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弱虫の反撃⑰

暗闇に光指す風穴を――

――「…姉が"好き"なんですか?」


「え"…」


いや、ちょっ!ちょっとまって! 落ち着け、唐突な質問に俺はテンパる。どうなんだ?俺は…



"優愛が好きなのか?"



自問自答。一瞬で頭のなかは優愛の事で染まる。だが、それが好きかどうかなんて言うことがわからない。ただ、なんとなくあいつが泣かされたと聞けば腹が立つし、なんとかしてやりたいと思う。…しかし、それが"恋愛感情"なのか、はたまたただの"友情"なのかハッキリとしない…俺が首をかしげていると、羽太くんは、変なことを聞いたとでも思ったのか


「…なんか、すみません」


と謝った。


「え?いやいや、なんか俺の方こそごめんな、ちょっと面食らってしまって…考えこんでしまってた」


人はいつ、"その感情"が恋だと気づくのだろうか?今はまだ、ハッキリとはしないが、極端な話、"好き"か"嫌い"かで言えば間違いなく"好き"だ。でも今は、そんな事よりもこの弟くんと優愛の置かれた現状を理解することが先だろう。


「その、でしゃばって悪いんだけど…あ…」


とここまで言って、スマホがないのを思い出す。羽太くんは首をかしげて


「どうしたんですか?」


「あぁ…と、いや…」


なんか、ダメだ。このままではそれこそただの不審者じゃないか。1度、嫌われてもやると決めたのだ。逃げるな…!俺!


「ごめん、えぇ…と、さっき少し話しただろ?助けになりたいって。」


「はい…」


羽太くんの声は少しだけボリュームが落ちる。あまり触れられたくない話題だろうし、なんならでしゃばるなとさえ言われてしまうかもしれない。でも、間違いなく俺が思うのは…



"このまま"は、絶対に嫌なはずなのだ。



つまり、どんな形であれ、まずはこの"出来上がってしまっているその人の世界"をぶち壊す事が大切なのだ。それと同時に、このての問題に顔を突っ込むということは、最後までかかわっていく覚悟と、勇気が必要なんだと、今更ながら再認識する。だから、俺はそのまま言葉の歩みを止めずに一言一言、ちゃんと一歩として相手に伝える。


「今、君が置かれている状況が知りたい。その…"いじめ"についてなんだけど…」


俺がそう言うと、少し間があって


「やっぱり…俺は…"いじめ"られてるんですかね…?」


自覚が無かったのか、そんなことを言って、こう続ける


「翔馬さんがさっき俺に言おうとしたのって…


――スマホを出して写真を見せる。


これ、ですよね?」



例の写真である。


「うん、よくわかったね」


「あ、いや、さっき彼女が…さっきの子がそれで連絡してきてて、その話をするつもりだったんですよ。それに、翔馬さんなんか探してるみたいだったし、なんとなくっすけど…」


羽太くんがそう言うと、頼んだコーヒーが届き、それを一口飲むと続けた。


「あー…そうか、やっぱりそう見えるんですよね?端から見ると…正直、いじめとかって自覚なくて…変なヤツに絡まれたなって…初めは…ですけどね」


羽太くんは写真をもう一度見て、ため息をはく


「はぁ~…なんで…。それから、何かあると、呼び出されるようになって…それで、うちの親とか姉ちゃんとかの番号も盗られて、どうしていいのか…わかんなくて…っく、つか、なんで俺、こんな…はは、翔馬さんに話てんだろ」


少し涙目の羽太くんはそう言った。だから俺は


「今は、言いたいこと全部吐き出してくれ、俺もそうして欲しいし」


「ははは、翔馬さんよく、お人好しだとかいわれませんか?」


鼻声になった羽太くんが言う。


「どうだろう?でもよく、くさいこと言うってのは言われるな…」


「くさいこと?」


「ああ、あんま俺自身、わかってないけどそうらしい…」


「へぇ…」


あーこれ絶対わかってないわ。でもまあ、話の休憩にはちょうどいいかも知れない。それから、落ち着いた感じの羽太くんは話の続きを話始めた。


「えっと…それから、呼ばれて叩かれたり殴られたりするようになりました。抵抗すると、姉や家族に何かあるかもしれないと思って…やり返すことすら、できませんでした…っ!」


悔しそうな顔をして、続ける。


「それで、そんな日々が続いていて…ある日、こんなことを言われました…。





『はは、ウケる。何もできないで、おまえさ…"何の為に生まれてきたんだよ"』




って、それが一番こたえました…本当に自分は無力で何もできないヤツなんだって、その時いろんな事を考えて…そう思ってしまったんです。そして、そう思った自分にも腹が立って…頭も心もぐちゃぐちゃで、上手く言葉にできないんですけど…。しかも、その次に呼び出された時なんて、姉がついてきていて…すげぇビックリしました…。写真の日なんですけど、姉は俺をかばってくれたのに、俺は何もできなくて…たまたま姉に電話かかってきて、上手いこといきましたけど、それがなかったらと考えると、ゾッとするし、"何の為に生まれた"って言葉が、何度も頭を殴るんです。」



羽太くんは、そこまで話してくれると、うつむいて


「翔馬さん、"何の為に、生まれてきた"って言われたら、答えられますか…?」


俺は即答する。


「ああ、俺はこういうよ、"世界に選ばれたから生まれてきたんだよ"って。別におまえにどうこう言われる筋合いなんかないってさ、だってそうだろ?好きで生まれたんじゃないとか、その通りだし、何の為に、ってそんなのおまえに聞かれて決めることじゃないし、それは俺が納得した時初めて、"このために生きたんだ"って思えるはずなんだよ。だから、神様でもそう言ったヤツのためなんかでもなくて、世界が俺が必要だと判断したんだって、俺はそう思うよ。まあ…持論なんだけどさ。でも、そう思えば漠然とはしているけど、"世界に求められてる"って理由もできるじゃん?いいんだよ、理由なんて。そこに、俺ってヤツと、羽太ってヤツがいて、会話をした。それ以上の理屈なんているか?ましてや、そんなヤツに言われて悩むような事でもないよ、悩むのが勿体ねぇ」



「…なんていうか、すごいですね…そんな事、俺は考えた事もないって言うか…ははは、"くさいこと"ってのがなんとなく、分かった気がしました。」


「いやまあ、言ってることは自意識過剰なんだけどな…ははは」


「はは、でも素直にすげえなって思います。」


そう言うと、羽太くんはコーヒーをグッと飲み干した。そして、


「姉も、今は他人事じゃありません…案内しますので、行きましょう。(うち)へ」



【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】








優愛と再会…次回になりました。


嘘ついたごめんよ(´・ω・`)


またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん

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