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全否定されました


「おばけっているんですか?」

「はぁ?」


秋といえばハロウィン、ハロウィンといえばおばけ。まぁ今が10月に当たるかはわからないんけどね。一応一年が12ヶ月って事は聞いたんだけど日本の感覚とは季節感から違うから、なんとなく秋だし10月くらいかなって思ってるだけ。なのでこっちにもそういうイベントがあるのかなって聞いてみただけなのに、魔王様もサリバンさんも面食らったような顔をしてる。あ、魔性がいるっていうのが一般的な世界だからわざわざおばけって言わないのかな。


「いるもなにも…まさかわざとか?わざとなのか?」

「え?何がですか」

「おばけって、多分化け物のことだろ?俺もサリバンなんかもそのクチじゃん」

「あっ、ち、違います!そういうのじゃなくて!幽霊!」

「何それ?」


ファンタジー世界の幽霊をご存知でない、かなり大きなジェネレーションギャップに絶句してしまった。死んだ人が魂だけで彷徨ってるんですって説明してもピンときてないようでしきりに首を傾げている、まさか存在そのものがないなんて。天使と悪魔以来の衝撃、なんか当たり前にありそうなものがなかったりするよね。


「冷静に考えろよ、死んだヤツがうろついてたら怖ぇだろ」

「存在がインチキな人に諭されるの納得いかないんですけど…」


半神に否定される幽霊とは…というか怖いって思う事あるの。いや幽霊怖いけど、そんなマジレス方面からの返しが来るとは思わなかった。でもその価値観はサリバンさんも同意見らしく小さく頷いている。うーん、幽霊っていうのは無いのか、ビビり的にはかな。有り難いけどそしたら他のホラー系もないんだろうか。


「ゾンビとかはいないんですか?これは動く死体なんですけど」

「…それはスライムだな」

「えっ、いやスライムってプルプルしたゼリーみたいなやつでしょ?」

「素体はね。あいつら寄生する生き物だから、入口があったらどっからでも入って乗っ取るよ、すぐ成長するからほっとくとマジで災害みたいに」

「待って怖い怖い怖い怖い、スライムってザコじゃないんです!?」

「ザコなわけあるか、物理攻撃は効かないし、一撃で蒸発しないと生き残ってまた増殖するから面倒なんだぞ。手乗りサイズが村を壊滅させたなんて話も笑い話じゃないくらいだ」

「ひぇ…」


嘘でしょゲームだったら序盤も序盤の敵だよ、なんでそんな世紀末パラサイトになってるの。あれってあ〜癒されるって枠のモンスターでしょ、そんなヒヤヒヤする性能に何故した。魔王様がザコじゃないって言い切るなんて相当でしょ。

ちなみにスライムには派生種が多くいるらしくて、王水吐き出すアシッドスライムとか、ヒトの形に擬態できるマスクスライムとかがいるんだそう、怖いよ。知性ってものは備わってなくて話通じないし、食欲だけはやたら旺盛だから冒険者ギルドでの依頼には必ずと言っていいほど登場するとか。湿気の多くて空気が澱んでいるところには何処でも湧くらしくて、誰でも除湿の為に色々買いそろえたり作ったりするんだって。まぁ自分の家からスライムが出て周りを巻き込んだりなんかしたら真っ白になるよね、色々。ゴキブリとかいるのか気になってたけど、そんなヤバいものがいる世界じゃ鼻で笑われるだろうなぁ。

スライムの恐怖に引きつった顔の私を見てサリバンさんが小さく咳払いをする。「死後の魂の話だったな」といつもより少しだけ軽い声でレールを元に戻してくれた。


「基本的には、死者の魂は神界に管理される」

「そそ、信者の魂は神の財産だから」

「えーっと、つまり無神論者は幽霊になったり?」

「ならんわ、なんで死者に会いたがるんだ」


会いたいわけではなく、幽霊っていうのが一般的なホラーカルチャーとして浸透していたのでつい流れという感じなんだけど。少し聞いてみると、この世界にはほとんど死者の為のお祭りってものがないらしくて、たまに墓参りをするくらいなんだって。

魂は生前信仰していた神様の神殿に集められて、静かに眠っているんだとか。神様は誰でも生前祈りを捧げる形で神格の支えになってくれた教徒を大切にしているらしい。そしてこの世界には無神論者はほとんどいない、神様の実在がはっきりしてるからね。それに加護も貰えるわけだからまず誰も信じていない人なんていないわけで。たまに祈りもしない捻くれ者がいるらしいけど、そういう行き場のない魂はガルム様が捕まえているんだって。うん、手荒にはしてないって話だけどもドラゴンに捕まえられるの嫌じゃないかな、あ、いや意識は無いんだから別に良いのか。


「たとえ世界を呪うほどの怨念があったとしても所詮はヒトだ、魔性ならまだしも魂だけの状態で地上に残れるほどの力は持てない」

「…基本的には、な。だが何事も例外っていうのがある、ヒトのくせに魔性並みの魔力を持ったヤツとか色々反則出来る」

「強いヒトならワンチャンあるってことですよね…ズルくないですか?」

「アホ。後悔したり、他人を恨んだりするだけで死んだ後も生きられるんだったら無法地帯だっつーの」


大地の魔力と同調してそこに混ざれるとその土地にいることが出来たり、魔力を貯めた水晶とかに入り込んで留まったり、魔力が多いヒトならそんな反則な真似が出来るとか。とはいっても動ける身体を乗っ取って復活、みたいな真似をすると流石に物理的なお叱りがあるらしい。まぁ不気味なことには変わりないし、身動きも取れないのにそこまで労力を使うメリットもないから滅多にいないんだって話だけど。

それにしても全否定かぁ。確かに死後ありきで色々考えるの不健全かもだけど、見守ってくれてる、みたいに思うのはいいんじゃないだろうか。


「魔王様に寿命ってあるんですか?」

「ないけど、身体はほぼほぼ人間だからな、ひどいダメージ受けたら死ぬ」

「事実上不死身では?」


魔王様の防御力って相当エグいよね、貫通することまずないでしょ。サリバンさんはサリバンさんで、あの………食事、で寿命も摂取してるようで、身体だって実体がしっかりあるわけじゃないからほぼ不死身。魔核を壊されちゃえば死んじゃうらしいけど夢の世界にあるから手を出せる人なんていないんだって。なんか普通に死ぬ私が申し訳ない気がして来た。


「死んだ後のことばっか考えるなよ、人生がどうでもいいみたいに見えるぞ」

「おそらくハナコの世界では死後が不明瞭なのだろう、未知の領域は得てして恐ろしいものだ」

「嘘だろ、死んだらそこまでって周知されてないのか?死んだ後も生きてる方が嫌だと思うけど」

「た、多分…人生辛いから死んだ後は優しい世界で暮らしたいなぁってことじゃないかと…」

「そんな死にたがりが終わりのない世界で生きていけるとは思わんな、絶対ちょっとのことで死にたーいとかいうだろ、もう死んでるのに」


ぐぅの音も出ない。私も13連勤とかした時頻繁に死にたいとか言ってたけど、本当に死にたかったわけじゃなくてどっちかというと弊社爆発しろ的な感じだったし。天国で嫌なことあったら普通よりもストレス溜まるだろうし、かといって自分に優しだけの生き物しかいない生活をしてたらだんだん虚しくなりそう。嫌なことはいやだけど、幸せなだけっていうのも悲しい。わがままだけど死んだ後は時間も何もないから私みたいな人間は堕落しまくってしまいそう。休みはいくらでも休みたいけど、ふと我に返って何もしてない事に気がつくと自己嫌悪がひどいんだよね。


「…魔王様死にたくなったことあります?」

「無いなぁ…俺以外全員死ねとは思う」

「そういった考えだから魔王と呼ばれるんだぞ」


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