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巨大蟹狩り

 赤黒い甲羅の横幅は、80センチ超。

 ハサミの大きさもそれに比例し、子どもの胴体ぐらいはチョン切ってしまいそうな威容だ。

 まるで、鎧武者。

 とにかく、デカい。

 そんな巨大過ぎる蟹がうじゃうじゃと群れているのを見て、オレの背に怖気が走った。


「鉄甲蟹だ。奴ら、神殿に住み着く気だ」

「マズいだろう。あんなのに神殿を占領されたら・・・!」

「ああ。二度と神殿に足を踏み入れられなくなる」

 オレに丸聞こえなのも構わず、村の男たちが狼狽えた声を上げる。

「でも、鉄甲蟹には魔槍しか効かないぞ。とても、あんな数には!」

「やるしかないだろ! 神殿の中には仲間が立て籠もっているんだ!」

 いきり立って、議論する男たちの中から飛び出したのは、タジルである。


 やはり、一際直情的な性格らしい。

 その手には、長さ2メートルほどの棒が握られている。竹の様に7つから8つの節に分かれた金属製の棒だ。刃物の類は付いていない。

「おい、タジル!」

「ただの蟹なんざ、俺1人で全滅させてやるぜ!!」

 そう言って、棒を腰だめに構えるタジル。

 何をするのかと思って見ていると、タジルがキーワードらしき言葉を口にすると同時に、棒の根元に近い節の隙間から、黄色い光が漏れ出す。


「魔法か?」

『どうなっているのです? 私には何の変化も観測出来ませんが』

 ウズメさんに見えないということは、魔法の光と考えて間違いないのだろう。

「タジルの持つ棒の根元近くの節が光り出した。あ、1つ先の節に光が移った」

 光は0.5秒間隔ぐらいで1つずつ先の節に移動して行き、最終的に棒の先端、10センチほどの空中に複雑な記号を内包した三重の同心円を描き出した。


「魔法円という物か?」

『それは、私にも見えます。確かに、魔法円の様ですね。純粋な光で空間に描かれています』

 そして、魔法円の中心から1本の矢が出現。唸りを上げて、巨大蟹に向けて放たれる。


 ぎょばっ――――!!


 巨大蟹の甲羅の真ん中に、魔法の矢が半ばまで突き立った。更に矢全体から鋭い棘が四方八方に突き出す。

 蟹に突き刺さった内側でも、同様に棘が伸展したのだろう。巨大蟹はビクリと身を震わせて、その動きを止めた。

 おぉっ、魔法、スゴい!

『今の矢は、全体が鋼で作られていましたが、金属棒から射出されたのではなく、魔法円を通して何もない空間から出現しましたね』


 あの金属棒が、魔槍という訳か。

『おそらく、そうでしょう。威力の小さな魔法を機械的に増幅し、最終的に威力の大きな魔法として撃ち出す機器と推察されます。出来れば、サンプルを入手していただきたいですが』

 無茶なことを言うウズメさん。

 さすがにこの状況で、タジルから貴重な武器を奪う様な真似は出来ないし、したくない。

『今すぐとは言いませんが、機会があれば、ぜひ』

 了解しましたよ。盗賊あたりが持っててくれたら、罪悪感なしに奪い取れるんだけどねぇ。






「仕方ねぇな」

 ぼやきながら、リーダー格の男がタジルの隣に並んだ。その手にあるのは、やはり魔槍だ。タジル同様に腰だめに構えると、巨大蟹の背中に狙いを付ける。

 が、魔槍は2本しかないらしい。残りの男たちは、剣や普通の槍を手に、2人を守ろうとする様だ。

 

 リーダー格の魔槍から放たれた矢は、しかし巨大蟹の甲羅に弾かれた。

 鉄甲蟹と呼ばれるだけあって、巨大蟹の甲羅を構成しているのは金属的な硬い物質なのだろう。タジルの1射目は、運が良かっただけなのかも知れない。

 タジルとリーダー格の男は、続けて魔槍を発射し続けたが、やはりなかなか巨大蟹の甲羅を撃ち抜けないでいる。

 でも、それより気になるのは、魔槍の射撃間隔が非常に遅いことだ。根元の節の光が段々前方に移って行って、最終的に矢を射出するまでに5秒はかかるのである。見ていて、ひどくもどかしい。


 やがて、背後から攻撃を仕掛けられているのに気づいた蟹の一部が、転身して移動を始めた。もちろん、タジルたちに襲いかかる為だ。

 タジルたちは当然接近して来る個体に狙いを付けるのだが、身を低くしてジグザグに疾走する蟹には命中させるのが難しい上、理想的な角度で攻撃を当てることは、ほぼ無理だ。まるで、蟹の数を減らすことが出来ていない。


「お、おい、来たぞ! ちゃんと当てろ!!」

 言いながら、剣や槍を持った仲間たちが蟹の群れを押さえにかかるが、どう見ても無謀だ。

 剣や槍では鉄甲蟹の身体を傷つけるのは不可能に近いのに、逆に蟹のハサミは、男たちの手足を容易に切断出来てしまうのである。

 今しも、1人の男の片足が蟹のハサミに捕らえられた。慌ててタジルが至近距離から魔槍をぶっ放し、その蟹を倒した。が、すぐさま別の蟹がタジルに襲いかかる。タジルも魔槍で応戦しようとするが、発射までには、数秒のタイムラグが――――。


 ガゥン――――!!


 蟹たちの(うごめ)く音、剣や槍が蟹のハサミと打ち合う音、そして人間たちの叫ぶ声を消し去る様な轟音とともに、タジルの目の前の巨大蟹が吹っ飛んだ。

 2~3メートル先で地面に叩きつけられた蟹の甲羅には、拳がすっぽり入るほどの穴が開き、そこから薄い煙が一筋立ち上っている。それは、まるで鉄甲蟹の生命が抜けて行っているかの様で、事実、蟹は即死したらしく、ピクリとも動こうとしない。


 ガゥン――――!!

 ガゥン――――!!

 ガゥン――――!!


 そこから3回続けざまに轟音が響き渡るや、それと同じ数だけの巨大蟹が吹っ飛び、動きを止めた。

 むろん、轟音を発した源は、オレの左手の拳銃である。

 1発で灌木の幹をへし折れる威力なだけあって、鉄甲蟹の甲羅にも十分通用するらしい。

「タ、タケルさん、それって魔槍なのか?」

 目を丸くして、オレの持つ拳銃を見つめるタジル。

「ああ。最新式の魔槍だよ」


 オレはタジルたちの前に出ると、拳銃を撃ちまくった。

 魔槍での攻撃と違い、拳銃で撃たれた鉄甲蟹は甲羅に大穴を穿たれ、確実に動きを止める。拳銃の発射音に耳を塞ぎながら、タジルたちが目を丸くしているのが分かって、とても心地良い。

 12発の弾丸を撃ち尽くすと、空になったマガジンを抜き取り、ウズメさんに転送。新たに12発の弾丸が装填済みの分を受け取り、拳銃のグリップに突っ込む。

 弾切れのわずかな間に蟹たちが迫って来ているので、モタモタしてはいられないのだ。


 目前まで接近して来ていた蟹のハサミをかわし、オレはその蟹の背に飛び乗る。

 どうやら、神殿に押し寄せていた蟹の大半が、方向転換して、こちらに向かって来ているらしい。ド・ローン之介からの情報でも分かっていた事だが、巨大蟹の背から、改めてそれが確認出来た。

「これは、やり甲斐があるわ!」

 オレは踏み台にしている蟹に銃弾を叩き込むと、うじゃうじゃと蠢く巨大蟹の大群の乱獲に入る。


 



 忍術スキルにて巨大蟹たちの甲羅の上を飛び回りながら、ひたすら拳銃を乱射。弾が切れたら、即座にマガジンを交換。再び撃ちまくる。

 拳銃が熱くなってきたので、かなり心配。

 近づかれ過ぎた時には剣を使ってみたが、手足の関節ならば、剣術スキルⅡの腕前でも断ち切る事に成功した。

 しかし、正直もっと大きな銃器が欲しい。

 ウズメさん、すぐに用意出来る大型銃器はないかな?

『ありますので、鉄甲蟹を何体か転送していただけますか?』

 了解。ポイントが足りないのね。


 拳銃を撃ちながら、既に倒した鉄甲蟹の亡骸に身体を接触させ、ウズメさんに送りつけていく。

『そんなところで結構です。大型銃器を転送します』

 適当に5~6体の蟹を送りつけると、やっとポイントが足りたらしい。

 剣を鞘に戻し、拳銃をホルスターに納めたオレの眼前に、長さ1メートル半を超える銃が実体化する。


 それは、大口径の対物ライフルであった。

 素人目にも、とんでもなく強力な威力を持っている事が分かる威容だ。

 オレの浅い知識が正しければ、遠距離からの狙撃に向いた銃器だった筈である。

 出来れば、もっと銃身が短くて取り回しのし易い軽機関銃とかにして欲しかったよ、ウズメさん!




  ○アメノ・タケル


◇所持ポイント:2294


◇スキル:【剣術】Ⅱ 【格闘術】Ⅰ 【射撃】Ⅰ 【忍術】Ⅰ 【サバイバル】Ⅰ 【再生】Ⅰ 【マップ】Ⅰ 【レーダー】Ⅰ 【ガイリーン地方公用語】Ⅰ


◇アイテム:【偵察用ドローン】×1 【ハンドガン】×1 【対物ライフル】×1(new)


 

 

 

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