イチョウの下で会いましょう⑯
大分の温泉を満喫した翔馬達、いよいよ宮崎県へと足を進める――。
おじさんとの会話を終えて、待ち合わせ場所へ向かう。すると、集合場所のベンチに腰かける優愛とリサに二人組の男性が話しかけている。
「お姉さん、どっからきたの?その金髪本物?マジ綺麗なんだけど!」
「君、可愛いね!なんか事務所とかはいってんの?」
優愛はスマホをいじり、リサは迷惑そうに男どもを睨む。
「ねえ、可愛い方のお姉ちゃんこっち向いてよ」
「俺金髪のお姉さんがいいわ!おっぱいでかいし!」
俺はそこにつかつかと歩いていき声をかける。
「なぁ、その二人、俺のツレなんだけど。」(低音)
すると男の一人が振り返り、俺の頭の先から爪先までを見て、勝手に俺と言う人間を判断して言う。
「は?邪魔すんなや、今俺らが話してッから!ツレとかしらねえし、ねえ?お姉さん達こいつしってんの?」
するとスマホを触っていた優愛が顔をあげて俺見る…と、土産屋にいたらしい多鶴子さんがでてきて、リサと優愛に声をかける。
「おまたせ、二人とも…あら?この二人はどなたかしら?」
行きなり現れたおばあさんに少し驚く男二人。
「え、家族旅行なの?」
すると多鶴子さんは笑顔でこう言う。
「そうなの。私の"孫達"に何か御用かしら?」
すると、男達は「あ、いや。家族旅行なんすか。」と言って「楽しんでください」と、先ほどとは、いたく違う態度になりその場を去っていった。とたん、優愛が「っぷ!」と吹き出し俺を見てケラケラと笑だした。
「翔馬、完全に舐められてたよね」
「あいつ、人を見かけで判断しやがって。」
「でも、堂々と向かっていくところはかっこよかったよ!ありがとう!」
ちょっと照れる…。まあ、実際あそこで負ける気は更々ないのだが…、今回は多鶴子さんに花を持たせようじゃないか。そんな事を考えていると、リサが多鶴子さんに言う。
「多鶴子、アナタの笑顔、目が笑ってなかったわ…」
「ふふ、バレちゃった?」
「バレバレよ!ふふ!」
まあ、何にせよ何事もなくて良かった。そう思った矢先、今度はリサが俺に言う。
「翔馬、アナタはもう少し早く来なさい!あんなやつら、アナタならすぐでしょ!」
「かたじけない。」
それを聞いて多鶴子さんと優愛は興味ありげに俺に質問する。
「そう言えば、昔、リサちゃんのために喧嘩したことあるんだよね?翔馬って強いの?…その、失礼かもだけど見た目は細いから…」
「そうねぇ、見た目は少しやんちゃそうだけど…体つきは…」
お、この二人も見た目で俺を判断しているのか…。仕方ないなぁ、仕方ない。
「まあ、強いかはわからないが、たぶんさっきの二人くらいなら負けないぞ」
「そうなの?」
「ああ。」
「翔馬はこう見えて、昔からボクシングをしているのよ。おじいさんにずっと鍛えられていたもの。」
「えええ!?そうなの!…見えない。」
「実話腹筋割れてるわよね」
「まあな」
そう言ってTシャツをめくる。
「わあ!ホントだっ!すごいね!触っていい!?」
昔から思うが、何故女性はわれた腹筋を触りたがるのか…。と言いつつも触らせる俺も俺だが。優愛の手が触れる…ひんやりとしている。
「…かたいね。」
まあ、そうでしょうね…。すぐに手は離れる。ひんやりが名残惜しい。すると多鶴子さんも触りたいらしく、俺は「どうぞ、どうぞ」と快く触らせる。
「あら、ホント。かたいわね、ふふふ!なんかちょっと恥ずかしいわね」
今度は温かい手だった。それもすぐに離れる。むぅ…名残惜しい。そう思って、俺は人にうえているのだろうか?とか、考えてしまう。そんな風に別府を満喫した俺達はいよいよ宮崎を目刺し出発する。
【宮崎県】は、日本の都道府県で九州地方の南東部に位置する県である。1960年代は、日南地方を中心に、新婚旅行のメッカであった。【Wikipediaより】
また県のキャッチコピーが『神話の古里』と言うだけあり、日本の神話に出てくる神様の降り立った地とも呼ばれている。その他にも、天候にも恵まれており、有名プロ野球チームやサッカーチームのキャンプ地としても知られる。【ココペディア調べ】
大分をくだっていき、俺達は途中の道の駅にはいる。そこを今日の宿泊先にすることにする。道の駅とキャンプ場が一緒になっており、食事処もある。が、とりあえず自炊する。理由は簡単、低コストだからである。
みんなで晩ごはんの支度をし、みんなで食べる。本日のメニューは、焼そばと、簡単な焼肉である。わりとガッツリだが、多鶴子さんたっての希望によりそうなった。
例によって、俺はテントを、女性陣が料理を担当する。テントをたて終えた俺は、日の沈んで夕焼けと夜の真ん中の空を見ながら、虫の声を聞きつつ女性陣のもとへと向かった。
到着すると三人は笑顔で出迎えてくれ、美味しそうな匂いと、炭の炊ける匂いとが鼻をくすぐる。それから焼そばをみて
「おお…うまそうだな」
「当然!多鶴子が全力で作ったもの!」
「いや、おまえなにしたんだよ」
「これよ。」
ペガサス(グリフォン)の林檎を見せてくる。こいつ、いつもこれ作ってんな。まさか邪魔とかしてないだろうな…?すると、優愛が「はい」と言ってよそったご飯を渡してくれる。
「ありがとう」
「えへへ、今日は私が炊いてみました!多鶴子さんに教わったんだよ!おいしい炊き方!」
「ふふっ!優愛ちゃん上手にやったからお米がたっているのよ?」
「私だって今日は前回より上手にできたわ!」
「ペガサスな。」
「違う!グリフォンよ!」
「いや、どうみてもペガサスだからな?」
「違う!韮崎、あなたもいってやりなさい!」
「…リサちゃん、ごめん。ペガサスに見えちゃう」
「オウマイゴッ!アナタ達正気!?」
「まあまあ、はいはい、ご飯が冷めないうちに食べましょうね!」
「「はーい」」
こんな感じに夜は更けていく。月明かりに照らされ、焚き火の残り火が煙をたいて、空へと上る。その煙を眺めながら下らない話に花を咲かせ、その夜を笑顔で彩る。笑い声は焚き火が消えるまで続き、俺達は眠りについたのだった。
【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!】
それでは皆さん、イチョウの下で会いましょう。
またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん




