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とっておきキャンバス⑬

居酒屋で、貴幸さんは酒の力もかりて、お話をする――

あれは、7年前だった――。


僕は、最近の言葉で言う陰キャで、クラスでは影が薄く、友人と呼べる人も正直、いなかったんだ…。


今でこそこんなに話ができるくらいは、ましになったけど、今でも、どもったり、テンパったりなんて日常茶飯事でさ、それに、毎日通わなきゃいけない学校も、何でいかなきゃならないのかわからなかったし、習う授業もなんの役に立つんだろう?なんて本気で思って、とりあえずノートをとったりとかして、まあ、見た目こんなだし、良くからかわれたりなんかもして……


あれも、そんな時だった――。



――「うわっ!貴幸また絵かいてるよっ!女の子の絵っ!」


「うわぁ…マジかよおまえ、マジオタクだな、うわこっちみた、ウケる」


ただ見ただけで頭をこづかれ、「こっちみんなよ、キモすぎ」と言われる。それを見た女子がクスクスと笑って、調子づいた彼等は僕のノートをとりあげる。


こんなの"いつもの事"だし、何度も経験してきたから、なんとも思わないし、ノートさえとりあげなければ好きに笑ってくれて構わないと思ってた。


実際、僕は漫画やアニメが好きだったし、絵を描き始めた理由はそのキャラクターが魅力的で、ぼくもそんな素敵なキャラクターが描きたいと思ったからだった。


まあ、ただ、この時の絵は人体の構図が理解したくて、たまたま女の子を描いていたんだけど、彼等のなかでは


【陰キャ】+【男が女を描く】="オタク"


らしくて、高校に入ったばかりだけど何やってんだって、中学生かよ!ってコッチが思うほどだったよ。


ただ、僕はとにかくノートを返してほしくて、彼等に


「返せよ!」


って勇気を出して言うんだけど、自分が思ってるよりも声が小さくて、逆にバカにされるんだ。


「"返せよ!"じゃねぇから、ははっ! マッジウケる!"返せよっ!"」


人の真似をして周りから笑いをとり、彼等の大好きな優越感に浸る。その出しに使われてるのはすごい嫌で、なんとか取り返そうとするんだけど、手が届かない。


その時だった、彼女が来てノートをサッと奪う。そして、僕の机に置いて言うんだ。


「はい。これ、君のでしょ?」


彼女の名前は宮崎(みやざき) くるみさん。誰にでも別け隔てなく話しかけ、笑顔をみせるとても優しい、女の子。


「おい、くるみっ!マジ萎えることすんなよ」


「マジで、これからだったのによ。あとそいつキメェから、あんま近づかない方が良いぞ」


二人の男子がそんなことを言う。だが彼女は


「…いや、たぶんそんな風な考え方をしてる方が気持ち悪いって私は思うよ。それに、人に嫌がることしたら、自分に返ってくるんだよ?だからやめた方がいいよ。」


ハッキリと自分の意見が言える彼女をカッコいいなと思ったし、すごいなって感心もした。それから僕は、なんとなく、くるみさんを意識するようになって、クラスにいるときとか、目で追うことが多くなっていった。


たまに目が合っても、僕なんかに嫌な顔ひとつせずニコリと笑うくるみさんを、本当にすごい人だと思って憧れていた。


そんなある日の休憩時間、くるみさんが僕の席まで来て、ノートを見せて欲しいって言ったんだ。


理由は単純で、彼女は美術部らしく、ノートが気になったからだと言っていたけど…僕は、リア充の彼等がいっていた「マジオタクだよな」、とかが頭をよぎって、引かれるんじゃないか?とか、もう笑いかけてくれなくなるんじゃないか?とか無駄に勘ぐって、なかなかYes(イェス)でって言えなかったんだよ…。


だけど、隠しても仕方ないし、逆にNo(ノー)とも言えないから、とりあえず、見てもらうことにしたんだ。今でも、あの時緊張したのを覚えてる。


そして、勇気を出してノートを渡し、彼女がページ数枚めくる。それからこう言って微笑んでくれたんだ。






「"とても、素敵な絵を描くんだね"」





たぶん、この時僕は本当の恋に落ちたんだと思う。



まぁ、だからと言って何かモーションがおこせるわけでもないんだけどさ…それに彼女は人気があったんだ。僕なんかに振り向いてくれる訳がないと、そう思っていたよ。



ただ、何故かその日から少しづつ、おしゃべりをする事が増えていって、お昼ご飯なんかも声かけてくれたりして、彼女に一緒に食べる友達とかいるときとかは、断ったんだけど、二人で食べる事とかも、ちらほらと出てきていて僕自信、調子にのっていた時期だった。雷に撃たれるような衝撃の言葉が彼女の口から繰り出されたんだ。



「ねぇ、貴幸くん。相談があるの…私、私ね――」



その日の帰り道は雨で、僕は濡れることも気にせずに下を向いてあるいて帰ったのを覚えてる。


あの時彼女は、僕にこう耳打ちしたんだ。



「私ね――。美術部の(ひいらぎ)先輩が…"好き"なの。卒業する前に告白したいんだけど、どうすればいいかな?」





【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】










つづく。


またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん

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