、でも、やっぱり納得いかない。だって原始人にスマホ与えたりしたら流石にガタガタになるでしょ。そりゃ未来だって大切だけど、過去あってのもの、といいますか。過程が縛られるっていうのはなんとなく分かるんだけど、うーむ。


「ま、ぶっちゃけ俺が昔に戻って大陸荒らす前に自殺したとしても、この未来はあんま変わんねえぞ」

「えっ!?」

「ちょっと遅れたり早まったりするけど神は必ず増えるし、マジックアイテムも別の奴が開発する、魔獣は…動物が特殊進化するとか。通り過ぎた点だから世界も同じ点を通ったって体で修正されるってこと」

「え、えぇ…?」

「理解が難しいだろう、しなくとも構わないぞ」


魔王様がいなくてもタイムパラドックス起こらないなんて信じられないって。だって、この人いろんな伝説残しすぎだもん!自殺とか絶対しないだろうけど、それでも魔王様がいなくても変わらないなんて訳が分からない。この世界の修正力が強いっていうのは理解出来たけど、でも、なんていうか、そんなのは酷い。過去をいじる人が悪いけど、どうしてそこ直しちゃうの。違和感くらい残してくれたっていいじゃんか。


「分かりやすい言い方するなら、どんな存在にも代わりなんていくらでもいんの」

「………私、基本的に自分の考えは押し付けたくないんですけど、そこだけは、信じたくないです」

「ふ、いじらしいな。お前も見習え」

「いや全然分かんねーわ、何なの?」


この世界のルールはこの世界のもので、私がそれを嫌がったところで何の意味もないし変わりはしないんだろう。

だけど、なんていうか、こんなめちゃくちゃな人にも代わりがいるなんて思いたくないし、魔王様の存在は魔王様のままでいてほしい。そしてそれは、サリバンさんも、いてもいなくても同じな私だってそう。わがままな私は当然のように寂しい事を言う魔王様に腹を立ててしまったのでした。


しばらくの間もう一本の連載を中心に更新していきたいと思っています、気長にお待ちください

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