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私が見た夢

送り火

作者: 東亭和子

 こんな夢を見た。


 私は一人の娘であった。

 幼い頃は祖母と共に島で暮らした。

 今は大学へ行くために島を出ている。

 毎年、お盆の時期になると島へと帰った。

 それは大切な人と出会うためだった。

 船から下りる。

 すると懐かしい声が聞こえた。

「おかえり」

 私はこの声が好きだった。

 大好きな幼馴染が微笑んで立っていた。

「ただいま」

 私が笑うと彼は手を差し出す。

 その手に触れると安堵する。

 そうして私達は手を繋いで歩いた。


 一年に一度の短い逢瀬。

 まるで織姫と彦星のよう。

 そう言うと彼は寂しそうに笑った。

 あと一年。

 そうしたら卒業する。

 島へと帰って来れる。

「もう戻って来なくていいよ」

 彼はそう告げると首を横に振った。

「…どうして?」

「知ったのだろう?」

 悲しそうに彼が言う。

 私は認めたくなくて視線をそらした。

 視線の先には送り火が赤々と燃えている。

「何のこと?」

 私は嘘をついた。

「もう一緒にはいられない。さよならだ」

 彼は困ったように微笑んで告げた。

 嫌だ、と思った。

 だから私は彼にしがみついた。

「嫌!逝かないで!」

「もう無理なんだ。ごめん」

 そう言って優しく私を抱きしめると彼は消えた。

 

 彼が事故で亡くなったのは半年前だという。

 私は祖母からの電話で知っていた。

 だから今年は会えないことを知っていた。

 でも彼は現れた。

 いつもと同じように会いに来てくれた。

 お盆だから、帰って来てくれたのかな。

 そう思って悲しくなった。

 大好きな人はもういない。

 私は一人泣いた。


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