弱虫の反撃⑭
スレ違う気持ち、うまくいかない心。
――北海道新千歳空港。
俺は皆に無茶をいって、ようやく北海道に到着した。
「うわ、寒っ…こっち冷えるな…」
日本の南の方から急に北にきたのだが、思っていた以上に気温差があり、それに驚く。俺はとりあえず、無事ついたことを皆に伝えようと、ポケットに入れたスマホをとりだ…せないっ!ない!ないけどっ!?
「あれ!?え!?…どこだ?え?…飛行機のなか?」
とりあえずさっきの飛行機に忘れ物がないか聞きに行くことにする。てか、一人ってめっちゃ久しぶりな気がする。とか余裕かましてる場合じゃない。こっちについたら優愛に連絡してみようと思っていたし、そうしないとアイツの居場所がわからない。そして、皆に連絡ができない。
あれ?これめっちゃピンチなんじゃね?これ実話、すげぇヤバいんじゃね?考えれば考えるほど不安のドツボにはまっていく。いや、ほんとマズイ。どうにかしなければ…
先ほどの航空会社の受付へ行き、落とし物はないか尋ねる。
「すみません、さっきの便に乗ってた者なんですが…」
「はい、どうかなさいましたか?」
「さっきの飛行機に、スマホの落とし物とかなかったですかね?」
「スマホですか?確認してきますので、少々お待ちください」
待ちます。待ちますとも、何分だろうと!て言うか、それがないと普通に困る。…あれ?俺依存症じゃね?スマホ依存症ってヤツなんじゃね!?いや、いやいや。俺はそんなデジタルに頼るようなヤツじゃない、そう、俺は…何てことを考えていたら、受付の人が戻ってくる。
「二つありました。どちらでしょうか?」
そう言われ、差し出されたものをみる。
「マジか。すみません、これだけですよね…?」
「はい、等便に残されていたものはこちらのみとなります」
「そうですか…すみません、違うヤツです。ありがとうございました。」
俺は軽く頭を下げてそこを離れる。てかヤバい。これは思った以上に困る。ていうか、それを駆使してきすぎたので、スマホを活用する方法しか出てこないのだ…あれ?携帯無いときとかどうしてたっけ…とそんなことを考えていたら、ふと自分のスマホにかけてみることを思い付いた。
とりあえず公衆電話を探す。
キョロキョロとしながら歩いていると、車イス対応公衆電話を見つける。てか公衆電話とか見るのも触るのと超絶久しぶりである。見つけたときの感想は「あった!」じゃなくて「あったなぁ~」こんなんだったなぁ…と懐かしさが上回った。まあ、子供の頃でもそんな使った訳じゃないんだけど。
そして、お金をいれて電話をかける…と、
{「もしもし?九重ですが」}
完全に世良の声でそういう。
「いや、おまえ九重ですが…じゃねえから!なんでおまえが俺の持ってんだよ!」
{「え?いや、あんたが落としていったんだ。バイクの横に落ちてたのを見つけて拾っといてやったんだぞ!」}
「マジか…」
{「ああ、あたしもこれ見つけたとき似たようなリアクションとったわ」}
「マジか…すまん、世良状況はわかった。ちょっと優愛の番号をおしえてくれないか?」
{「ん?ああ、わかった。なんか書くものあるか?」}――
――そうして、俺は世良から優愛の番号を聞いて1度電話を切る。
そのまま優愛へ電話を…とここで一瞬、変な緊張感に襲われる。何も言わずにいきなり地元まで追いかけてきた男をどう思うだろうか?…いや、でも自分で決めてここに来たのだ。
今更振り替えってどうする!!
俺は電話にお金を入れ、ボタンを押す。
…コールがなり、優愛が電話に出る。
{「も…もしもし?」}
少し怖がっているような、おどおどとした声。さすがに知らない番号からだからだろうか?電話越しにも緊張感が伝わってくる。
「もしもし?…優愛?」
俺がそう言うと、優愛は
{「翔馬…?」}
「え?…ああ、うん。そうだよ、翔馬だけど」
{「……。」}
あ、あれ?なんか気まずい空気でてる?思っていたよりも喜ばれてはいなさそうだ。…ヤバいそう考えるとわりと凹む。凹むくらい調子にはのっていたのか…とさらに自分を攻めて更に凹む。もうぺっしゃんこ。泣きたい。
「えっと…今、俺北海道に来ててさ…その、おまえが心配で…」
なんか無駄によそよそしくなる。
{「……うん。」}
宮崎県で別れた時とはまるで別人だな…あの時、こいつは確かに笑顔だった。今は声しか聞こえないが、その表情を容易に想像できる。愛知のキャンプ場で夜に話したとき、あの時一瞬、一点を見つめながらしていた顔。
きっと、そんな顔をしているのだろう。そうなら、俺にできることをしてやりたい。
「その、なんだ…とりあえず、家が知りたいのですが」
{「えっと…ごめんね…私…
――なんかすげぇ、嫌な予感する。
来てくれたのに…今は…会えないよ…」}
えーっと…やべ、どうしよ…。
【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】
次回、翔馬さんがんばる。
うまくいかない気持ちと気持ちのぶつかり合い。
またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん




