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ハンドガン

本日、3話目となっております。

 頭に2本の剣を生やしたカモシカ30体をウズメさんに送り付けると、オレは盛大なため息を漏らした。

 オオトカゲ1体殺すのを躊躇してたのに、それから数時間しか経たないのに、カモシカの群れを全滅させてしまうとは、いくら何でも節操がなさ過ぎるというものだ。

 襲いかかって来たのは向こうだし、反撃しなければオレの方が死んでいただろう。実際、何度もオレの身体にカモシカの剣状の角が届いていたのである。

 大した怪我をせずに済んだのは、見かけはボロなのに耐刃性能の高い服のおかげだ。


 その服も、何ヶ所か切り裂かれた上に、オレの血で汚れてしまっている。

 身体の傷の方はナノマシーンが速やかに修復してくれたものの、服の方はこのまま着ていくしかない。2日目にしてこの有り様では、遠からず裸同然になってしまいそうだ。

 こんな過酷な環境だけに、甘い考えは早々に捨てるべきなのだろう。

 ゲームを楽しむつもりでいたけど、やはり現実は現実だ。生き残る為には非情に徹する必要があると、オレは痛感させられていた。


『では、ポイント交換はどうしますか?』

 そんなオレの気持ちを知ってか知らずか、あくまでゲームを進行させようとするウズメさん。

「今、何ポイントだっけ?」

 オレも落ち込んだ気分を振り払って、ゲームを進める事にする。

『5878ポイントですね』

「いきなり、ポイントを稼げたな。じゃあ、予定通りに拳銃1丁と射撃スキルで4000ポイント使うよ」

『了解しました』


 不意に頭の中に質量を持った光が飛び込んで来た感じがして、同時に全身の筋肉が瞬間的にビクリと痙攣した。

「――――!? 今のが、もしかして・・・」

『はい。射撃スキルⅠをダウンロードしました。必要な知識を刷り込むとともに、必要な神経ネットワークを構築し、必要な筋肉の発達を促しました。ハンドガンはいつもの要領でお受け取り下さい』

「お、おう。なるほどね」

 こんな一瞬で、触った事もない拳銃がそれなりに使える様になるなんて、そのお手軽さに頭がクラクラするオレ。


 とりあえず右手を地面にかざすと、そこに革のホルスターに入った拳銃が出現した。

 持ち上げてみたら、これが意外と軽い。

 ホルスターから抜き出すと、拳銃はまるでプラスチックでできている様な質感をしていた。グリップも含めて、色は黒。いわゆるオートマチックというタイプで、直線と曲線が混ざり合った綺麗なデザインだ。

『前回も説明しましたが装弾数は12発で、すでに装填済みです。弾丸は1発単位なら10ポイントずつ。12発装填済みのマガジンは150ポイントになります。なお、空になったマガジンを送り返してもらったら、30ポイントを返還します』


 オレはホルスターを剣帯の背中側に固定すると、拳銃を左手で構えてみた。

 右手は剣で塞がるからと思ってやってみた事だったが、これが予想以上にピタリと決まる。どうやら、拳銃スキルは両手に適用されている様だ。という事は、同様に剣も左手で振れるのだろう。

 それはともかく、拳銃を構えると視界に緑色の十字マークが出現した。銃口の向きを変えると、それにともなって十字マークも移動していく。どうやら、レティクルという照準用の基準線らしい。

『タケルの目が直接スコープになっていると思って下さい。どの位置で銃を構えようと、標的が視界内にある限りレティクルが表示されます』

「ほー。これは便利で良いね」


 マガジン1本分試し撃ちをしてみたけど、1発で灌木の幹をへし折る威力なのに、反動も射撃音も小さく、命中率も抜群だった。

 これで、ポイント稼ぎが大いに(はかど)るだろう。

 なお、まだポイントに余裕があったので、1000ポイントでマップスキルを手に入れておいた。オレ自身が歩いた場所とドローンが観測した場所が自動的マッピングされていくという便利スキルである。この先、ドローンの数を増やしていけば、惑星全域のマップを作る事も可能であろう。


 新しいマガジンを150ポイントと交換し、空になったマガジンを送り返す。プラスマイナス120ポイントの消費。

「あれ? そう言えば、薬莢が出なかったけど」

『薬莢を使用した弾丸は、24世紀には完全に消滅しました』

「へえ。じゃあ、後で薬莢を拾い集めなくても良いんだね?」

『仮に薬莢を使用していたとしても、そんな事をする必要はありませんが?』

「そうなの? 何か、もったいない気がしてさ」





 その日は、森の少し手前でキャンプを設営。

 どんな生き物が出て来るか分からないので、森からは距離を置いて休む事にしたのだ。

 実際、草原を歩いていても、足元の穴からネズミやモグラみたいな動物が噛みついて来るわ、空からはコンドルみたいなのが急降下して来るわで、この惑星の物騒さが身に染みてきていたのだ。

 ネズミやモグラは蹴り飛ばした上で銃で仕留め、コンドルは接近して来たところを抜き打ちにしたけどね。

 おかげで、所持ポイントがまた1000を超えた。


 で、ウズメさんの作ってくれたカモシカ肉のステーキを食べながら、どんなスキルやアイテムをゲットするか頭を悩ませていたのだ。

 ステーキは、ウズメさんが上手く臭みを消してくれたらしく、とても美味かった。見かけはカモシカだったけど、味は牛肉に近い感じだ。もちろん、食肉用に大事に育てられたブランド肉には負けるのだろうけど、しがない大学生だったオレはそんな高級肉の味なんて知りはしない。ただ、その美味さとボリュームに感謝しながら、肉を食べ続けたのであった。


『で、何と交換するか決まりましたか?』

「あ。・・・途中から、食べるのに夢中になってた」

『そうだと思いました。

 私からのお勧めとしては、感知系の強化でしょうか。ドローンをもう1機か、レーダースキルを取るとよろしいかと。また、狩りでの隠密性を高めたいのであれば、狩猟、忍術、暗殺術等のスキルがありますね。5000ポイントまで貯めていただければ、光学的に透明になれるステルス・マント等も良いでしょう』


 ステルス・マントってとても惹かれるけど、それより忍術や暗殺術スキルなんてあるんだ? そもそも51世紀には、忍術や暗殺術がスキル化されているのか?

 51世紀の忍者のイメージって、どんなのだろう? 21世紀の日本人からすれば、笑える様な忍者が出て来そうだけど、興味はあるなぁ。

「忍者スキルって、隠密性が高まる他にどういう特徴があるの?」

『アクロバティックな体術に投擲術、暗所での視力強化、毒物や隠し武器の使用知識等ですね』

「ふむ。悪くないね」


 と、忍術スキルに惹かれたものの、結局オレはレーダースキルを取る事にした。

 何よりも、まずは生き残る事が肝要なのである。足元からネズミやモグラが飛び出して来たように、即死攻撃を持った危険なヤツが不意打ちをかけて来る可能性も強いのだ。

 レーダースキルがダウンロードされると、オレの身体から電波が放射され、その反射波を受信、解析する事により、オレを中心とした半径20メートルぐらいの地形が触感に近い感覚で感じ取れるようになった。もちろん、その範囲内にいる生き物の動きも、手に取るように感じられる。


「おお、これは良いね。さすがに地中までは見れないけど、そう簡単に不意打ちを受ける事はなくなりそうだ」

 強力な武器と危険を察知する手段を手に入れ、オレはようやく本格的な冒険に踏み出せそうだと実感していた。






 ○アメノ・タケル


◇所持ポイント:154


◇スキル:【剣術】Ⅰ 【格闘術】Ⅰ 【射撃】Ⅰ(new) 【サバイバル】Ⅰ 【再生】Ⅰ 【マップ】Ⅰ(new) 【レーダー】Ⅰ(new) 【ガイリーン地方公用語】Ⅰ


◇アイテム:【偵察用ドローン】×1 【ハンドガン】×1(new)


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