とっておきキャンバス⑨
イケメンが、沢山いると、マジへこむ。
翔馬、心の俳句。
それから、俺達は車で30分ほど揺られて、お姉さんの両親が経営すると言うペンションへと到着した。そこは、お姉さんの言うように辺りに家はなく、そのペンションだけが、回りに設置されたライトによりオシャレに照らされている。俺達は車から荷物を下ろすと、お姉さんに促されるまま、ペンションの玄関口へと向かい、そこで止まる。
「ちょっと待っててくださいね」
と一言残し、お姉さんは中へと入っていった。
「ねぇ、ちょっと翔馬、かなりいい感じの所じゃない!!」
「確かに、オシャレだな」
とリサはかなりお気に召されたようで、回りをキョロキョロとしている。
「そういえば、雨やんだんだな」
世良はペンションへのコメントはなく、雨がやんでいた事にいま気づいたらしい。車のって速攻寝てたしなこいつ。
「車のって少ししたら、雨は止んでいたぞ」
と、孝輔が世良の話にのっかる。そんな雑談をしていると、ガチャリとドアが開いた。そして中から、ヒョイッとお姉さんが顔…ん?いや違う。中からヒョイッとジャ◯ーズとかにいそうな可愛い系の顔をした男が顔を出す。そして、
「いらっしゃい!!くるみさんが言ってた人達だよね?ささ、入ってよ!」
と言って扉を開いた。てか、お姉さんは"くるみ"と言うらしい。
「あ、お邪魔します」と口々に言いながら中にはいる。と、奥の部屋からもう一人、人が出てくる…。てか、こちらもイケメンである。切れ目に明るめの茶色い髪、毛先は遊ばせてあり、スラリと伸びた手と足をしている。そしてそいつもこちらへやってきて
「うおっ!、マジ白人の美女じゃん…
――と、リサと世良を交互に見て
ッチ、なんだ子連れかよ」
「ちょっと、私が子連れですって?アナタ本気でいってるの?」
「おい、チャラ男…あたしがこの牛のガキだと…ふざけてんのか…?」
二人はメラメラと闘士を燃やし始める。こいつらはイケメンとかあんま、気にしないタイプらしい。と、更に人が出てくる。こちらもイケメンと言うか、かなりイカしたおじ様である。ってなんだここ!!俺に劣等感を植え付けたいのか!!
「おい翔馬、なんだろう?腹が立つな…」
と孝輔が呟くが、おまえそっちサイドだろうがっ!!ふざけんなよ!!いじめか!!
マジでなんだここ。どっかの芸能事務所かよッ!!
そんなことを考えていると、そのイカしたおじ様が
「やぁやぁ、くるみから話は聞いているよ、悪いね来てもらっちゃって、私はくるみの父で、ここのオーナーをしています。宮崎 伸雄と申します。…そして、その目付きの悪いのが、大河、その大人しそうなのが彪牙です」
チャラ男が
「ま、子連れもいけねぇことねぇから。」
と言って手を差し出し
「よろしくね~」
と可愛い系の顔をした男の人は、ひらひらと手をふる。と、正直そんなことより、気になることがある。
「え?宮崎?」
「今韮崎っていった?」
チャラ男の手を軽くはじきながらリサも言う。やはり気になるのだ。
「いや、宮崎です。」
え?偶然…?とりあえず気になるし聞いてみる事にする。
「あの、宮崎…優愛と言う女の子を御存じないですかね?」
「…?さあ、すみません。心当たりありませんね…申し訳ない」
たまたまだったようです。てことは、お姉さんは宮崎 くるみ なのか…。少し雰囲気似てるからな、もしかしたらと思ったんだが…。まあ、世の中同じ姓なんて何人もいるしな。
そんな話をしていると、孝輔がふと、
「なぜ、彼等は屋根の修理をしないのだろうか?」
と伸雄さんに話しかける。確かに…出来そうなものだが。
「ええと、それはですね…」
伸雄さんが答えに困っていると、大河さんが孝輔へ代わりに答える。
「ああ、それは俺も高いとこダメなんだよ」
彪牙さんは
「業務内容に含まれていないのに、なんで働かなきゃならないのさ」
とニコニコしながら言う。いや、そんくらいやったれや。ペンションなら住み込みで賄いとか貰ってるんじゃないんですかね?
「と、そう言うわけなんだ…すまないね」
と言って伸雄さんはばつが悪そうに頬をかいた。いや、そこはもっと彪牙さんに言っていいって…あれ?
「お二人は兄弟と言うわけではないんですか?」
「は?なにいってんだおまえ。んなわけねぇだろ。バカか」
うわ、大河さん男の子に対して口悪っ!!
「よく間違われるんだけどねぇ…ちなみに、僕はこのペンションをくだったとこに住んでるんだけど、大河はここに住んでるよ。くるみさんの弟だからね。あ、伸雄さんとは親子ね~」
オッケイわかった。なんかややこしいんだね!!
「そうなんですね、ありがとうございます。」
そんな話をしていると、お姉さん事、くるみさんが戻ってくる。
「すみません、お待たせしちゃって…!お部屋の準備してました!えっと、あとお食事はまたあとからお出ししますので、お部屋でゆっくりしておいてくださいっ!」
そう言ったあと、今度は部屋へと案内をしてくれる。ペンションの二階へあがり、奥が俺と孝輔。手前がリサと世良の部屋となった。
「じゃ、またあとでな」
「あとでね」
と、各々部屋へと入る。適当なところに荷物を置くと、俺は部屋に備え付けのソファーにドサッと座った
「ああああ疲れたあああああ!!」
「ははは、後半は世良が運転していただろう」
「いや、そうだけどさ…てか…やっぱスープだけじゃ腹へったな…飯どんくらいで出来るんだろ…」
「さあ?今からだと言っていたしな、ただ、至れり尽くせりだな。屋根の修理でここまでしてもらえて…何か裏があるのではないだろうか…?」
「いや、考えすぎだろ。まぁラッキーではあるよな」
そんなことを話ながら、ポケットからスマホを取り出す。画面に目を向け確認すると、新着のメッセージが二件。一件はリサからで、部屋にはいってすぐきたものだ。もう一件は1時間くらい前に…
――優愛から。
内容は、実家に到着すると言うものだった。
『翔馬、いろいろありがとう。私はもう少しでお家に到着します。まだバスの中だけど、すごくドキドキしてる。がんばるね』
そのドキドキは、不安からだろうか?なんにせよ、彼女はしっかりと自分の環境と向き合おうとしているのだ。それに、メッセージは1時間前だ。きっともう家について、話のひとつや二つはしているのだろう。だから、俺はこう返す。
『おつかれ、今のおまえ超カッコイイから、魔王城に向かう勇者みたいだから(笑)大変だと思うし、頑張れとかは言わないからな。何かあってどうしようもなくなったら、何時でも連絡くれよ。全速力で走っていくから。てか、場合によっちゃ、飛んでいくから!(笑)負けるな、優愛!』
――少しは、励みになれるだろうか?
そして、丁度返事が終わったくらいに、くるみさんが部屋をノックする。
「ご飯できましたよ!!リビングにお集まりください!」
その声を聞いて、スマホを弄っていた孝輔も顔をあげる。
「行くか」
俺がそう言うと、孝輔も立ち上がり少し伸びをして
「そうだな。行こう」
と言ってハニカンだ。そしてココには、こいつ以外にも何故かイケメンが多いことを思いだし、俺は少しだけ凹むのだった。
【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】
次回、くるみさんと貴幸さん(消えても何故か気にされない人)の馴れ初めに入る予定。
またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん




