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日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!

あの日二人の間を吹き抜けた風は、また何処かへと流れてく

優愛と別れ、俺はみんなのもとへと戻る。


飛行機を降りて、地面が濡れていることに気づいて、こっちは雨がふったのか…と思った。


「アイツら濡れてないかな」


そんなことを呟いて、例によって公衆電話を探す。そして自分のスマホに電話する。それから、皆のいる場所を聞いてタクシーで向かう。


タクシーでそこへ行く途中、薄くなって消えかけの虹を見て、少しだけ、ラッキーだなって、そう思った。


それから、優愛に対してした事を思い出して、一人で恥ずかしくなってタクシー内でもぞもぞなんかしたりして…


そうそう、アイツ等はコンビニに長居も出来ないと結局リサがうちのじいちゃんに電話して、近くの知人にバイクの修理をたのみそこに今いるらしい。


俺が到着すると



「おっそい!」


「おせえよ!」


と、女性陣に言われ唯一孝輔だけ


「おかえり」


と言ってくれた。


「うるせえよ、仕方ないだろ!てか、こっち雨ふった?」


「察しの通りだ。地面を見てみてくれ」


「そうなんだよ! マジ最悪だったから!」


「翔馬、"優愛"は大丈夫なの?」



ん?……すげえナチュラルにリサが優愛の名前を言う。今まで散々"韮崎"と呼んでいたのに、


「リサ、おまえ優愛って…」


「あー…っ! 雨上がりって良いわよね!」


話変えんの下手くそかよっ! でも、ここに優愛がいたらたいそう喜んだ事だろう。


「まあ、そうだなぁ…そういや俺さっき虹見てさ! 消えかけだったんだけど」



「あ! それなら私達も見たわ! ねぇ、チビロリ!」



リサが相変わらず無神経な事を言う。


「うるせえよ牛! 人の事チビロリとか言うな!」


それに世良が反発する。


「はっはっは! じゃあ俺はドS先輩と呼ぼう!」


そんで孝輔は意味がわからないことを言い出して……


「なんなんだよ孝輔まで! なんだドS先輩って! てかタメだろあんたっ!! ドS先輩は翔馬だろっ!」


「いや、なんでだ。急にスルーパス出すなよ」


結局俺にかえってくる。


ああ、帰ってきたなと思った。――





――嫌だった。


毎日通う学校も、縦社会で鬱陶しい部活も。

好きだ嫌いだで渦巻く人間関係も。


人は大きくなるにつれて世の中を知り、子供の頃に

大事にしていたものを見失ったり、忘れてしまったり

得るものが減ってるように感じたりして…


そして『後悔』ってやつを沢山積み上げて行く。


――【あの時こうしていれば。】


そう言わないために、俺は旅に出たのだ。


しかし、蓋を開けてみればどうだ? 何処にいても、何をしていても、『後悔』ってヤツはついてきて


毎日、『心配』だとか『不安』だとかそう言った物がちゃんとあって……



だけど、気づいたら毎日が『楽しくて』、『嬉しくて』…



きっと、みんな同じで、苦しかったり、楽しかったりを繰り返して成長をしているのだ。



あまり、喋らないあの人も。毎日見かけるその人も。



きっと知らないだけで、沢山の苦労や沢山の幸せを持ち歩いている。



人ってヤツは、きっとそうやって生きて行く。



そしていつか、本当に自分がいなくなるその時に、全部ひっくるめて







『ああ、楽しかった!!』と、そう思えたならどれだけ幸せなことだろう。




今が苦しく、どんなに辛くとも、世界は君の目に写る全てだけなんかじゃ、決してない。



一歩、他の世界を覗いてみれば、また違う何かに、人に出会って……




まだ誰も知らない、君にしか見ることのできない






花咲く未来がきっと待っている。―――






「なんてな…」



「は?なにが?」



リサのバイク事件から数日、バイクの後ろにのる世良に言われ我にかえる。


「なんでもねぇよ」


「そうか」



パッパー! 後ろの車がクラクションをならす。



「「うるせえよ!!」」



俺と世良は同時に後ろの車に向かって言う。



何をかくそう、後ろの車はリサと孝輔である。バイクの代車がないと言うことで車を貸してもらったのだ。てか、事あるごとにニヤニヤしながらクラクション鳴らすリサを早くどうにかしないと…



そうそう、あの日、戻ると未読のメールがあって差出人は優愛だった。いろいろ片付きそうだと言う内容のメールと



『……あの時、ちゃんと言えなかったね。私も、好きです。』



と、まあノロケなんだけど、そう書いてあった。



――旅はまだまだ続いていく。きっとこの先もいろんな人に出会うだろう。そしていろんな物を見るだろう。


赤い信号が、青にかわる。








「さぁ、行こうか」









【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!~終~】














◆おまけ◆



↓NEXT【続・泣かない少年】↓





――翔馬との旅から、約8年後。――



「父さん、これここでいいの?」



「ん?おう、新作の納豆パンな、そこでいいぞ」



「すごい匂いなんだけど……てか、今日店あけるんだ?」



「ん?ああ、午後からな」



「あれだったら無理しなくて良いのに」



「何いってんだ、息子の中学卒業だぞ?仕事は後だ後…っと、和人、時間」



「え?…うわっ!やっべ!」



店の外に慌てて出る和人、それを追うように義和も店の外に出る。そして



「和人!! 卒業式くらい、泣いてもいいんだからな!」



和人は振り返り、あの時と変わらないニッと笑った笑顔で





「"泣くもんかっ!! 男の子だぞっ!!"」





↓NEXT【続・イチョウの下で会いましょう。】





――翔馬との旅から約3年後。――



コンコン…病室をノックされ、声をかけられる。



「多鶴子さん、入りますねー」



「どうぞー」



カラカラとドアが開き、看護師さんが中へ入ってくる…と、



「多鶴子ばあちゃん!!」「多鶴子おばあちゃん!!」



一緒に小児科に入院しているのであろう、子供が二人入ってくる。



「ふふふ、春くん、(ゆき)ちゃん、いらっしゃい」


体制を治そうと、ベッドの上で動くと、多鶴子はあやまって読んでいた本を床に落としてしまった。



「あら!」


「わっ!?大丈夫ですか!」


看護師が慌ててそれを拾うと、はらり、と一枚の栞がおちる。子供たちがそれを拾う。



「なにこれー」


「なんだ草じゃんっ!」


看護師から本を受けとると、多鶴子はありがとうと言って


「ふふふ、それはね、押し花って言うのよ」


「おしばなー?」


「草なのにへんなのー」


「ふふ、それはね、昔私の親友が見つけてくれた草なの」


「へぇ…」


すると多鶴子は「そうだ!」と、ポンと手を叩いて看護師に庭に出る許可を得る。そして、仲良しの子供二人に



「ここのお庭にもあるかもしれないから、探しにいきましょうか?その草…目には見えないけれど、幸せの花を咲かせるクローバーを見つけに!」


みんなが出た後の病室には、イギリスからの一枚の手紙。



『秋に、三人で多鶴子に会いに行くわっ!』



庭に出た多鶴子は空を見上げ




「長生き、しなくっちゃね…!」






↓NEXT【続・とっておきキャンバス】




――翔馬が来てから約5年後。――


「くるみさん、こんな感じでいいかな?」


貴幸は、先ほど書き上げた宮崎家のみんなとの家族絵を壁にかける。


「うん、良いと思う。」


くるみはそれのバランス調整のために少し距離をとり、貴幸に指示を出していた。



大きくなったお腹をさすりながら。



貴幸は飾り終えると、少し後ろに下がりくるみの横に並ぶ。



「うん、悪くないね」



その絵には、宮崎家の面々と、貴幸、くるみの間に笑顔の女の子が描かれていた。そして



「あ! たぁくん、今お腹蹴ったよ」


「お!本当かい?」



すると、部屋の奥から元気な声。



「パパー!ママー! おじいちゃんがお昼御飯出来たって!!」



それを聞いた二人は、顔を見合わせ



「「今、行くよー!」」




↓NEXT【続・弱虫の反撃】



――翔馬が来てから6年後。――



「羽太、この間の子から手紙来てたぞ」


「え?ホントですか?」



羽太は手紙を受けとる。



『羽太さんへ、この間の子と仲直りできました! アドバイスありがとうございました!』



「へへっ…」



「おい、何ニヤニヤしてんだおまえ…」


「え…、いや。ちょっと嬉しくて」


すると、電話が鳴る――



「はい、もしもし?子供悩み相談所、心理カウンセラーの宮崎です。」






↓NEXT【続・日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】



――日本一周から10年後。――



「なあ優愛、次の旅行なんだけどさ」



「うんうん!」



「鹿児島とかどうだ?」



「世良ちゃんとこ?」



「そそ、孝輔がさ…仕事でちょうどあっちにいるみたいなんだよな」



「そうなんだ」



「それにアイツ"優馬"に会いたいってうるさいんだよ」



「ふふふ! 孝輔くんらしいね」



「夏にはリサが1回帰ってくるしさ、墓参り」



「そっか!もう、そんな時期なんだね」



「お母さん…おしっこ…」



ふすまを明け、眠そうな目を擦りながら俺の息子が出てくる。そんな息子を見ながら俺は、あの旅でいろんな物を得たんだなあ…と久しぶりに思い出して、そう思った。




「優馬、しっこお父さんのとこでしよっか」



「いや、なんでだ。トイレ行けっ」






~お・し・ま・い~








【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】






























ご愛読、まことにありがとうございました。


ここまでこれたのも、皆様のお陰でございます。


この物語は、もともとは中学生の頃に妄想した旅をする少年の話が元となっておりました。処女作で、思い入れもいっぱいあり、誤字だのもあるし、シナリオがうまくまとめられてなかったりと、読者様も思うことが多々あったと思います。本当にここまでありがとうございました。


このお話を通して、私が伝えたかったことは、兎に角『今を諦めず進んでほしい』と言うことでした。


もしも、読み終えて『明日もちょっとだけがんばってみようかな』とか、『何か始めてみようかな』とか、そう言ったポジティブな事を思っていただけたなら、私は心底、嬉しいと思います。


まあ、人生いろいろあります。嫌なこととか、理不尽な事とか、そう言った今に私自身、過去に負けてしまいそうになった事がありました。


それでも、諦めず生きてみたら案外楽しい事ってすぐにきたりするもんだなって、そう思えました。


今がどんなに嫌でもいつかきっと、笑える時は来ます。これは私が約束します。


この物語は終わりますが、またどこかで新作でも見かけたらひっそりと寝る前にでも覗いていただければと思います。



そんじゃ、





あ、そうそう。翔馬が1枚残してる多鶴子さんからの手紙の内容は…――


優愛へのプロポーズの前に開いてますよ、まあこれはまた別の話か。



みんなまたね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん

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