弱虫の反撃⑪
変わらない日々、変わりゆく現状
気づけない日々、気づけない現状
家に帰りつくと、玄関に出てきた麻衣子さんが、驚いた顔で羽太くんをみる。それもそのはずで、外は暗くてあまり見えなかったけど、明らかに頬に擦り傷があり、服は砂や土がてついている。
しかも、たぶん…休日に私と揃って帰宅なんて始めてである。麻衣子さんは私たちを見るや否や
「ちょっ、どうしたの羽太!その格好!」
そう言われて羽太くんはすぐに
「そこで転んだ。姉ちゃんにも見られたし、最悪だわ」
こういう時はどうするのが正解なのだろうか?
①羽太くんに合わせる。
②いま見た全てを話す。
③とりあえず無視する。
①が今は最善だろうか?②のように今見たことを話すにしても、それを羽太くんは避けたいから私に話を降ったんだと思う。③は論外だろう。昔ならそれが一番それっぽいかもしれないが、たぶん、帰ってきてからの私だと、逆に違和感しかないはずだ。だから、私は
「ほんと、ビックリしたよ! 後ろから声かけたら、羽太くん驚いて転んじゃうんだもん」
私のその言葉を聞いても、麻衣子さんはまだ疑いの眼差しを羽太くんに向けている。が、少し考えて…
「そう…羽太はお風呂入りなさい。その格好じゃあれでしょ、優愛ちゃん、羽太が先でも良い?お風呂」
「あ、うん。全然いいよ!」
「じゃあ、風呂入るわ」
そういって、脱衣室へと羽太くんは消えた。すると麻衣子さんが私に
「優愛ちゃん、羽太に合わせてくれてありがとね。でもね、あれは転んでできたような傷や汚れかたじゃないわ。あの子を小さい頃から見てるから、よく分かる。たぶん喧嘩でもしたんじゃないかしら…?」
そういって、少し考えてから
「もし、優愛ちゃんが"何か知ったら"私にも教えてね?」
「うん…わかった。」
今すぐ伝えるべきなのだろうか?私は、選択を間違えたのだろうか…?いずれにしても、たぶん、今は言えない…。羽太くんにも考えがあるだろうから。
私はそのまま、「ちょっと部屋にいくね」といって逃げるようにその場をあとにした。
部屋に戻り、一息つくと急に実感がものすごくわいてくる。ドアを閉め、へなへなとその場に座り込む。
「はは、ははは…こ…これからどうしよう…」
自分でもよくわからないけど、笑えてきてしまった。本当に運よく回避しただけの今は、きっと今後の解決にはならない。今のうちに何かしら対策が必要だろう…けど…
「はぁ~なにも思い付かない…」
そう呟いて、そう言えば電話が途中で切れてしまった事を思い出す。
「あ…そうだ…充電しなくちゃ…」
私は立ち上がり、スマホを充電する。翔馬やリサちゃんならこんな時、どうするのだろうか?――
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――「いや、ほんと、どうすんだこれ…」
「悪いとは思ってるのよ?でも、まさか滑り落ちるとは思わなくて…」
「あぁ~あ…」
「ガッツリとやっているな…」
さきほど、俺達は優愛に電話を掛けたのだが、急に切れてしまった為、かけなおしてみると、電源が入っていないと言われてしまった…それで俺がリサからスマホを預かろうと手をのばした、その時――
――ガチャッ!!
「あ…」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」
メイン画面から落下したスマホが明らかに何かしら破損した音をたてた。それを見ていた世良と孝輔も
「あ…」
「なんと…」
と、その先は言わないが「御愁傷様」と言わんばかりである。いや、正直それどころじゃない。落ちたスマホ拾うの怖い! これ絶対割れてんじゃん。これ絶対拾ったら精神的ダメージ受けるヤツじゃん!! となかなか拾わず固まる俺をみた世良が
「なぁ、これ絶対割れてんだろ」
知ってるわあああッ!! 見らずともわかるわっ! ちくしょう、なんて日だッ!! 違う、これ言いたかったわけじゃない! あれとは違うから!… 落ちつこう…とりあえず深呼吸だ。
「す~はぁ~…」
俺はしゃがみこみ、スマホを手に取る。ジャリ…と土とスマホが音をたてる。あえてひっくり返さず立ち上がり、
――ゴクリ…。
生唾を飲み込んで、ゆっくりとこちらに画面を向ける。
バッキバキじゃねーか。
「Shitッ!!」
思わず英単語出たわ。マジなんなんだよ、電話切れるし…スマホ落ちるし、画面バッキバキだし。どうしよコレ…からの
――「いや、ほんと、どうすんだこれ…」
なのである。操作の反応はない。て言うかたぶんこれをそのまま操作してしまうと、指を切る。とりあえず明日ショップに行こう…そう思う俺なのだった…。
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あれから、一時間ほどたっただろうか?私はスマホの電源をいれる。
「考え事してると、時間過ぎるのって早いな…」
明るくなる画面。
きらびやかな演出のあとにスマホ会社ロゴが出て…しばらくすると、通知が何件か表示される。
「着信が…え…五件…1つ目は、翔馬だ…」
急に切れちゃったもんね…、あとの4件は知らない番号だ。と、スマホがなる。
その知らない番号から…出るか迷ったが、私はその電話に出てしまう。そして、相手の声を聞いた瞬間に、私を心臓をキュッとしぼられたような感覚が襲う。
「やっと出たじゃん、優愛。」
知らない番号の相手は、チカちゃんだ。
【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】
四割翔馬がスマホ割れて、嘆いてる回でしたね。
次回は、翔馬が優愛の現状を知ります。
またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん




