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白聖騎士団

「これはこれは、アイシス様。本日はどのような御用で?」

 騎士たちの指示通りに箱車を止めたガーツ氏は、それほど緊張した様子もなく正面のパワードスーツ美女に問いかけた。そこにあるのは、白聖騎士団とやらへの信頼なのだろうか。

「ガーツ、相変わらず護衛も付けずにルージェとの間を行き来しているのか。少しは、自分の身を大事にしろと言ったろう」

「ユーリ様、それを言われると、耳が痛いですな」

 ガーツ氏の名前を知っていたのは、アイシス嬢の隣で、額に角の生えた馬に乗った短髪の少女だ。

 って、馬じゃなくてユニコーンか?


「本日、用があるのは、お前の隣にいる鳥面の男だ」

「え?」

 ユーリ嬢の言葉に、思わずオレとガーツ氏は顔を見合わせた。

「こちらの者は、白聖騎士団の皆様の手を煩わせるような人物ではないと思われますが・・・」

「アマンテュルス様の託宣だ。口をはさむのではない!」

「アマンテュルス様の!? こ、これは、失礼を・・・!」


 オレをかばってくれようとしたガーツ氏が、アマンテュルス様という名前を聞いて、あっさりと態度を改める。

「あれ? アマンテュルス様って、そんなに絶対的な・・・?」

「悪いが、ここまでだ。おとなしく、騎士団に従ってくれ」

 すまなそうに、ガーツ氏が言う。

 正直なところ、完全武装の騎士団に「用がある」と言われても、素直に従いたくない気持ちでいっぱいだ。しかし、ここでゴネるとガーツ氏の心証まで悪くしてしまいそうである。気が乗らないが、黙って騎士団に従ってみせるべきだろう。


「分かった。従おう。荷物を取ってから、箱車を降りる」

 オレはそう言うと、ガーツ氏に「世話になった」と挨拶をしてから、一度箱車の中に入った。そして、箱車の中に置いてあった背嚢を背負う。対物ライフルは、邪魔になるのでウズメさんに預けたままだ。100ポイントを払えば、すぐに手元に送ってくれる事になっている。

 ガーツ氏はオレが箱車の後方から降りたのを確認すると、大角山羊に鞭を当て、その場を去って行った。


「で、オレはどうしたらいい?」

「出来たら、街道から離れて、あの辺りまで行ってくれると助かるな」

 ユーリ嬢が指し示したのは、街道のすぐ横に広がった荒れ地の一角だ。なぜか、蜘蛛型戦車が4台も待ち構えているのが見える。

「なんか、ロクな予感がしないんだけど」

「案ずるな。苦しませはしない」


 別に隠す気もないのか、ユーリ嬢が物騒な事を言う。

「えーと、どういう理由で、オレはこんな目に合ってるのかな? 理由が分からないと、弁明も出来ないぞ」

「理由は、アマンテュルス様の託宣という事で十分だ。よって、弁明も必要ない」

「いやいやいや、そんな非人道的な話はないだろ? あんたたち、ガーツ氏の態度を見る限り、そんな無茶な人たちじゃない筈だ」


「何を言われようと、我らの行動を覆す事は出来ない。あきらめろ」

 気づいてみれば、オレは3方向から囲まれて、魔槍で狙われていた。逃げるには、戦車の待つ荒れ地に向かうしかない様だ。

 オレは肩をすくめてみせると、騎士団の指示する方向へ歩き出した。





「で、オレが何者なのかも確かめず、ここで処刑する訳か?」

 6台の蜘蛛型戦車、8騎の騎兵、1体のパワードスーツに囲まれながら、オレは恨み言を口にする。しかし、騎士団の面々は、露とも動揺を見せない。本当に、どれだけアマンテュルス様とやらを信奉してるのだか。

『アマンテュルスという人物は気になりますね。どんな手段で、タケルを危険人物だと知ったのでしょうか』

 おいおい、オレは危険人物で確定ですか? 黒幕はウズメさん、アナタなんですけどねー。


 頭の中でウズメさんに突っ込みを入れていると、パワードスーツ姿のアイシス嬢が右手を上げた。

 騎兵たちの魔槍と戦車に搭載された特大の魔槍が、オレにピタリと狙いを付ける。

「放て!!」

 凛々しく澄んだ声とともに、アイシス嬢が右手を振り下ろした。

 途端に、全ての魔槍の根元付近から真っ赤な光が漏れ出し、少しずつ先端部へと移動して行く。


 タジルたちの魔槍の光は、オレンジとか黄色に近い色だった。が、騎士団の魔槍の光は、鮮やかなまでの赤色だ。

 その違いは――――。

『属性の違いの様ですね』

 ウズメさんが淡々と論評してくれる。

 タジルたちの魔槍は最終的に土の槍を射出したが、騎士団の魔槍は、先端に展開した魔法円から紅蓮の炎の塊を撃ち出したのである。

 

 オレを狙って四方八方から放たれた炎の塊は、地面に着弾すると、激しい爆発を引き起こした。

 タジルたちが持っていた魔槍に比べると、属性が違うだけでなく威力の強さが段違いだ。魔槍の攻撃に見舞われた付近は土の地面が燃え上がり、激しい黒煙を噴き出している。

 そんな中にオレが平然と立っているのを見て、女性騎士たちが驚きの声を漏らす。


「馬鹿なっ。あの集中攻撃を食らって、生きていられる訳がないっ」

 ユーリ嬢が悔しげに表情を歪める。

 それを、オレはユーリ嬢のすぐ後方から見ていた。

 着弾点に立っているオレは、立体映像スキルによって投影された虚像だ。オレはステルス機能を持つマントで姿を消し、虚像を残してユーリ嬢の後方に回り込んだのである。

 オレの術中にはまって悔しがるユーリ嬢が、ちょっと可愛い。

「もう一度魔槍を斉射後、1番のクモが前進して奴を仕留めよ!」

 

 地団駄を踏むユーリ嬢とは対照的に、パワードスーツ姿のアイシス嬢は冷静な態度を崩さずに指示を飛ばす。

 栗毛のショートカットが健康的なユーリ嬢と比べ、アイシス嬢は癖のない銀の髪を長く伸ばし、病的なぐらいに肌が白い。態度も、動きの大きなユーリ嬢に対し、アイシス嬢はほとんど無駄な動きをしない。その物腰が、達人的なものを感じさせる。要注意だ。


 オレがアイシス嬢の動向を気にしている間に魔槍の第二射が行われ、オレの虚像を中心に再び猛烈な爆発が巻き起こった。

 同時に蜘蛛型戦車――――アイシス嬢の言う“クモ”――――が1台、8本の脚を器用に動かして、着弾点に向かって疾走を始める。クモがどういう武器を持っているか分からないが、接近戦でオレを仕留める気なのだろう。

 オレはウズメさんから対物ライフルを転送してもらうと、手近なクモに銃口を向ける。


 その瞬間、アイシス嬢が通常の1.5倍の剣を振りかざして、オレに斬りかかって来た。

 うわっ! ステルスマントは、立体映像と立体音響によって、視覚と聴覚的に完全に周囲を欺く機能を持っている。どうやって、オレの存在に気が付いた!?

『魔力によって感知する方法が、あるのかも知れませんね』

 ウズメさんが冷静な意見を披露してくれるけど、聞いている余裕なんかないから!


 腰から拳銃を引き抜くと、素早くアイシス嬢の胴体を目掛けて発射!

 金属の装甲の上から撃たれたアイシス嬢は、身体を硬直させ、そこへぶっ倒れた。

「くっ・・・!」

 倒れたアイシス嬢はビクビクと手足を痙攣させるだけで、自由に動く事が出来ない。

 麻痺銃の効果だ。

 

 わざと弾速を遅くした弾丸は、生身の人体さえ貫く事はない。が、着弾と同時に21本の微細な針を標的の体内に送り込み、約20分に渡って中枢神経を麻痺させる電流を流し続けるのである。この針は筋肉や脂肪等の柔らかい組織に留まる様になっており、金属や革の鎧は貫いてしまう。オレがウズメさんに注文を付けまくって、完成させた非殺傷武器なのだ。

 なお、撃ち込まれた針は、用を果たした後は粉々に砕けて、体内に吸収されてしまう。


「こ、この! どこだ!?」

 アイシス嬢が倒れたのを見て、うろたえるユーリ嬢。

 めんどくさいので、麻痺弾で眠らせておく。

 そして他の騎士たちにも1発ずつ撃ち込み、麻痺させた。

 残るは、クモだけだ。こちらは麻痺銃では無理なので、対物ライフルで片側の脚をまとめて吹き飛ばし、行動不能にしていく。

 対物ライフルで本体を撃ち抜けば、搭乗員はただでは済まないだろう。慎重に狙わなければならない。


 



 結局、アイシス嬢に斬りかかられてから、騎士団を殲滅させるまで2分もかからなかった。オレも戦えるようになったものだ。

 さて、ウズメさんを喜ばせる為に、魔槍やら戦車を回収しにかかるか。ポイントも、たっぷりもらえるだろう。






  ○アメノ・タケル


◇所持ポイント:11036(騎士団の装備品のポイントは含まず)


◇スキル:【剣術】Ⅱ 【格闘術】Ⅰ 【射撃】Ⅱ(new) 【忍術】Ⅱ(new) 【サバイバル】Ⅰ 【再生】Ⅰ 【マップ】Ⅰ 【レーダー】Ⅰ 【立体映像】Ⅰ(new) 【立体音響】Ⅰ(new) 【ガイリーン地方公用語】Ⅰ


◇アイテム:【偵察用ドローン】×2 【護衛用ドローン】×1 【転送用ドローン】×1 【シャモーの剣】×1 【ハンドガン】×1 【麻痺銃】×1(new)【対物ライフル】×1 【ステルスマント】×1(new)

 

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