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出発の日④

熊本を離れた翔馬達、道の駅にて少し休憩することに。

――熊本を離れた俺達は、途中の道の駅にいた。


「なあ、翔馬…めちゃめちゃ今更なこといっていいか…?」


休憩所の椅子に腰掛け、「あー…」と背もたれにダルそうに持たれながら世良は言う。


「パン…食いそこねたな…」


「うわ…マジだ…いっそ、一度戻るか…?」


「嫌だよめんどくせぇ…」


「泣き顔見られたくないしな」


俺がそういうと、向かいに座っている世良が俺の(すね)を蹴る。


「いてっ」


そんなやり取りをしていると、飲み物を買ってきたリサと孝輔が


「なにやってんのよ」


「君たちは仲がいいな」


と言ってくる。そして、飲み物を受けとると二人も席につく。すると――


――お昼前にある三分間のお料理番組のテーマが聞こえてくる。


「なんだなんだ?」


「誰かのスマホじゃないしら?」


世良とリサがそんな話をしていると、おもむろに孝輔がスマホを取り出す。


「すまない、俺だ…もしもし?」


孝輔が電話にでた瞬間



{「ちょっと孝輔ッ!! アンタ今何処にいるのよッ!! そんな無視ばっかりしてたら、知らないんだからっ!!それと、コールは三回以内で出なさいよねッ!!」}



おもいっきり声の漏れてくる電話に、孝輔以外が目を丸くしていると、孝輔は「ちょっとすまない」と席をはずした。そして、少しすると孝輔は通話を終えて、すぐに戻ってくる。


それを待ってましたとばかりに世良がにやけた顔で孝輔に聞く。


「おいおい、あれ誰だよぉ~誰なんだよぉ~もしかして彼女かぁ?ん?」


めちゃくちゃめんどくさいおっさんみたいな絡み方をする世良に、孝輔が答える。


「ん?ああ電話の相手か」


「そうそう!」


珠理(じゅり)"だ"」


「「ジュリア!?」」


リサと世良が驚いて聞き返す。が、どう考えてもジュリア何て言ってない。なので孝輔に救いの手をさしのべてみる。


「いや、じゅりって言ったんだろ」


「は?ジュリアだろ何いってんだよ」


「そうよ翔馬、あなた何いってるの?ジュリアよ」


「いや、ジュリア何て言ってないぞ」


「いや、絶対今ジュリアつったから!!なあ?!」


世良はリサに同意を求める。


「そうね、今回はチビロリと同意見だわ。絶対ジュリアっていった」


うわ、もうなんだよこのあるある体験。言った言ってないなんてなんの生産性もないだろうが!!てかジュリアだったとしてそのジュリア何者なんだよっ!!もうむしろジュリアが気になりだして仕方ないっ!と…危ない取り乱しすぎた…。



「で、そのじゅりだか、ジュリアだかは誰なんだ?まさか…マジで彼女…」


「いや、違う。妹だ」


「「「妹!?」」」



今回は俺も驚く。


「アンタ妹なんていたのかよ!?」


「マジで! 俺も聞いてないぞ!!」


「孝輔、あなた何人兄妹なの?」


リサの質問に、孝輔は


「ん?…ああ、うちは7人兄妹なんだが…言ってなかったか?」


「いや、言ってなかったどころじゃねえよ!!大家族じゃんっ!!」


驚く俺に孝輔は「そうだっけ?」と言って、家族構成を教えてくれる。


「うちは、母さん、俺、妹、妹、次男、妹、三男、妹の八人家族だ」


「妹多っ!」


うちの破天荒妹キャラ(そうでもない)世良が速攻ツッコみ、孝輔が笑う。そんな感じにくだらない話をして、道の駅を後にしようと立ち上がる。


バイクへと移動しながら俺は孝輔になんとなく電話の事を聞いてみた。すると孝輔は「大したことじゃない、気にするな」と言って、なんとなく駐車場へと視線を向ける、そして車へと急ぐ家族を見てから、少しだけ固まる。


・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・・

・・


「もしもし?どうした珠理」


俺がそう名前を呼ぶのは、俺の二つ下の妹。うちの長女に当たる人物だ。すると珠理は


{「どうしたじゃないのよ!!もう本当に今大変なんだから!!本当は孝輔には連絡するつもりじゃなかったんだけど、麻琴(まこと)が風邪引いちゃって…母さんパートで出ないし、病院いこうと思ったら、保険証の場所わかんなくて…孝輔なら知ってるかと思って…ゴメンね…」}


そう言って珠理は、謝る。ちなみに麻琴とは三女に当たる。


「保険証は、食器棚の引き出しだと思うが」


すると電話からガチャガチャと音が聞こえる。きっと、今探しているのだろう


{「さっきみたけど、なかったのよ…」}


珠理は探しながらそんなこと言う。


「もしかしたら、母さんの私用の鞄かもしれないな、外ポケットをみてくれ」


うちの母は仕事用と私用で鞄をわけ、無くしちゃいけないものを、私用の鞄の外ポケットにしまう癖がある。ドタドタと部屋を走る音がしてガサガサと言う捜索音を電話が拾う。そして


{「あ、あった!! あったよおにいちゃ…孝輔っ!ありがとう!んじゃ、私は、麻琴を病院につれてくから、またね!! 電話してごめんなさい! 旅、楽しんでねっ!」}



そう一方的に言って、珠理は電話を切った。


「素直に、昔みたいお兄ちゃんでもいいのだがな…」


思えば…俺が旅に出たのは今は亡き父の夢があったからだ。父は俺たち家族を養うために、必死に働いてくれていた。そんな父の趣味は『旅』であった。…らしい。父は学生の頃に日本一周を自転車でしたのだと、子供の頃に聞いたのを今も覚えている。


父は、どんな景色をみたのだろうか?


父は、どんな人に出会い、話をしたのだろうか?


きっと、父のしてくれた話に出てきた人や景色以外にも、もっと素晴らしい何かを聞いたり、見たりしたはずなのだ。


だから俺は旅に出た。長男の俺がいなくなると、家は大変になるのは分かっていた。だが、俺が子供の頃からそうしたいと言っていたのを知っていたアイツらは、暖かく送り出してくれたのだ。


「にいちゃんがんばれ!」


「いってらっしゃい」


「怪我しないようにね」


「お土産よろしく~」


「気をつけて…」


「にいちゃん、いないいないなの?」


「あとは、母さんと私にまかせて、行ってきなさいよ!



そして、――



父さんのみたかもしれない景色と、お話を…帰ったら聞かせなさいよね!」



・・・・・・

・・・・

・・・

・・


少し、ボーッとしている孝輔に俺は声をかける。


「おい、孝輔どうした?行くぞ」


すると孝輔は俺の方を向いて、


「似たような境遇のヤツとも出会った事だしな…」


「は?なんだそれ」


「いや、なんでもない。行こう。世良とリサ様のおっぱいが待っている」


「なんなんだよ、はは!」


「ほら、急ぐぞ翔馬」


「おまえがボーッとしてたんだろっ!」


バイクまでかけていく。先にたどり着いた二人に


「早くしなさいよ!!出発するわよ!」


「おせえよアンタら!」


早くしろと、急かされながら。



【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】




















次回から長崎県から福岡、中国地方へと進んでいきます❗


次回新章『弱虫の反撃①』


またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん

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