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とっておきキャンバス①

時は動き出す。新たな出会いと新たな物語のその先へ――。


『日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!』




――鹿児島県のとある港町


トットットットッ…と音を出して沖へ向かう船を、防波堤の先端に立ち見つめる少女。その横には紫の小さなキャリーケース、そして少女の手には、【全国制覇】と掘られた木刀が握られている。


金髪を風に揺らし、真っ白なジャージ姿のその少女は、海に向かって唐突に叫んだ――。


「あたしはぁーーッッ!…旅に出るぞぉーーッッ!全員まとめてーッッ!かかってこぉーーいッッ!」


「せがらしかっ!(やかましいわ!)」


パコンと音をたて少女は頭を叩かれる。


「いてっ!痛いがね!」


少女が後ろを振り返ると、ガタイのいいおじさんが立っていた。


世良(せら)、わいはいっとか?(せら、おまえは行くのか?)」


そう聞かれ、頭をさする少女は目を蘭々と輝かせながら答える。


「行くよっ!昔からの夢だからね!その為に標準語を勉強したんだがね!」


「じゃっとか…。行くんならきばれよ、てげてげしっせぇ、泣んながら戻んなね?いっ魂いれっせぇ、け死んかぎり、きばれよ!わいは、おいの娘やったっでなぁ。(そうか、行くのならがんばれよ、中途半端にして泣きながら戻ってくるなよ?魂いれて、死ぬ気でがんばりなさい。おまえは、俺の娘なんだから!)」


「分かってるが!…とう!」


少女は防波堤から飛び降りる。それを見ていた世良の親父は残されたキャリーケースに目が行く。


「…世良、わいはこんバッグはどうすっとか。」


「あ……とって!」


世良の父親はため息をはいて呟く。


「んな!?…ハァ…こらやっせん…。(は?…ハァ…こりゃダメだ。)」――。



・・・・・・

・・・・

・・・

・・


「もう!翔馬!早く行くわよ!」


ああ…寂しい…なんだこの無気力感は…


「翔馬!あなたいつまでそうしているつもり?」


俺はバイクにまたがりハンドルに腕をのせ、うつ伏せになっていた。


「あと57000ユーロ…」


「なんで欧州通貨なのよ!!」


「もぅ帰ろっかなぁ…」


「いやほんとどんだけなのよ、優愛はもともと予定外だったでしょ!?いいかげん怒るわよ!会えない訳じゃないんだから!」


「分かってるよ…はぁ…さて、ぼちぼち行くか。」


上半身を起こす。背中が、寒い。まさかこんなに自分が凹むとは思ってもみなかった。いや、て言うか、背中は昨日から寒いんだけど…なんだろう?飛行機が飛び立つのを見送ってバイクに戻ってきたら急にむなしくなったのだ。


まぁ、これから一生会えないわけではない。むしろ1~2ヶ月の間くらいには北海道にまで行けるだろう。よし、気持ちを切り替えて行くとしよう!!


「とりあえず、このまま南下して九州を回ろうと思うんだが、リサ、どう思う?」


「いいんじゃないかしら?私、桜島に興味があるわ!きっと、とても美しいと思うの!」


「…?まぁ、風景は良さそうだな。」


「でしょ?わくわくしてきたわっ!行きましょ!」


そう言う事で、南下する事が決まり、俺達は鹿児島県を目指す。途中、都城市の道の駅により、休憩をしていると、俺とリサのスマホが同時になる。二人でそれを確認してみると優愛からのメールで、件名に『V』とだけ書かれ、本文はない。そして、何か画像が付属されていた。


「…なんだこの画像。リサ、おまえのにもあるか?」


「この画像かしら?」


と言って、俺にスマホの画面を見せる。そこには、羽田空港と空、そして、その空に向かってピースをしている優愛の手が写った写真が表示されていた。


「はは、一緒のヤツだな。なに考えてんだろうな」


「…たぶんだけど、大丈夫って、負けないからねって伝えたいんじゃないかしら?」


「…そうか?まぁ、なら俺たちもなんか送り返すか。」


そう言って、俺とリサも写真をとる。スマホをベンチにおいてリサの化粧品で固定する。セルフタイマーをセットし、バイクに乗る。そして――。


写真を撮り終えて、それを送信する。


俺達の思いも、届くだろうか?――。


・・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・



――鹿児島中央駅。


ガラガラガラ…世良は、紫の小さなキャリーケースを引きずり歩き、少しだけ不機嫌そうにしている。


「(…ッチ…マジで、なんであたしこんなに見られてんだ?)」


実話、この少女…見た目は白いジャージでその辺にいそうなヤンチャな風貌をしているが、身長が143cm(小学5年生の平均身長くらい)とかなり小柄で、少しはじけた小学生くらいに周りから見えているので、そこそこ目立つのである。しかもキャリーケースの横には、もれなく木刀が添えられている為、尚更である。


そんな感じで歩いていると、明らかに世良を凝視して何かを話している女子高生に気づく。


「(くっそ、なんだあの目イラつくな…あれ絶対あたしの事話してんだろ。)おい…」


世良がそっちを見て、ひそひそ話をしているJKに食って掛かろうとした時だった…左に衝撃を感じ、そのままズサッと床に転がる。


「って!?」


転がって、その衝撃の方に目をやると、やたらと身長の高い兄ちゃんが手を差し出していた。


「いや、すまない。まさか小学生にぶつかるとは…大丈夫か?怪我はしていないか?」


「…は?誰が小学生だって?」


差し出された手を、無視して立ち上がり、そのやたらと高い兄ちゃんにガンを飛ばす。


「おまえ、デカイからって調子にのんなよ…あたしはな。」


すると、ヒョイッと急に世良は宙にうく。


「ひゃいっ…!?」


すると、兄ちゃんは世良を両手で抱えあげ、下を見て何かを探している様子で、その探し物はすぐに見つかり、世良は下ろされる。


「ああ、あったあった。たびかさねて申し訳ない。ちょっと眼鏡を落としてしまってな…君のしたにあるじゃないかと思ったんだ。」


このあり得ない仕打ちに世良の怒りは頂点にたっする。


「おい、デカいの。歯ぁくいしばれ。」


しゃがみこんで眼鏡をひろい、ベストポジションに顔を置いている兄ちゃんに向かい、世良は拳を強く握りしめ、その一撃を放った。


「がはっ…!」


振り抜かれた拳をヒラヒラとして、満足そうに笑みを浮かべる。そして、周りがざわつき始める。


「(くそっ…面倒なことになってきたな…)」


すると、今しがたしばかれた兄ちゃんが立ち上がり、


「ちゃんと話そう。」


と、まるで彼氏と彼女の痴話喧嘩のあとのような空気で話しかけてくる。しかし、このまま此処にいても仕方ないとも思い、とりあえずその兄ちゃんの提案にのることにする。そこから少し離れた駅内のベンチに腰掛け、話をする。


「いや、だいぶ良いものをくらった。君はすごいな、小学生とは思えない。」


「小学生じゃねぇから。あたしはこう見えて18だ。」


「……は?」


「なんだよ、文句あんのか」


「え…同い年…?」


「はぁ!?タメ!?おまえ絶対成人してんだろっ!なんだその容姿!!どう見ても、23歳とか、その辺だからな!」


「いや、俺もこう見えて18だ。…にしても。なるほど…最悪親御さんに謝らなければとも思っていたが…同い年ならそこまで気にしなくても大丈夫か…」


「何一人でぶつぶつ言ってんだよ…。ところで、あんた…そのでかいリュック」


「…?ああ、これは…今俺は、日本を一周している途中でな」


そう、兄ちゃんが言うと、世良は急に目を輝かせながら言う。


「お…おおおお!あんたもかっ!すげぇ、こんなに早く自分以外の旅人に出会うとは…えっと、そうだな。とりあえず名前!名前教えてくれ!」


急に興奮する少女に、じゃっかんたじろぎながら兄ちゃんは答える。



「俺か…俺の名前は…」


「いや、やっぱタンマ!あたしが先に言う!あたしは一ノ(いちのせ) 世良(せら)!あたしも、今日から日本を制覇する為に旅に出たんだ!」


その話を聞き、兄ちゃんは答える。


「なんと…同士だったか…。俺の名前は四月一日(わたぬき) 孝輔(こうすけ)だ。よろしく頼もう。」



「…どうでもいいんだけど、あんた、だいぶ物言いが上からだな。」



「それはお互い様だと思うが。」



「なんだと…?」


ギロリと世良は孝輔を睨む。


「落ち着け、ちゃんと話そう。我々は意思の疎通ができる生き物だ」


「あんた絶対バカにしてんだろ!!」


雑音と、電車の出入りの音がする中で、くだらない言い合いは続くのだった――。



【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!!】



















さあ、メインキャストが出揃いました。


【九重 翔馬】


【宮崎 優愛】


【リサ・アシュホード】


【四月一日 孝輔】


【一ノ瀬 世良】


彼等が私の物語の主人公であります。戦隊もので言うところ五人組です。


これから起こる珍道中に、どうかお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします❗


またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん

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