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弱虫の反撃⑱

素直な気持ちは突然に

それから俺は、羽太くんと優愛の家へと向かう。が、ついてそうそう嫌な顔をされても嫌なので、ちょっとずるいのだが、保険をかけることにする。


「なあ、羽太くん」


「羽太でいいですよ」


「じゃあ羽太、お願いがあるんだけど…」


「はい?なんですか?」


「いや、ほら、俺さ、優愛に来ないでほしいって言われてしまっててさ…」


「あぁ…なるほど…そうですか」


そう言うと羽太は少し考えて


「いい方法がありますよ、俺に任せてください」


「!?マジか!」


何かいい案があるらしい。これは余計な事はしなくて良さそうだ。俺は羽太を信じることにして、羽太の後ろをついていく。そして、坂の多い住宅地のいっかくに、優愛の家はあった。


俺はその家を眺めながら、思った。


「なんか、めっちゃおしゃれなパン屋さんみたいな家だな。」


欧風な外見と、煉瓦(れんが)であしらわれたデザイン性の高い壁。オレンジの光が玄関の中に見え、暖かみを感じる。


「はは、なんすかそれ、ウケる。」


「いやまじで、なんかすげぇおしゃれな家だなって思ってさ」


「ははは、例えが独特すぎますよ…はー、さ、行きましょうか?」


「ん?お、おお。まかせろ…いい考えがあるんだよな?」


「はい」


「よし、行こうぜ」


ガチャンと羽太はドアを開ける。と、「ただいまー」といって家にはいる。中から噂の"麻衣子さん"だろうか?優しそうな女の人が「おかえり」と言いながらやって来て、その後ろを身長の高い、しっかりしてそうな印章を受ける男の人が歩いてきて「羽太、おかえり」と言う。


――俺の父さんや母さんが生きていたら、俺もこんな風な生活があったのだろうか?


暖かい灯りのある家に帰り、母の作ったご飯をたべ、今日の出来事を話したり、お風呂上がりに父さんと野球やサッカーをみたり…。


そんなことを考えていると、奥の扉が開き…パジャマ姿でタオルを頭にかけた人が出てくる。――


その人物は、こちらに気づき、この人もまた、羽太に向けて「おかえり、羽太くん」と言いながら近づいてきた。



――優愛だ。



そして、優愛は未だ玄関に一歩踏み込めず、麻衣子さんと、恐らく優愛の父さんに当たる人物に頭を下げて挨拶をする俺に気づく。




「え…翔…馬…?」




俺は顔を上げて、羽太に助けを求める。羽太はチラリとこちらを見ると



「そこであったんだけど、」



と前おきし、次の瞬間、俺を指差してこう言う。





「たぶん姉ちゃんの"彼氏"。そこで会ったから入れてみた」




うおおおおおおおおい!?いい考えってそれ?! 羽太くん、それただの正面突破なんですけどっ!? 『いい考えがあります』っじゃねえよ!! おまえあの時絶対考えるのめんどくさくて『まあなんとかなるっしょ』くらいの感覚で言っただろ! お兄さんこの後どうしたらいいのかわかんないよっ!! どうすんだこれ!! 余計な事考えたバチが当たった感じなんですけどっ! しかも"たぶん"って、確信ないのに家に知らない人呼んじゃいけません! 彼氏でもねえし、自分で言ってて悲しくなってきたわ…!すると、




「はっ!?はあああああああっ!?」


と、優愛の父親がどっからでてんだその声、と言うような声を上げて、狼狽(うろた)える。


「えええええええ!?…えええええええ!?」


と優愛本人も驚いている。ほら見ろ言わんこっちゃない。やはり保険をかけるとか、あんま自分主義な事ってしすぎちゃダメだわ。そういや、前に世良が『悪いことしたら自分に返ってくる』っていってたっけな…


「…正直に生きようと思う」


俺が呟くと、羽太と麻衣子さんにいっせいにツッこまれる。


「「な、何が!?」」


そんな一悶着(ひともんちゃく)?があり、なんやかんやで羽太の誘導により、家に招き入れてもらうことに成功する。そしてリビングの四人がけテーブル、俺は何故か優愛の横に座り、前の方に麻衣子さん、と何故か腕組みをして、俺をめっちゃ見てくる優愛のお父さんが座り、何か悪いことをしてこれから叱られますよ、みたいな空気が流れている。完全に俗に言う、"説教タイム"とか言うヤツである。しかも、隣の優愛さんが俺にボソッと「なんで来たの…?」とか言ってくる始末。いや、まあ確かにそうなんですけどね、なんで来たんですかね…何やってんでしょうね俺は…正直独りよがりでやって来ました…すんません…と、そんなことを考えていると、優愛の父さんが口を開く。


「…君は、優愛の彼氏なのか?」


「いえ…その…友人と言いますか…」


「ん?彼氏ではない…?」


「え?」とちょっと驚いた顔をする優愛を横目に、俺は話を続ける。ってかなんでおまえが驚いた顔してんだよ。


「はい。俺は…その、最近娘さん…優愛さんと知り合いまして…」


俺がそう言いながら今回の件についての言い訳を模索していると、優愛の父さんは、


「…もしかして、君が優愛と旅を一緒にしていたって言う…?」


「あ、はい。遅くなってすみません九重(ここのえ) 翔馬(しょうま)と申します。道中は本当に優愛さんにはお世話になりました。ありがとうございます」


と言ってチラリと優愛を見る。


~♪


なんか満更でもない、みたいな顔をしている。さっきまで少し不機嫌そうだったのに…。


「その旅をしていた君がここに来たのは?優愛に会いに来たのかい?」


「ええと…」


どうするか…いきなり、あなたの娘さんと息子さんちょっと大変なことになってますよ。とか言うわけにはいかないし…かといって、優愛に会いに来たと言っても…いや、でも間違いでもないのか…。事実俺は優愛を救いたい一心でやって来たのだから。俺は包み隠さず、素直な気持ちでここに来た理由を伝えることにする。





「その、優愛さんとの旅を得て、少し時間が空きましたが、片時も優愛さんの事を考えない日はなかったかもしれません…ちょこちょこ連絡はしていたのですが、いろいろ考えて、優愛さんに直接会いたくなって、側にいたくて、俺はやってきました。」




嘘偽りない、俺の素直な気持ちだ。さすがに"いじめ"の件はまだ早いだろうし、いろいろ考えたのも事実だ。…と、視線を感じ優愛の方に目を向けると、こちらを見て顔を紅くし、口をパクパクとしながら俺を見ている。…なんだろう?と、お父さんの方に向き直る。何故か目を丸くしている。ん?あれ?と、麻衣子さんが口元をおさえながら


「あらら」


と、一言。


なんだろうこの空気…と、ここで俺はようやく自分の言っていることを、自覚する。あれ?これ若干、告白と言いますか…好きな子に会いたくて追いかけてきちゃいました。みたいになってね?いやなってるねコレ。



【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】







































またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん

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