とっておきキャンバス④
いざ、個性豊かな奴らと熊本県へ―!
「全国制覇って、格闘技かなんかか?」
世良の性格から適当に予測をたて聞いてみる。
「ん?ちがうちがう、あたしの全国制覇ってのは、ウマイものだなっ!あたしはな、将来親父とじいさんがやってる居酒屋を継ぎたいんだよ、だからウマイものを沢山知りたいんだっ!そしてゆくゆくは、芸能人とかがリポートにくるような店にするっ!そのための旅だっ!!」
俺なんかより、しっかりと人生設計してらっしゃいました。なんか、正直ちょっとだけ舐めてた。
「すまん」
「なんで急に謝るんだよっ!ところで、ええと…」
「翔馬だ、んで隣の白人が牛…間違えたリサだ。」
「ちょっと!今絶対わざとよね!?」
俺は口笛を吹いてごまかす。そんな事をしていると、孝輔が俺達にある提案を持ちかけてきた。
「翔馬…と、リサ様」
「さまっ!?」
「ふむ、続けなさい孝輔」
めっちゃ偉そうだっ!!
「ひとつ、提案があるのだが…君たちも熊本県にいかないか?」
「いや唐突だなマジ…なんで熊本県?いやまぁ、いつかは通るところではあるけど…。」
「単純な理由だ、そこの世良の食べたいものと俺の気になるものがかぶってな、熊本まで一緒に行くことにしたのだが、君達もいってくれるのなら、バイクにのせてもらえるといろいろと、融通がきくだろ?」
「…私達を利用しようと言うの?」
「いや、そう言うわけでもない…ガソリン代はこちらがもとう。どうだろう?悪くはないと思うが」
ふむ…確かに電車やタクシーを利用するよりは低価格で移動できるし、休みたいときや気になる場所にそのまま向かう事も可能なわけか。しかも、コチラとしてもガソリン代がうく。でも、リサは桜島に行きたがってるしな…お互いにおいしい話ではあるが…
「いいぞ孝輔!その調子でもっと口説け!」
ヤッホー!とでもいいそうなテンションで何故かファイティングポーズをとり、「しゅっ!しゅっ!」と言っている世良。こいつやたらにぎやかだな…
「まかせておけ世良。俺がこのおっぱいをモノにしてみせるぞ」
「ちょっと、アナタ本音がポロリどころか、モロなんだけど。」
「いけよ孝輔!牛なんてワンパンだワンパン!しゅっ!しゅっ!」
「翔馬、私ちょっと疲れてきたわ…」
「安心しろ。俺もだから。」
しかし、熊本県か…一応ちゃんと断っておくか、孝輔と少し旅をして見たかったりもするが…そう考えていたら、リサが口をひらく。
「熊本には何があるのかしら?アナタ達が気になるものってなに?」
すると、世良がおもむろに背中から情報誌を取りだし、パラパラとページをめくって、とある写真を指差した。
「今どっから出したんだよ、それ」
「まぁ、いいからいいから、とりあえず見てみろよ」
俺とリサは指先の写真に目を向ける。と、そこにはとてつもなくうまそうなパンが写し出されていて、とてもカントリーなカフェの写真と、店主だろうか?綺麗なお姉さんがそのパンを紹介するようにそえられていた。
「パンか…確かにロケーションもよさげでうまそうだな、孝輔もパンくいたいのか?」
「いや、俺はそのお姉さんに興味があるのだ」
「「そっち!?」」
思わずリサとリアクションがかぶる。
「いや、まぁ確かになんかゆるい感じとか可愛いけど…」
「は?なに?翔馬やっぱりこんな感じのが好きなのねっ!少し雰囲気韮崎に似てるものねっ!!」
「韮崎とは?巨乳なのか?」
「違うわよ!!あんなの中学生よ!!」
「そうか、世良よりまし。くらいか」
「おいまて、なんであたしを引き合いに出したんだよ。あたしだって脱げばすごいんだからなっ!」
そういって世良は胸を張る。
「あ、はい。」
と孝輔がそっけなく答えると、世良に背中にしがみつかれ、頭を噛まれているが、微動だにしていない。っと、そろそろ話を戻すことにする。
「孝輔、すまないが熊本には…」
そこまで言うと、リサが
「行きましょう、熊本。桜島は見られたし…個人的にこのチビに興味があるわ…ふふふ…♪」
不適に笑うリサに世良が警戒を示す。
「な、なんだよ…?おい、翔馬っ!こいつ怖いゾッ!」
そう言って、俺の後ろに隠れてリサの様子をうかがう。さぁ、そうしてなんとなく、ただただ気ままに熊本に行く事が決定する。
それから、バイクまで歩いて戻り、途中コインロッカーで荷物を回収する。そしてバイクにまたがると俺の後ろに孝輔がまたがる。
「……。」
「なんだ翔馬、不服そうだな」
「いや、別にそんなんじゃねぇけど」
優愛がずっと座っていて、良い匂いとかたまにしていたところに野郎が座る。孝輔自体はなんか良い匂いもするのだが、別にこいつが悪いわけでもないのに、なんとなく寂しく感じる。というか、他の人が座ることで実感しているのだ。優愛がいないと言うことを…。
「そうか?ならいいが」
「いや、なんかすまん。気にしないでくれ」
そうこうしていると、リサのサイドカーに入れられていている世良が、俺に話しかけてくる。
「なぁ、翔馬!アンタ運転しつかれてんなら、アタシがやってやろうか!?」
は?なに言ってんだコイツ。
「小学生は免許証とれねえだろ」
「あたしは18だっ!!」
すると財布から免許証を取り出して「じゃっじゃ~ん!」と俺達に見せびらかす。とても自慢げな顔をしている。…でもまぁ、ちょっと後ろに座って楽できるっていいんじゃね?あとで代わってみてもらうか。
「マジでもってんのか、ならあとで頼んでも良いか?」
「おう、まかせとけ!途中疲れたら交代してやんよ」
そう言うと、孝輔が後ろから
「ちなみに、俺もあるぞ。」
と言ってスチャッと人差し指と中指に挟んだ免許証をみせる。
「おお、マジか!」
コレは、かなり頼もしいんじゃないのか?やるじゃないか世良、孝輔!!と感心していたのも束の間。
「まぁ、とりあえずはこの温もりを堪能することにしよう…フフフ」
そう言って、孝輔が俺のお腹に手を回し後頭部にほほつけてくる。
「やめろ!キモすぎるっ!」
「なぁ翔馬。俺が…男もいけるんだと言ったら…どうする…?」
おいおいおい、こいつマジでいってんのか。
「嘘…だろ…。」
「さて、どうかな…?」
こうして、俺達は熊本へと出発するのだった――。
――熊本県阿蘇市。
カランカランと小気味良い鈴の音を鳴らして、とある喫茶店の扉がひらく。
「あ、いらっしゃい、たぁくん!今日もいつものでいい?」
「あ、はい。お願いします」
「もう!いつも固いんだからっ!!新しい絵はどう?描けてる?」
「…まぁ…ぼちぼちです。」
「そっか…ねぇ、私達付き合い初めてもう7年もたつし、」
そう、女性が言うとおもむろに男は立ち上がり
「あ。あっ!ちょっ、ちょっと散歩に行ってきます!」
と言って急に店から出ていってしまった。
「ハァ…また逃げられちゃったなぁ…」
ため息をついて、そのついでに愚痴をこぼし、女性は業務へともどるのだった。
【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】
付き合いは、長ければ長いほどお互いが分からなくなってしまうことがある。
またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん




