大人の対応
解決はなくとも、向かう先
あれから、優愛と話をして、結局羽太の部屋に泊めてもらう形で一夜を過ごした。
俺は優愛をなだめ相談にのったのだが、やはりここは親にはちゃんと伝えるべきだと言う決断にいたった。状況を考える限り、俺達だけでは、解決は難しいと思うからだ。
ただ、『まかせろ』と言った手前、話すタイミングや伝え方くらいは考えようと思う。なにせ、かなりデリケートな問題だ。いきなり、あなたの子供さんいじめられてますよ、とか言えるはずもない。
その事について俺は自分に出来ることを考え、とりあえず調べることにした。俺は朝御飯を御馳走になると、優愛と羽太にその主を伝え、家を出る。その際、あらかじめネカフェの場所を聞いておいて、そこで調べものをすることにする。
優愛の家でも調べる環境は整っているのだが、やはりまだ人目につくわけにもいかない。それに、麻衣子さんはどうやら専業主婦らしく、家を空けることが少ないらしい。その結果がネカフェと言うわけだ。
そして、目的のネカフェについて早速調べものを開始する。
"いじめ"で検索をしても解決にはならないので、どういじめを伝えるべきか、どういじめられてる方と関わるべきかを入念に調べる。
また、いじめている側との接触の仕方から話し合いまでのもっていき方。
これがいかんせん難しい…調べてでるのは大概が同"学校内"のものや、"クラス内"のものばかりだ。
外部からのものと言うのが以外と少ない…
「さて…どうしたもんか…」
おれは呟いて、コーヒーを一口飲む。そして、いろんなサイトをまわっているうちに、共通している事を見つける。
それは、まず始めに被害者の安心のできる居場所を確保することである。これは現在、羽太にとっても、優愛にとっても"家"がそうである。
次に、話をする。"それ"について話ができる相手がいるのといないのとでは、天と地ほど差があるらしい。今回は俺がその立場だろうか?、このあとの事を言うと、優愛の親もそうだろう。
また、そう言った話を受け付ける電話窓口も現在では多くもうけてある様子だ。
そう考えると、少しは生きやすくなったのかもしれない。
そして、親は子供の言うことを肯定し、非難しない事である。
『おまえにも原因があるんじゃないのか?』
『相手とちゃんと話しはしたのか』
『やられたら、やりかえせ』
間違ってもこんな事を言ってはいけない…理由は簡単だ。前にも言ったが、その時、その瞬間は、間違いなくその人物が
"世界一不幸"なのである。
ある程度調べ終わり、1度、優愛の家へと戻る。すると、優愛がドアを開けてくれる。
「どうだった?…」
「うん、まあ、やっぱ昨日話したように大人の力を借りた方がいいな。今後の対応ってのが大きく未来を左右するし、たぶん…一番は優愛のお父さんや麻衣子さんの動き方になってくると思う。」
「やっぱり、迷惑かけちゃうね…お父さんにも…麻衣子さんにも…」
「これは…俺が言っていいのか微妙なんだけどさ、いいんじゃないか?ちょっとくらい甘えても。親にとって子はいつまでも子だって言うしな…うちのじいちゃんがよくいってんだよ、仏壇の前で、俺に話をするときにさ」
「…そっか、翔馬…」
「あー…、今は俺の事はいいから。とりあえず優愛のお父さん帰ってきたら話をしようぜ」
「…うん」
それから、適当に時間を潰す。夕方になる頃、優愛のお父さんが帰ってきた。さあ、これからだ。――
帰宅したお父さんに俺は話がある主を伝える。四人がけのテーブルに、優愛と羽太、そしてお父さんと麻衣子さんが座る。俺は少し積めてもらい優愛サイドに座った。
ただならぬ雰囲気にお父さんと麻衣子さんは何を言われるのかと身構えている。
「ええと…どこから話したらいいのか…」
俺が話を切り出すが、さっそく詰まる。正直な情けない…が、すぐに優愛が話を始めた。
「私が…学校を休んでる理由…知ってるよね?」
「…?ああ、知ってるが…それがどうした?」
「その件でちょっと…いろいろあって…」
「…話が見えんな、どう言うことだ?」
少しだけ威圧する。…これじゃあ切り出しにくさが増すだけだ…どうするか…。と、俺の悩みを飛ばすように羽太がすぐにフォローに入る。
「えっと…俺が、この間その原因の人達見つけてさ、なんか…姉ちゃんの事を、その…よくは言ってなかったから、腹立って…そいつらに文句いったんだよね…」
「……それで?」
「それで…その…私の…せいで…羽太くんが…」
優愛はもう涙目だ。
優愛のお父さんは眉間にシワをよせ、
「羽太がどうした…?」
「私のせいで…その子達の友達に…その…」
「……。」
「叩かれたり…してて…」
「叩かれたり…?」
ここでお父さんの表情は変わる。
「詳しく話なさい」
それから、優愛は現在に至るまでの話をはじめた。途中、何度も流れそうな涙を止め、たまにそれを拭ったりしながら…隣の羽太も涙目で、ずっと下を向いたまま…
こんな話はきっと、したくなかったはずだ。
されたくなかったはずだ。
それでも、一生懸命に話をした。
自分の家族を信用して、少しづつ仲良くなるのだと決意して
一生懸命、話をしたのだ。
すべて聞き終わるまで、優愛のお父さんも、麻衣子さんも何一つ意見は言わなかった。そして、けわしかった顔をゆっくりと、ほどき…お父さんと麻衣子さんは顔を見合わせる。そして
「よく、話してくれたな、辛かっただろう」
「気づいてあげられなくて、ごめんね」
「「あとは、まかせなさい」」
俺なんかの無責任な「まかせろ」なんかとは、比べ物にならないほどの言葉。
二人のその言葉を皮切りに、せきをきったように子供の二人は涙を流す。
きっと、助けを求めると言うのは…情けないことでも、恥ずかしいことなんかでもないのだ。
逃げ出すことは、必ずしもカッコ悪いことではない。
きっと、その向こう側には…まだ見たことのない景色が広がっていて…また、安寧を手にすることができるはずだ。
そんなことを考えていると、話は落ち着いたのか優愛のお父さんがおもむろに立ち上がり、俺を呼び出し二人で窓から庭にでる。
そして、寒空を見上げ
「翔馬くん、君には世話をかけたようだね」
「え…いや、俺なんて…なにもできてないっすよ」
「いや、君が二人の側にいてくれたのは凄く大きな事だと思う。…正直、いなかった事は想像するだけでも、あまり良くない方向に傾いていた気がするんだ」
返事に困っていると、優愛のお父さんは話を続ける。
「いやあ…本当、正直ね、どうしたもんかと、思っているんだ。だが、対応の仕方がわからないわけじゃないんだ。…親ってのは、子供が思っている以上にいろんな事を想定して調べたりしているものでさ…ただ、どうしてうちの子が…ってね。なぜこんなに苦しまなければならないんだって…はがゆいのも事実なんだよ。」
「そうですよね、やっぱり」
「…うん。でも、大丈夫だ。あの子達がちゃんと話をしてくれたからね。なんか、愚痴みたいになってわるいな…」
「いや、大丈夫ですよ」
「…翔馬くん、親の資格ってどこでとれるか知ってるかい?」
「いや、わかんないですね…」
「子が生まれた時から、もう渡されてるんだよ。どんな親であろうとね。…」
そして、優愛のお父さんは軽く延びをすると、こう聞いてくる。
「そうだ、そう言えば…君は優愛の彼氏なのか?」
「おお…!?また、唐突にきましたね…」
「違うのか…?」
「えっと…」
「翔馬くん、俺はね、優愛は我が娘ながらなかなか容姿にはめぐまれたなと思ってるよ。それに、泣き虫だが…優しい子だ。」
「そうですね」
「翔馬くん」
「はい?」
「まあ、もしも君が優愛の彼氏になっているなら…どうか、お願いだ…喧嘩するなとか、野暮なことは言わない…ただ、どうか、あまり泣かないように接してやってくれ。」
――そんな風にして、その日の夜は終わった。
翌日から優愛のお父さんは動き、近いうちに加害者側の人達と話し合いをするらしい。
物事が完全に解決したわけではないが、一段落と言ったところで、俺も長居はできないと思い、帰宅…って言うか、この場合なんて言うんだ…?
まあ、あいつらのところへ帰ろうと思う。
まあどうせ、バイクでまた来ることになるだろうしな。
羽太の部屋で荷物をまとめていると、優愛がやって来た。
「戻っちゃうの?」
「ん?まあ…さすがに、そんな長くはいられないだろ、麻衣子さん達にも悪いしな。とりあえず、一段落しそうだしな。」
「そっか…」
「おう」
「翔馬…ありがとね…」
「なんもできなかったけどな」
俺は軽く頭をかいて笑う。
「ううん、そんなことないよ。来てくれて…いてくれてよかった…」
「そっか…?」
「うん」
いろいろと名残惜しいが、俺はまとめた荷物をもち、立ち上がると優愛に笑って「またな」と言って横を通り、廊下に出ようとした、その時――
――服をひかれ、振り替える。すると、優愛が…
【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】
とても反省点の多い章となりました…。
まあ言いたいことは沢山あるけれど、とりあえず今回の事で言いたいのは『今を諦めないでほしい』と言うことですかね、いろんな思いや感情を飛び越えたその先には、何かしらのラッキーが待ってると思う。
章またいで、翔馬くんは戻ります。
さあ、初めからついてきてくださった方、途中からたまに覗いてくださっている方。
いよいよ、次章、終章となります。
もうシリアスないから安心していいぜ❗(´・ω・`)✨きゅぴーん
もうしばらくお付き合いいただければと思います。
次回、最終章
『続道人~タビビト~①』
またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん




