弱虫の反撃⑮
とうとう、北の大地に立った翔馬。彼を待ち受けていたのは…
優愛との電話を終えた俺は、正直バリバリ凹んでいた…。いや、嘘。凹んでない。断じて! 会えないと言った優愛の理由はこうだ。
1、あんなに頑張ると言ったのに何も出来ていない。
2、巻き込みたくない
3、今頼ったら、また頼ってしまいそう。
うん、なるほどな、言いたいことはわかる。だが、どれも仕方のない事ではないだろうか?何処かの教師も言っていた。
『人』と言う字は人と人とが支え合ってうんぬんと。つまり人は一人では生きていけないのである。当たり前の事だが、気持ち的にいっぱいいっぱいになると、忘れがちになってしまう事でもあると、俺は思う。つまるところ、何が言いたいかと言うと、頼れるところは頼らなければ、いつか自分がつぶれてしまうのだ。
だから俺は、優愛にそれを伝えようとしたが、なかなか説得できないまま電話が終わってしまった…。
「ったく…、あの意地っ張りめ…何が"ごめんね"だ…」
でもたぶん、今はどんな台詞も役にはたたない。あいつの話を聞く限りでは、優愛は自分でなんとかしなくちゃならないと"思い込んでいる"伏がある。
「さて、これからどうするか…」
考えてみる…が、やはり俺はあいつを助けたい。余計なお世話でも、ありがた迷惑でも、そうしたい。今、俺にできること…と、考え抜いた結果――
――俺は室蘭市にやってきていた。
【北海道】は、日本の北部に位置する島である。また、同島および付随する島を管轄する地方公共団体(道)である。島としての北海道は、日本列島を構成する主要4島の一つである。地方公共団体としての北海道は、47都道府県中、唯一の「道」で、道庁所在地は札幌市である。都道府県魅力度ランキングでは2016年度も1位となり、これで8年連続1位となった。
【室蘭市】は、北海道にある市。 胆振総合振興局所在地。計量特定市。市名はアイヌ語の「モ・ルエラニ」(小さな・下り路)に由来している。明治期の呼称は「モルラン」。【Wikipediaより】
この室蘭市には"日本一の坂"と言うものがある。これは何が日本一なのかと言うと、実話、角度でも長さでも、短さでもなく、そこに福井庵日本一と言う蕎麦屋が合ったことからきている。
また、北海道と言えば味噌ラーメンだが、室蘭市に限っては、味噌ラーメンよりもカレーラーメンが有名である。【ココペディア調べ】
まあ、今更戻るのもどうかと思うし、男の子なので1度決めたことを貫いてみることにする。内心嫌われるんじゃないかとかビビりまくってはいるんだけど…
室蘭市に辿り着いたはいいが、いかんせん右も左もわからない。優愛の家や、例の公園なんて検討すらつかない…。
「勢いだけで来たみたいなもんだしなぁ…」
でも、今は俺があいつにしてやれることなんて、側に行って話を聞いてやるくらいだろう。そんな風に考えながら、缶コーヒーを片手に駅近くのベンチに腰かけてみる。
一口コーヒーを含み、飲み下す。そして
「はぁ~…」
とため息をついて下をみる。このままどうしようかと考えていると、大きめな靴が視界に入った。俺はゆっくりと顔をあげると、キチッとしたスーツに身をまとった40代くらいの男の人が目の前にたって、俺の財布を差し出している。
「これは、君のかい?」
男の人が話しかけてくる…ってなんだこのデジャブ。一月ほど前に似たような経験をした事がある。あの時は黒色のぶかぶかなジャージを着た女の子、まあ優愛なんだけど。
今回はおじさんである。てか俺、物落としすぎだろ…素直に反省しておこう。俺はおじさんにお礼を言って、財布を受けとる。
「ありがとうございます」
「ははは、気を付けるんだよ」
そう一言だけ残しておじさんは去っていく。まあでも、無くしたのでなくて良かった…! と、何となくおじさんの後ろ姿に目がいく…そして、おじさんがとある十字路を過ぎた時、右の道からあのSNSの画像で床に倒れていた男の子がひょっこりと出てきた。
おじさんの背中を見ていた俺は、
「マジか…」
と呟いて、とりあえず確認するために近くに行くことにする。何故かバレないように…バレないように…と、思いながら少年を尾行する。…近くに行くと推測は確信へとかわった。
あの少年だ。恐らくは…優愛の弟くんだろう。つまり、この子についていけば、優愛の家へとたどり着くはずっ! てかうまいこといきすぎて逆に怖い…こんなことある?だって知らない町に来て、目的の人物一人がひょっこり出てくるって…と考えながら弟くんに着いていくと、やたら人気のないところを歩いていき、なんと…
「ラブホだらけだな…」
完全に俺は挙動不審になってしまって、キョロキョロと周りを見てしまっていた…。まあ、まわりに人がいないから問題はないのだが、そんな自分に気づくと恥ずかしくなる…。
照れ隠しに咳払いをすると、弟くんが軽く振り返った。
「やべ…」
すぐに、弟くんは前に向き直るとホテル街を歩いていく。
「てか、優愛…マジか…こんなとこの近くにすんでいたのか…」
そして、ホテル街を抜けたすぐ近くの一軒家に弟くんは入っていった。ごくり…と俺は、生唾を飲み込む
「さて、いよいよか…優愛なんて言うかな…」
俺は、その一軒家へと真っ直ぐに歩いていく。
優愛の涙を止めるために。あの写真のような光景を止めるために。
【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】
家、そこじゃねえから。
またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん




