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イチョウの下で会いましょう⑤

ご飯を作り上げ、みんなで食べて雑談をしていると、話は翔馬とリサの話になりーー。

さて、それから見事にリンゴ(ペガサス)はすりおろされて鍋へと投入される。


それから、紙皿にごはんをもり、今しがた出来上がったカレーをそれにかける。鍋をたいているときから食欲をそそる臭いがしていたが、(ふた)を開ければ更にその香りが広がった。


ぐ~っと優愛のお腹がなる。恥ずかしそうにお腹を押さえて「お、おいしそうだね」と照れくさそうに笑った。



「そうねぇ、本当においしそう!ふふ」


「私の…グリフォン(ペガサス)…」


「とにかく食おうぜ、腹へったよ」



そして一同は手を合わせる


「「いただきますっ!!」」



それから食事をしていると、優愛が俺とリサを見て聞いてくる。


「二人ってさ、いつからの知り合いなの?」


そう聞かれ、リサがにんまりと笑いこたえる。


「なぁに?韮崎(にらさき)、気になるの?フフフ」


「いや、宮崎なんですけど…」


すると、多鶴子さんも「私も気になるわねぇ」と言う。


まあ、正直たいした話ではない…と俺は思うが、周りがそんな事を言うもんだから、リサが何故か得意気に話始める。



「私と翔馬はねぇ…


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・



・・・・・・・『10年前』・・・・・・・



ーー埼玉県。



「だからっ!なんで私が日本なんかにくることになったの!?」


ちいさな私はパパへと不満をぶつける。


「ごめんよ、プリンセス…お仕事を日本でしなきゃならなくなったんだよ、わかるだろ?」


そう言うパパへママが言う。


「まぁた甘やかしてっ!リサ!いいかげんわがまま言わないのっ!」


怒るママに反発する私、ひょっとしたら反抗期だったのかもしれないわね。


「ママには聞いてないっ!私はパパに聞いてるのよっ!」


言い争うママと私を見て「あわわわ」とあたふたする私のパパ。


「二人ともケンカはよくないよ!ほら!ニコってして!スマ~イル!!」


「「うっさい!!」」


と私達に一喝されてしまう。その瞬間


「はいすみませんでした、調子のりました黙っときますごめんなさい」と早口で謝るパパ。これがうちのいつもの光景よ。


仕事は出来るけど、気弱なパパ。そんなパパをいつも怒っているママ。そして可愛い私の三人家族で日本に来たの。


イギリスにいる頃からよく家で聞く国だったけど、初めての国だし、学校にも行きはじめていたけど、周りは遠巻きに私を見るだけ。まあ、転校初日にからかってきた男子を泣かしちゃったからなんだろうけど…。それに、あまりこの頃は日本語が上手じゃなかったから、他とのコミュニケーションも自分から避けてるって言うのが少しあったかもしれないわね。


そんなんで、子供ながらにとてもストレスを抱えていたの。


そんな私の唯一の楽しみは散歩だったわ。毎日違う道を歩いて、知らないものを見つけたりするのが好きだったのね。


そしていつだったか、私は迷子になってしまったのよ、それも夕暮れ時で、いつも私の散歩は暗くなる前には家に戻っていたから、暗くなってると、その道が知ってる道なのか、知らない道なのか全然わからなかったの。


そしていよいよ日が沈んで、空が紫色になってきたころ、私は心細いし、お腹はすくし、腹はたつし、友達もいないし、ひとりぼっちだし…とにかく悲しくなって、電柱を蹴って八つ当たりしていたら、小さなつなぎを着て、油にまみれた少年がひとつのバイク屋さんから出てきたのよ。


「なぁ、そんなとこで何してんの?カブトムシでもいるのか?」


それが翔馬と私の出会いだったわ…。


話しかけながら近づいて来た翔馬は、外国人の私を見ても動揺とかしなくて、普通に話しかけてくれたの。まあ、思いっきり日本語だったんだけど、それなのに正直私はイラついていたから、少し冷たくしちゃったの。


「なに?アナタ誰?気安く話しかけないでくれる?」


「え?俺は翔馬、てかおまえ外国人っぽいな」


「ぽいんじゃなくてそうなのよ!てか話しかけないでって言ったのが聞こえなかったの!?」


「おまえすげぇな、外国人なのに日本語しゃべれるのか」


「そっ…そりゃ、、そうよ…」


だって、私のパパは日本人と仕事をすることが多くて、物心ついた頃には、ほぼ毎日家で日本語の話を聞いたもの。それでもわからない言葉は多いし、たまに伝わらないし…


「なんで私がっ…」


考えたら悲しくなってきた…。


すると、全然話を聞いてなさそうな翔馬が、自分のポケットをごそごそとしだして、飴玉をひとつ、私に渡したわ。


初めは、なにこいつ…と思ったんだけど、それを見た瞬間に何故か無性に泣けてきたのよ、別に深い意味とかはないんだと思う。ただ、引っ越してきてすごく気を張っていたし、クラスには馴染めないし、考え事が頭でごちゃごちゃになっちゃったんだと思うわ。しゃがみこんで急に泣き出した私を、翔馬は何も言わず泣き止むまで隣に座ってくれていたの。


それから、落ち着いた私は翔馬にたまっていた物を全部吐き出したわ。たまに変な日本語になっても、理解しようとして聞き返してくれた。初対面なのによ!?それで、そんな事をしていたら、バイク屋さんから翔馬のおじいさんが出てきて、家の電話番号を伝えて迎えを呼んでもらえたの、頼るところがなかったし、お金もなかったからすごく助かったのを覚えてる。


まぁ、それから他に行くところもない私は翔馬の家に遊びに行くことが増えたのよ、私のママがバイク好きで、おじいさんと気があったのも大きいかも知れないわね。


それで学年は違うけど学校も同じだったし、私に嫌がらせをする男の子と喧嘩してくれたこともあったっけ…



だから、私は翔馬が好きだし、翔馬も私が好きだわっ!」



そう自信満々に宣言するリサ。いやまぁ、嫌いではないけどね。



確かに、俺は初対面のリサの話を聞いたし、男の子と喧嘩もした。が、それはリサが俺の服をつかんで離さなかったと言う理由もあるし、男の子との喧嘩はリサが俺の後ろに隠れて、俺がドつかれた為、それに腹をたてたからである。


つまり美化されているのだ、俺はこの事について散々本人に伝えたのだが、謙遜してるのだと思われているらしい。


人の記憶って怖い。


その話を聞いて「そうなんだぁ!」とか「翔馬くん素敵よ」とか他二人に言われるが、ただただ心苦しい…


まぁ、今言うとリサがめんどくさそうなので、後で訂正することにして、「はははまぁなぁ…」と乾いた愛想笑いをしておく。



すると、今度はリサが優愛に俺との出会いを聞き出した。




そして、そこで俺は優愛が帰りたくない理由をはじめて知るところとなったのだった。







【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!】









【次回】


『イチョウの下で会いましょう⑥』


またみてね❗(´・ω・`)✨きゅぴーん

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