25 聖獣とは
25 聖獣とは
美味しい食事とお酒をいただいて、1日の最後に虫の話というのはどうなんだろう。
ともかく、今回の話をまとめると自然の中でも偶然魔素が暴走することはありえること、ルフの探知能力でそれをある程度調べることが出来るということだろう。
魔素が拡散することで人間には特に影響はない。ただし魔獣は違う。
魔獣がどのように生まれるのかは分かっていないが、魔素が濃い地域に自然発生すると言われている。
皮膚や肺器官から魔素を吸収し、凶暴に進化する。進化した魔獣は集団になることで淘汰され、更に進化をして、その姿かたちも大型になり、身体能力も高くなる。魔獣の巣は、ほかの巣と統合されていく。村が町に、町が都市になるようにほかの個体も呼び寄せて群れは巨大化していく。
凶暴化した魔獣は、魔素を好み、特に魔力が満ちた人間を好んで捕食する。魔獣には理性はなく、純粋で凶悪な悪意と欲望のみで、人間とは決して相容れることはないのだ。
それとは逆に、聖獣というのは魔獣と同じように魔素を吸収することも出来るが、体内に魔石が無く、人間とおなじように魔法を使える。その佇まいや在り方は人間よりも高貴で、長い年月の中で知恵を得ている生き神のような存在として崇められている。狼人族や竜人族といった種族は、過去の聖獣が人間と子を成した末裔と言われており、そのため聖獣に対しての信仰が篤い。
その聖獣は、いまは目の前でマッタリとワインを呑んでいるのですが…
「ん? やはり不遜なことを考えていないか」
「勘が鋭いね」
ジト目で見られるが、曖昧に笑って誤魔化しつつ、おつまみを追加でだしておく。
話題を変えることにする。
「ほかの聖獣に会ったことはあるの?」
「あるぞ。人族で有名なのはドラゴンとフェンリル、ケローネ、グリフォンだな」
「ケローネって亀だっけ」
「そうだ。小山ほどの大きさで、無口だが温厚なやつだ。山の中に引きこもっていることが多いので、なかなか人族がみることはないだろうな」
「どこにいるの?」
「カリダームとモイストの間にある魔の森だ」
「それ引きこもっているから見ることができないというより、そんなところに近寄る人間がいないってことじゃないの」
「そうとも言う」
魔の森というのは固有の森の名前ではない。国境や僻地に多い魔素が多い森の総称である。一番大きく、有名なのは大陸中央のクイナドラコ山脈、その周辺にある大森林地帯だ。魔の森は凶暴で、巨大な魔獣が多く生息しており、魔獣暴走の危険性があると同時に、そこで採集される木材や食料、薬草、魔石は暮らしを支える資源としての役割もある。
ただし、そのような森から魔獣暴走が起こることはごく稀なのは、そこに聖獣が住みつき、魔の森の魔獣を間引いてくれているためだ。聖獣が信仰され、尊敬の対象とされるのもそのような実利的な理由もある。
「おれもそのあたりの聖獣は書物で読んだり、聞いたことがあるから知っているけど、ほかにもいるの?」
「いるぞ、おそらくメルが考えるより多いと思う」
「え、どのくらい?」
「わたしが知っているだけで200は超えるな、種族は30ほどだが」
ブッとワインを噴出しそうになった。多い多い。
「意外と多いね… ルフみたいに定住しない聖獣もいるの?」
「もちろんだ。私のように鳥型だったり、手早く移動手段を持っているやつが多いな」
「というとさっきのケローネみたいに、大型だったり羽根がない聖獣は魔の森で定住しているってことか」
「そうだな」
へー、考えてみたら当たり前だけど納得。
「ルフは何でも食べるし、お酒も呑むようだけど、ほかの聖獣もそんな感じ?」
「いや、珍しいほうだ。飲食は、楽しみのひとつで本来はそこまで必要ではない」
「あ、そうなの」
「知り合いのフェンリルで食い意地がはっているやつもいるがな」
へー。目の前の聖獣を見ていると、コレ基準に考えてしまいそうになるけど、もっと多様なのかな。
「食べなくてもいいって人間から見ると楽そうではあるけど、楽しみがないね」
「然り」
「聖獣のなかでルールとかあるの?」
「ルールとはなんだ?」
「モラルというか、絶対に破ってはいけないこととか」
「ふむ、人間とほぼ同じだと思うが… 殺さず、盗まず、傷つけず… は当たり前だが」
「ああ、質問の仕方が悪かった。聖獣に対して失礼なこととかあるかな」
「…それをわたしにこのタイミングで聞くのもどうかとおもうが… 聖獣というのは基本的に長命なので、思慮深く、温厚な性格のものが多いので、人間同士と同じで礼儀をわきまえていれば問題ない」
「長命って、ちなみにルフは何歳なの?」
「3600歳とちょっとくらいだな。」
おお、桁が違うな。ファンタジーだ。
「他の聖獣も同じくらいの年齢?」
「バラバラだな。わたしは中堅くらいだな。ケローネやドラゴンは5000歳を超えているし、フェンリルは1500歳くらいだ」
「それでも長命だなあ。フェンリルはどこにいるの?やっぱり魔の森?」
「いや、彼奴はわたしと同じく流浪しておる。会うことは稀だな」
まあ、ルフと同じような役割なら、あまり行動範囲が重なっていないのかもな。
わざわざ魔の森に会いに行くなんて酔狂なことをする気もないから、他の聖獣に会うことも無いだろう。ドラゴンとかいくら理性的な存在だとしても怖いし。
すいません、ちょっと投稿空きます。




