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弱虫の反撃①

宮崎 優愛は進む。自分で選んだ人生(みち)の上、今を打開する為に。


九重 翔馬は進む。自分で選んだ道の上、泣き虫な少女の事を思いながら――。



【二日前】


――嫌いだった。


何もできない自分が。


変われない自分が。


素直になれない自分が。




嫌なことから逃げて、『今』を飛び出した。あの頃の私には分からなかったのだ。自分の救い方が、存在している理由が。どうあがいても、ダメな方にしか転がらないような気がして…。何も見えなくて、見たくなくて…


苦しくて、悩んで、気づかれないように部屋で泣いて…。


でも、今違う。私は出会った。学校みたいに仲の良いふりをしなくてもすむ。自分の家なのに気を使うような必要もない。私が、私でいられる場所――。


そんな居場所になってくれる人達と私は出会ったのだ。彼等は私の話を聞いて『頑張れ』なんて言わない。


きっと…次にあっても、変わらない笑顔でこう言ってくれるはずだ。


「よぉ、久し振り…。なんてね…。」


私は、バスに揺られ、窓に流れる景色を眺めながら…そう呟く。秋口だというのに、こっちはもうずいぶんと冷え込む。家に帰るだけなのに、無駄に緊張する。きっと、パパにはすごく怒られるだろう。母親代わりのあの人には、どんな顔すればいいだろう?


「はぁぁあ…こんなことならやっぱりやめときゃ良かったよぉ~…」


私は頭を抱える。私はなぜこうも優柔不断なのか…?さっき"自分で頑張る"と決めたばかりなのに…現実が近づいてくるたびに、気持ちが揺らぎ、胸が苦しくなる…。


「情けないなぁ…これじゃ翔馬達に会わせる顔がないよ…。」


でも、不思議と(ふさ)ぎ混むような気持ちはない。違った緊張感。どんな結果になろうと、"やってやろう"と言う決意は動かない。


「そう言えば…一通くらいメールうっとこうかな…?」


私は、翔馬とリサちゃんにメールをうつ。すると、バスはちょうど目的地へと辿り着いた。ドアがあき、バスを降りると見慣れた町並み。でも、どこか懐かしさを感じる…


「そんなに日はたってないのに…不思議だなぁ…」


ふと、回りを見渡すと自分の高校の制服を見かけて、思わず物陰に隠れる…。その臆病で弱虫な行動をしたあとに、


「私、全然変わってないじゃん…」と呟き、その姿を客観的に見たことを想像して笑えてくる。


「ふふ…ふふふ。」


きっと昔の私なら、この出来事は笑い事ではすまなかっただろう。本当に嫌で嫌で仕方なかったはずだ。それを笑えるようになっているだけでも、この"家出"に意味があったのではないだろうか?


そんなことを考えながらしばらく歩くと、私の家が見えてくる。


――さあ、行こう。逃げ回るのはおしまいだ。


家の前にたって深呼吸。ドアノブに手をかけて、その時だった――。



「え…?ゆ…、ねぇちゃん…?」


突如聞こえた声にビクッとして振り替える。そこには、血の繋がらない弟が制服姿でたっていた。



「う…羽太(うた)くん…。」



・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・



――道の駅をあとにした俺たちは、九州を北上していた。このまま行くなら福岡に突入する方が早いのだが、世良たっての希望があり、長崎県へと向かっていた。


長崎県ながさきけん】は、日本の九州地方西端部にある県。県庁所在地は長崎市。


五島列島、壱岐島、対馬を含む。【Wikipediaより】


また、長崎県はびわの収穫量、(いわし)の煮干し生産量が日本一であり、すごいところで言うと、新生児の死亡率が少ない順、つまり生存率も日本一である。普通にすごい。【ココペディア調べ】


そして、長崎県へ突入する。走って気になったのがやたら坂が多い事だ。道中の赤信号、元気に坂を駆けあがっていく子供を見て、後ろの世良になんとなく声をかける。


「なあ、そう言えば…おまえなんであんなに足早いんだ?」


運動会で陸上選手に食らい付いていた姿は凄かった。


「ん?ああ、別に、あたし陸上部だったしな。こう見えて全国大会もでてんだよ。ま、3年くらい前の話だけどな」


おいおい、サラリとすごいこと言ってないか?だが、待てよ…


「5年前っておまえ…小学1年生じゃ…」


そう言った瞬間、頭をヘルメットごとバチン!とドつかれる。


「あたっ!」


「痛いのはあたしの心だ!悪いこと言ったら自分に返ってくるんだぞ!」


その様子を隣に並んでみていた孝輔とリサが「なにやってるんだ」、「バカじゃないの?」と笑う。


さてさて、それからしばらく走ると、目的の場所へと辿り着く。そこは、湊町にある小さな乾物屋、バイクを駐車場において歩く。どうやら世良は"あごだし"と言う飛び魚の煮干しでとった出汁に興味があるようだった。さすがうまいもの巡りを掲げているだけある。俺たちのように出来た料理ではなく、もう出汁とか素材から見ていくんですね…。


店内はちょっと暗く、民家と一体化しているお店のようだ。おばあさんが奥から出てきて


「いらっしゃい」と言う。世良は何個か気になる物を手に取り、おばあさんに話を聞いている。



熊本の阿蘇とは違い、潮風独特の香りが店内まで入り込む。なんか、魚食べたい。そんなことを考えながら外に出てみる。すると、外で待っていた孝輔とリサが猫と(たわむ)れていた。



俺は、それを見てなんとなく微笑ましく思い、こう呟く。



「今日も平和だなあ…」



・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・



「なにしてんの…?家、入りたいんだけど。」


弟に急かされ、私はドアを開けて家にはいる。


「ただいま」


弟の声に反応して、女性の声が聞こえる。そしてその声の主はエプロンで手を吹きながらリビングから出てくる。


「お帰りなさい、"お母さん"ちょっと今から買い忘れた物買ってこなくちゃだから……」


そして、私を見て一瞬固まる。


「優愛…ちゃん…?」


ビビるな私、普通だ。普通にすればいいんだから、普通に言うべき言葉を言うだけだ…!



「た、ただいま…」




【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】















糞みたいな現実に抗え。君にはそれができるのだ。




またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん


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