それからの事
さぁ、別れの時が来た!
ーーそれから、俺達は時間も遅くなってきたと言うことで、何故か和人のおばあちゃん家に一泊させてもらえることになっていた。
「ごめんなさいね、和人とあの人が、迷惑かけたみたいで」
そう言いながら俺のグラスにビールをそそいでいる女性、名を【橘 由里子】と言う。和人のお母さんである。
そのグラスの中身をみて義和さんがあわてて止めにくる。
「ちょまっ!由里子!翔馬君は未成年だ!」
「え?あら、ごめんなさい私てっきり、、、言わなきゃばれないわよね?」
え?何が!?何が言わなきゃばれないの!?なんでそのままビールついでんの!?由里子さん!?
※翔馬はグラスに口をつけませんでした。
「ははは!翔馬大人じゃん!」と先程まで泣きべそをかいていた和人が言う。
そうこうしていると、先にお風呂を頂いていた優愛が髪をふきながらやってくる。
「あら、優愛ちゃんどうだった?お風呂」
「あ、ありがとうございました。気持ちよかったです!ゆっくりできました!でも、良かったんですか?私が先で」
そう言うと、和人と絡んでいたおじいちゃんが言う。
「おお!えぇに決まってるじゃないかい、若い女子のあとの風呂のほうが、ワシはええ!」
海○王に、俺はなる!みたいに言うな。話をしていてわかったが、このおじいちゃん。エロである。さっきも女の子の胸の話とかばっかだったしな…このじいさん。ったく…俺は好きだぜ!
そんな事を考えていると、じいさんが俺に風呂にいくように指示する。
優愛の後のお風呂か…ムフッ
そう思って優愛をチラ見すると何故かジト目で見られている。何故だ!まさか、こ、心の声が聞こえるのか!?
「なんか、やらしいこと考えてない?」
「おまっ!バッカおまえ!そんな、おまえやらしいなんておまえそんな……考えるわけ…!おまえ…すんません少し考えました(´・ω・`)」
「正直でよろしい。煩悩を振り払って向かうように」
「了解であります…大佐!」
そんな一連のやり取りをみて和人が言う。
「二人とも何やってんの?」
なんだろう?ちょっと恥ずかしい。
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ーーそれから、俺はお風呂をいただいて、部屋へと戻る。
そこには、由里子さんと和人のおばあちゃんで作ってくれたであろう料理が並びはじめていて、お刺身に煮物、手羽元の唐揚げやこれは、なんの魚の南蛮だろうか?なんにせよ食欲をそそる。
「うっわうまそっ!」
それ聞いて優愛も「ね!おいしそう!」と笑顔を見せている。
和人は疲れたのかおじいちゃんの膝に頭をのせて寝息をたてていて、それを幸せそうに由里子さんが眺めていた。
義和さんもおじいさんの横に座り、やはり和人を眺めている。
一瞬の出来事だったが、俺は心底、この光景がずっとこの場所で続けば良い。そう思ったのだったーー。
それから、少しして和人も起き、みんな風呂を浴びたりしてテーブルにつく。
すると、和人のおじいちゃんが
「翔馬くん!優愛ちゃん!これもなんかの縁!こんなもんしかないが、たらふく食ってくれ!おっぱーい!(乾杯の意味)」
とその後おばあさんと由里子さんにボロッカスに叩かれる挨拶から宴が始まった。
その日の夜は本当に楽しくて、質問攻めにあったりなんかして、まぁ、主に日本一周をするきっかけなんかを聞かれた気がする。もちろん、両親についても聞かれたのだが、、、そこは二人とも何となくはぐらかしてしまった。
そんな中、1つの質問に俺と優愛がかたまる。
それは、由里子さんからの質問だった
「ねぇ、二人は付き合ってどのくらいなの?」
そう聞かれたとたんジュースを飲んでいた優愛が盛大にムセかえる。
「んごふっ!げほっ!げほっ!」
それをみて由里子さんが笑いながら背中をさする
「ちょっ、どうしたのよ!ふふふ!大丈夫!?」
「す、けほっ!すみません、ちょっとビックリして、鼻にはいっちゃた」
そう言って、ちょうどおばあさんが持ってきたティッシュペーパーを受けとる優愛。
まあ、正直俺達の関係を聞かれたら困ってしまう。だって別にカップルと言うわけでもなければ、友人と言うわけでもない。
ただの行き当たりばったりの二人組なのだ。
「ああ…」
俺達が答えにつまっていると、和人のおじいちゃんが言う。
「馴れ初めなんてどうでもいいじゃろうて、大事なんは今、彼らが思うこと。どんな関係だろうと、側にいると言うことが大事なんじゃねぇのか?」
おお、意味わかんねえけどじいさんが言うと説得力半端ないなマジで。
「それもそうね」
俺にはまだよくわからなかったが、由里子さんには納得できたらしい。そして、そんな感じに夜はふけていったーー。
夕食も終わり、歯を磨いてから「寝室に使って」と言われた部屋にいく。
そこには、ふとんが2枚ピッタリとくっつけておかれていて、先に戻っていた優愛がその上に座っていた。
「あの…布団が…」
俺がそう言うと優愛は少し困ったような顔をして
「ええと、『二人は部屋は一緒でいいわね?仲良くね!』って言われて…泊まらせてもらう手前、断りずらくて…」
なるほど、そう言うことか…。
「おまえは良かったのか?俺と一緒で」
そう聞く俺に少し困った顔をして
「正直、今更って感じかな?」と笑った。
それから二人とも布団(俺が気になるから少し離した)に入り、今日あった事を話したりして眠りに落ちていくのだったーー。
ーー翌朝
結局、昨夜は優愛から何かを俺に話すと言うことはなかった。
ただ、朝聞いてわかったのだが一応お父さんには電話をかけ直したらしい。結果は"でなかった"との事だが、まあまた何かあるようならかかってくることだろう。
それから、今日は飛行場にいくと言うこともあり、朝早くから荷物を積み込みをしていると、由里子さんとおばあさんが朝食にとお握りを渡してくれる。
「ああ、すみません。ありがとうございます、あと朝早くからガチャガチャしてすみません」
「いいの、いいの、大変なのねぇ」とおばあさん。
すると、支度を済ませた優愛と寝巻き姿の義和さんが玄関を出てきて言う。
「行くのかい?」
「はい、短い間でしたが、お世話になりました。」
「いやいや、こちらこそ…」と謙遜する義和さんと握手をする。たった2日。それでも、とても長かったような感じがする。
さぁ、お別れの時である。
朝早く出発する事を選んだのには理由がもう1つあったのだが、、、
そのもう1つの理由が玄関から出てきてしまう。
俺と優愛は声をかける。
「おう、和人、おはよう。」
「和人君、お、おはよう」
「・・・。」
和人は由里子さんの足にしがみつき少しだけむすっとしていて、こちらを見ようとしない。
「ええと…和人、あのな」
俺が説明しようとする前に和人が
「行っちゃうの?…」
と震えた声でゆっくりと言った。
「ああ」
「また、遊びにきてっ…くれる?」
和人は目に涙をため、それを悟られないようにがんばりながら、話をしている。
だから俺と優愛は気づかないフリをして言った。
「ああ、来るよ」
「うん来るよ、かならず!」
「ほんっ、とに?」
「ああ。」
「ほっ!…ほんとのほんと…っ?」
「ああ。約束するよ」
「わかっ…た…っ!」
一生懸命、涙を堪えて話す和人。
「良い子だ、和人。元気でな!」
そう言って和人の頭を撫でる。
すると、少年は腕でごしごしと目をこすって
あの元気な声でニッと笑っていってくれた。
「翔馬!優愛!
その時、俺は誓った。きっと忘れないと。この、小さな勇者を…泣かない少年の事をーー。
またネ!!」
【日本一周の旅にでたら、家出少女ひろった!】
翔馬と優愛が、バイクに乗り出発した後、和人は堪えていた涙を流した。
それを由里子が慰める。
「ううぅっああああああっ!うっ!しょ、翔馬もっ!ゆっ!優愛もぉっ!うぅ~ッ!いっ、、、いっぢゃったっ!うっうっ」
「ああ、はいはい、また来てくれるって言ってたから!ね?和人が泣いてたら二人に笑われちゃうよ?ね?」
「うぅ~ッ!うっ!」
「そうだぞ、和人!男の子はなんだった?」
「うぅ~うっうっ…な、泣がないっ!!…ひっ!うっ!」
そんな話をしていたら義和さんのスマホがなる
「もしも、、、、はい。え!?本当ですか!!でも、はい!はい!」
「あなた、どうしたの?」
「昨日、始めに来たとき話しただろ?仕事をやめた事を謝った後に、駄目もとで行った有名デパートに入ってるパン屋の面接の話!」
「え?ああ、言ってたわねそんなこと、、、え?まさか」
「受かったんだよ!あそこなら給料も申し分ない!年齢的に無理だと思ったのに!はは!何て事だ!」
義和はそう言って、泣き止みポカンとほうけている和人を抱き上げる。
「和人!お父さんな!夢への第一歩を踏み出したぞ!ははは!!」
そんな二人をみて、由里子は微笑み…はしゃぐ義和の肩を叩いて言った。
「もう、勝手にやめんなよ。」(低音)
「は、はい…」
~お・し・ま・い~
和人と義和さんとの旅はこれにて終了となります。
ですが、翔馬の旅はまだ始まったばかりです。
引き続きお付きあいのほどよろしくお願いいたします❗
【次回】
『イチョウの下で会いましょう。①』