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優しさと愛のその先に①

多鶴子さんと別れ、銀杏をあとにする3人――。


そんな中、優愛は一人、静かに覚悟する。



多鶴子さんと別れ、私はフェリー乗り場で多鶴子さんと話していた時の事を思い出していた…。リサちゃんと翔馬が散歩に行っていたときの事だ。


――「そう…優愛ちゃんもいろいろと大変なのねぇ…」


私は多鶴子さんに私の現状を伝え、旅をしている理由を話す。


「みんなそうなのかもしれないけど…だから学校にも家にも、居場所がなくて…でも、本当は分かっているんです。逃げても何も変わらないこと、さっきも話しましたけど、麻衣子さん、私の新しいお母さんもとても優しくはしてくれるんです…それでも、それが本物だとは思えなくて、そんな私が嫌で…その、向き合う決意ができるまで、翔馬に連れていってもらおうと…やっぱりわがままですよね…そんな理由…」


そう聞く私に多鶴子さんは「そうかしら?」と言って、


「でも、とても辛かったのでしょ?それが苦しかったのでしょ?優愛ちゃんはそれが嫌だったんでしょ?それを、翔馬くんに話したとき、彼はどんな顔をしてどんな声で答えた?…きっと、あの子はあなたの、その人知れずつけてきた心の傷に気づいて、手を差し出したはず。だから、今優愛ちゃんがここにいる。それはつまり、そう言う事だと思うわ。逃げてもいいのよ、いつか近いうちに、それと向き合わなきゃならない、でも恐い…。そう思う事って、当たり前だし…何よりもあなたが頼る事のできる人と出会えたと言うことが一番、大きな事よ。そんな優愛ちゃんをわがままだと言う人は、ここにはいないわ…ふふふ!安心しなさいな。それに、私だって私のわがままでみんなに来てもらっているでしょ?…だから、いつかそれを返そうと思うし、お互い様なのよ、ね?だから、大丈夫。大丈夫よ、優愛ちゃん。」



そう言って凹んで下を向いている私の頭を撫でてくれる。


私は、この数日間、どれだけ人に迷惑をかけただろうか?どれだけ救われただろうか―?


翔馬の後ろに乗って、色々な景色を眺めた。色々な場所を見せてもらった…彼の後ろにいると、すごく…安心した。


周りを眺めていれば、前を見なくても先に進んでくれる…だから、見たくないものから守ってくれているようで――。


そんなことを考えていたら、呼ばれていることに気づく。



「……あ、おい、優愛!」


「へ?」


「おまえ大丈夫か?」


また「大丈夫か?」と聞かれてしまった…。はは、私は考え事をすると、なかなか現実が見えないらしい。


「うん、大丈夫。ありがとう」



私は、大丈夫だ。大丈夫…!多鶴子さん、私はたぶん、大丈夫だ。


お別れは悲しいけれど、寂しいけれど…私はこの薬師丸 多鶴子と言う人に出会ったことを忘れたりはしない。


多鶴子さんが、勇気をもらったと言ってくれたが、本当にお互い様だ。私も彼女に、勇気をもらった。そして、この数日で出会いと、別れを繰り返して分かったことがある―。


「翔馬!私ね、分かったことがあるの!」


「どうした?急に…」



イチョウをあとにして、バイクへ向かいながら話しかける。



「"寂しい"を沢山集めると、"会いたい"に変わるんだ!」


「…は?どういう意味だよ」



「…韮崎、あなた大丈夫?ほんと大丈夫?」




二人は呆れたような顔をする。でも、私は笑って言う。



「いいの!いつか二人も分かるよっ!私の言いたい事っ!えへへ!」



「「はあ?」」


――沢山、麻衣子さんからメールがきていた。


『早く、帰ってきてください。寂しいです。』


本当だろうか?取り繕ったような言葉ではないだろうか?そう考える私は臆病だろうか?疑り深い変なヤツだろうか?


でも、どう思われようと構わない。もう少しだ。ほんとに、もう少しで心を決める事が出来そうな気がする…。


「あ…」


「ん?今度はどうした?」


「ううん、なんでもない!


――いや、本当はもう、決まっているのかもしれない。


人は人を傷つけて前に進む、それもきっとお互い様で、そしてその傷を埋めてくれる誰かに、いつか出会う―。


それは、今日かもしれない


それは、明日かもしれない


もう、出会っているかもしれない


そして、人はその人を"居場所"と呼ぶのだ。嘘偽りない、その自分が許される場所を、その人を信じているのだ――。



あとで、話すよ!」




【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!】



















次回【優しさと愛のその先に②】


時は来たれり。


またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん

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