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20 森林保護

 20 森林保護


 鉛筆を気に入った上機嫌のアディーナさんから、余った端材を使って良いと許可が出たので、木材置き場から適当に材料を調達する。レバノンさんはほかの業務があるので若い男性職員と交代していった。


 この世界では、魔素の影響なのか木材の成長するスピードが速い。地域ごとに森林の管理を行なっていて、樵と呼ばれる、所謂きこりが間伐など調整をしている。また、運送も魔法袋があるため容易で、建材や加工品として多用されている。地球の歴史で考えてみても、金属やコンクリートが建築物に多く使用されるようになったのは近代になってからだ。あとはこの世界で技術革新が起こりにくいのは魔法と言う便利な力があるからかもしれない。



 ハンガーは形状もシンプルなのでさっさと端材をカットして試作品を作る。フック部分は穴を空けて、クエスチョンマークのように捻じ曲げた金属の棒を固定すればいいだけなので簡単だ。


 マネキンは支柱に胴体部分差し込んで固定することにする。作業で出た木屑を掃除しながら、胴体部分の骨組みをどうするか考えていると、ちりとりの中の木屑を見てふとひらめく。前世で建築に使われる構造パネルがあったが、あれは削片状にした木材を接着剤と混ぜ、高熱でプレスすることで作っていたはずだ。


 試作として木屑に万能スライムゲルを混ぜ、薄い箱のような形にした鉄板の中にいれる。上から蓋をするように少し小さめの鉄板を乗せ、魔法で木材が焦げない程度の温度にしながら、同時に圧縮してプレス処理をする。熱を冷まし確認すると、なかなかの強度で問題なくできたようで安心する。今度は板状でなく、胴体を前後ろでぱっくりと割ったような前面と背面に分けたパーツの雌型を作り、同じようにプレス加工する。

 パーツを合わせ、支柱と固定する。今回使ったスライムが緑色だったので、木材のままの色合いではなく濃い緑色の見た目となった。張り合わせたときになかが空洞になるので軽量にもなったし、量産しやすいだろう。

 そのままでは木材と服が引っかかりやすいので、表面に布を張り合わせ完成だ。


 出来栄えを確認しているとアディーネさんが戻ってきた。


「おお、これがマネキンってやつか」


「はい、人族の男性用です」


「なるほどな、ってこの型は何だ?」


「ああ、はいこれは…」


 木片プレス加工したことを説明する。

 木屑は今まで火種や緩衝材くらいしか使用用途がなかったということで、なかなか好感触のようだ。また今まで材料としては使用しづらい折れ曲がったり、節があったり、虫食いがある3級品の木材も使用できるようになる。


「エルフは森林管理にかかわる仕事をしているものも多くてな。中途半端に成長した間伐材はそのまま薪として使うくらいしか用途がなくて、あまりお金になりにくいんだ。」


「ああ、そうですね。今回はマネキンでしたが、このプレス加工の技術はほかにも応用は効くので、今後需要が増えていく可能性がありますね」


「そうだな! よし! いろいろ研究してみるよ、いいだろ?」


「はい、あ、そうだ。特許は出しますが、特許料を森林管理する植樹の費用に寄付という形で還元します」


「え、いいのか?」


「もちろんです」


「ちょ、ちょっと待ってください」


 若い男性職員があわてて止めてくる。いままでそのような仕組みがないため各部署と調整させて欲しいとのことで了解する。詳しくは草案をつくってから、それをギルドで調整してもらうということで話はまとまった。



 打ち合わせが終わるとちょうど昼過ぎくらいの時間になった。

 この世界では一般市民は一日二食が基本で、昼間は軽食で済ませることが多い。ただしメルは前世の記憶を引きずっているのか、成長期なのかはわからないが昼もちゃんと食べる派だった。


 一休みしましょうと声をかけ、天気もいいので先ほど通った建物の間にある広場のようなスペースに移動することにする。

 休憩用のベンチ、イス、テーブルが何脚が置いてあり、そのまま使わせてもらう。火を使っていいか許可をもらい、コンロを用意する。

 薄く切ったパンを用意してさっさとサンドイッチを作る。具材はベーコンとチーズ、葉野菜でいいかな。ちゃっちゃと作って、大きなお皿に並べていく。作り置きの野菜スープは暖めるだけなのでもっと簡単だ。

 アディーネさんは目をキラキラさせて口も半分開いて、よだれをたらしそうな様子だ。苦笑しつつ、さあ食べましょうというと、待ってましたとばかりにサンドイッチをぱくつく。野菜しか食べないというような食べ物に忌避はない様で軽く炙ったベーコンが厚めでカットしていて美味しいと喜んでいる。


「美味しい!」


「あー、天気もいいし最高ですね~」


「食べなれた食材ですが、メルクリウス様が作るとこんなにも美味しくなるのですね!」


 ニクソンと名乗った男性職員も、賞賛しながら食べている。食べるスピードが速いのでお世辞ではないのだと思うが。

 スープも飲みながら、雑談をする。アディーネさんは循環的に森林保護の仕組みを作ることが森と共に生きると言われているエルフ族の琴線に触れたそうで興奮気味だ。ニクソンさんは合板の技術がマネキン以外のほかの用途でも応用できるということで、開発部でも色々と試作をしてみると言っている。


 食べ終わると職員の人が香茶を出してくれたので、飲みながらアディーネさんとアイデアを出し合う。効果的な活用方法や、適した木材の種類は何かという知識量はさすが技術職の責任者だけあって多く、話していて飽きない。


「型さえ作れれば、イスも量産できるね」


「屋外での使用は防水加工をしないと腐食しやすいかもしれません」


「そうだね、形状によって強度も変わると思うから調べてみるよ」


「あ、そうですね。木端の種類や大きさがある程度コントロールできれば、画一的な板の平均の強度をだすことができると思います」


「ではわたくしのほうでギルドで扱っている材木の種類などをリストアップした資料を作成します」


「現在は流通に乗っていない材木も取り扱えるので、そのあたりも知り合いの樵に確認してみるよ」


 どうやら勝手に動いてくれるようでメルはお任せすることにした。

 とくにここデメーテルでは大河を使用した木材の流通も多く、かなり大掛かりなプロジェクトになりそうで、いくつか木材を扱っている大手の商家に話をもちかけるとのことを了承する。アイデアは出すけど、それを運用するのは自分には難しいので丸投げする。


 ある程度まとまった草案を各部署と検討調整するということで、メルはギルドをあとにした。

次回投稿は7月22日の予定です。

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