イチョウの下で会いましょう⑮
四国から九州へと渡った仲よしカルテット。
物語は章の終盤戦にはいる前の休息へ――。
電話をきり、なんとなくフェリーの入り口を見る。今は航海中の為、閉ざされているが、次に開かれるときは九州の景色が広がることになる。
「同じ扉なのに、まるで何処でもドアだな…」
そんなことを呟いて、客室に戻ろうと振り替える。すると、優愛が駐車場へと来ていて、こちらへ歩いてくる。
「翔馬!なんでこんなとこいるの?電話したけど繋がらないし」
「ん?ああ、電話してたんだよ…あれ?でもキャッチなんかはいらなかったけどな?」
「え?私翔馬にかけたと思ったんだけど…」
と言いながらスマホを取り出して画面に視線を落とす。そんでポチポチと操作して発信履歴をみる。すると
【祥子】とかかれている。
「いや、おまえガッツリ間違えてんじゃねえか」
「・・・。」
「これ友人かなんかか?」
「いや、昔のバイト先のおばちゃん」
おおう…だいぶ遠いとこにかけたね。おばちゃんビックリしてるねそれ。まあ、たまにやりそうになるけどね。
「まあ、なんだ。どんまい」
「あとでメールで謝ろう…」
おっちょこちょいと言うか、なんと言うか。まあなんにせよ別段気にする必要は無さそうだ。
それからようやく、九州が見えてくる。船の先に立ち、四人でそれを眺める。
「とうとうきたか。」
「おお…うまいものしかないと言われる大陸だぁ…」
「ふふふ、言葉が関東なんかとは全然違ったのを覚えているわ…昔、福岡に行ったことがあるのよ」
「多鶴子、あなたいろいろなところにいっているのね」
「年だもの、でもアナタ達との旅が、一番わくわくするわ」
そうだよなあ。多鶴子さんなんやかんや超高齢者だもんな。てか、よく、弱音ひとつ吐かずにこれたもんだ。サイドカーとはいえ、跳ねるときは跳ねるし、腰だって痛かろう…。やはり、昔の人は辛抱が上手で根性があるのだろう…。そんな風に思いながら多鶴子さんを見つめると、多鶴子さんがそれに気づき、声をかけてくる。
「あら?どうしたの?隣に綺麗な花が二つも咲いているのに、こんな、枯れた落ち葉みたいなおばあさんを見つめて」
「…そんなことないですよ、落ち葉だって充分に季節を彩るじゃないですか。多鶴子さん、素敵ですよ」
狙ってない。が、言い終わって優愛や昨日多鶴子さんがいっていた、"クサイセリフ"が頭をよぎり、皆からちょっと顔をそらす。
「あら、まあ!ふふふ、ありがとう翔馬くん」
そういって、ニコニコと笑った。俺は恥ずかしくなり話題を変える。
「にしても、いよいよですね。」
「そうね、錆び付いた約束を"動かし"にいかなくちゃ…」
そう呟くと、多鶴子さんは九州を見つめた――。
さあ、それからまたも下船を始める。各々がしっかりと準備を済ませて、大分県に降り立つ。
【大分県】は、日本の都道府県の1つで、九州地方の東部にある県である。【Wikipediaより】
また、言わずと知れた温泉県であり、源泉数、湧出量共に日本一を誇る。また、別府や由布院と全国的知名度も高く、日本だけならぬ世界から観光客が訪れる。さらに、地熱発電でも日本一である。【ココペディア調べ】
さて、到着しました九州地方。四国の残り2県はまたの機会にでも訪れることにする。大分県は現在目的としている宮崎県の北に位置するのだが、バイクであと2~3時間も走れば宮崎県か…。
多鶴子さんは、もしも約束を果たしたらどうするのだろうか?なんとなく、気になるので、聞いてみることにする。
「多鶴子さん、もう少しで宮崎だけど」
「そうね、とうとう…来ちゃったわねえ…」
すこし遠い目をしてる多鶴子さんにそのまま聞いてみる。
「もしも、約束をはたしたとして、それからどうするんですか?」
「そうね、たぶん帰ると思うわ。電車と、飛行機と…私の日常へ、そう考えると、私の旅もあと少しなのね…」
そう言うと少しだけ寂しそうに笑った。
やはりそうか。正直このまま、連れて回るのは難しいだろう。だが、何とも言えない気持ちがこみあげてくる。離れたくはないし、でも現実もみなくちゃいけない。考えることや思うことは沢山あるけど、とりあえず今は多鶴子さんとの旅に集中しよう。そう思った。
それから、大分県をバイクで走る。わりと山道が多い気がする。しばらく走っていると硫黄の匂いが鼻をつく。始め卵が腐ったような匂いに少し戸惑うが、硫黄だと気づくと不思議と嫌じゃなくなる。てかむしろ、少し癖になるような匂いである。せっかくなので、別府温泉を堪能する事に――。
例によって待ち合わせ場所を決める。土産屋の横にあるベンチに集合場所を指定し、温泉へと向かう。途中、"湯の華"を作っている過程が見れる施設を覗いてみる。昔ながらの藁葺き屋根が乗っかっているその施設の中には、木の柵がしてあり、まわりにも藁がしかれ、その上にミョウバンのようなものが散らばっていた。
「これが湯の華ってヤツか…」
「なんか、塩みたいだね」
「塩と言うよりはミョウバンじゃないかしらねぇ?」
「すごいわね、キラキラしていて素敵じゃない?」
そんな感じで施設を後にする。それから、そのままみんな温泉へと歩いていった。俺が風呂にはいると、年輩の人が入ってきて話しかけてくる。
「ああ~しみる~」と言いながら俺をチラ見し
「兄ちゃん、どっから来なったとね?(※兄ちゃん、何処から来たの?)」
と聞いてきた…。どこから来たのかと言うことだろうか?今まではお店の言葉ばかりを聞いていたので、イントネーションや言葉の節々の違いだったが、九州にくるとガッツリ変わった。
「ええと、埼玉です」
「まこつな?そら、えれぇ遠いとッから来たっちゃなぁ~?(※本当に?それはえらく遠いところから来たんだな)」
???…おぅけぃ。落ち着け俺、誰か通訳を頼む。
「ええと…おじさんは何処から?」
「俺な?俺はじもっじゃけ、家はちけぇとよな、どっちかつぅと、宮崎よりやっちゃけんな?佐伯ちとこかいきたっちゃわ!ガハハハ!(※俺は地元だからな、家は近いんだよ。まあ大分でも宮崎よりの佐伯と言うところから来たんだ!ガハハハ!)」
「そうなんですか、あははは」
まったくわからねえええええ!所々、聞いてたらなんとなく、言いたいことはわかるが、大分と宮崎しか頭に入らない!とりあえず愛想笑いでごまかす。
「まあ、大分に限らんと九州はうめもんが多いかいよ、はらいっぺくうちかいよ、かいればいいが!な?ガハハハ!(※大分に限らず、九州にはウマイものが多いから、腹一杯食べてから帰ればいいよ!ガハハハ)」
四国のうどん屋での客の会話もたまに分からないところがあったが、やはり九州は、ずばぬけてわからない。東北の方もわかりずらいと聞くが、南にいけばいくほど、北にいけばいくほど、言葉の理解が難しい国なのだと、再認識した日となった。てか、こんな風に直接話しかけられたら会話が成立するかもあやしいな…これ。
そんなこんなで、しばらくおしゃべりして温泉を後にする。最後に年輩のおじさんが
「こげん、くじーおじさんの話し相手になっちくれちかい、ありがとうね!がんばりないね!(※こんなくどいおじさんの話し相手になってくれてありがとうね!頑張りなさいね!)」
「あ、いや、楽しかったです!ありがとうございました!」
確かに分かりづらいかも知れないが、その土地のどくとくの言葉と言うのは、何て言うかとてもトゲがないと言うか、柔らかいなと。そう感じた。
【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!】
いよいよ、九州ですね。1110kmほどでしたか?関東から宮崎まで…。よく走ったなこいつら。そう言えば給油のシーンは描写していないのですが、結構な回数してます。そこまでかいちゃうと、私の物語は今のところ一日、一日で描いているので文字がいくらあってもたりなくなる(´・ω・`)スンマセン
イチョウの話もぼちぼちクライマックスか…。
またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん




