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私はそんなキャラじゃない~どうしたら、いいですか?~  作者: 増田みりん
恋人がドMなんですがどうしたらいいですか?5題
5/7

面倒になったら、5.放置プレイはいかがですか

VS アシュレイ&イーノス

 私は図書室でゆっくりと読書をするつもりだった。

 そのつもりだったのに。


「アシュレイ、エドナに近寄らないでくれないか」

「俺はエドナ様の従者なので、近づかないと仕事になりません。そんなこともわからないんですか?」

「そうか。ならば今日限りで従者を辞めてくれて構わない。私が許そう」

「申し訳ありません。俺はエドナ様にお仕えしているので、殿下の許可は要りません」


 …殿下とアシュレイは今日も絶好調で舌戦を繰り広げています。

 もう勘弁してよ…ここ図書室ですよ。静かにするとこですよ。

 私はため息を堪えて、じろりと殿下とアシュレイを睨む。

 だけどこれは二人にとってご褒美となるんだろうなぁ。

 だってほら。二人の目がキラキラと輝き出した…。


「ああ…エドナ様のその冷たい目…癖になりそうです…」

「君にそんな目で見つめられるたびに私の鼓動が速くなる…」


 ……もう、本当にこいつらなんとかして。

 私には手が負えません。


「殿下、アシュレイ。ここは図書室ですから、静かになさって」


 冷たい声音で言ったのに、殿下もアシュレイもとても嬉しそうな顔をして頷く。

 そして互いの顔を見合わせて睨み合った。

 ……だめだ、こいつら。


「私の婚約者を厭らしい目で見ないでほしいな」

「俺のこの目のどこが厭らしいと?」

「全部に決まっている」

「殿下の目がおかしいのでは? 医師に診て頂いた方がいいんじゃないですか?」

「…なんだと」


 またしても舌戦を繰り広げ出した二人に呆れ果てた私は黙って二人の傍から離れる。

 ゆっくりと読書なんてできそうにないし、部屋でゆっくりしよう。

 殿下とアシュレイは放っておく。とてもじゃないけれど、あの二人は私の手に負えない。

 お二人でごゆっくりとお喋りをしていてください。


 私が二人を置いて歩いていると、背後から私の名を呼ぶ声が二つ響く。

 だけど私は無視した。ここで振り返って足を止めようものなら、二人の間に挟まって面倒くさいことになるというのは毎度のお約束事だからだ。

 だけど、女性と男性の歩幅は違う。なので、殿下とアシュレイはあっと言う間に私に追いついた。

 ……一生追いつかなくて良かったのに。


「エドナ! 無視をするなんて、酷いな」

「エドナ様、俺を置いていかないでください! 殿下はともかく」

「なんだと」

「なにか問題でも?」


 …そうか。無視してもしなくても、結局私はこの二人の間に挟まれる運命にあるのか。

 そんな運命なんて溝に捨ててしまいたい。


「…お二人とも、いつまで醜い争いをわたくしの前で繰り広げるおつもりなの?」


 冷たい声が私に口から零れ落ちる。

 あ。やばい。また始まった…もう本当になんとかして、この口。


「耳障りだわ。わたくし、耳がおかしくなってしまいそう」

「も、申し訳ありません、エドナ様…!」

「……やはりエドナに罵られるのは…」


 …アシュレイの反応はいいとして、殿下の反応はいかがなものでしょう。

 正真正銘の変態とは殿下のことを指すに違いない。


「わたくしの耳がおかしくなってしまったら、どう責任を取るおつもり? 本当にどうしようもない方たちね…」

「エドナ様…」

「エドナ…」


 期待したような眼差しを私に向けるアシュレイと殿下に、私は内心ドン引きしているのに反して、表情が勝手に動く。口角を上げ、扇を開いて口元に寄せてその笑みを隠す。

 しかし、目元が愉快そうに下がるのを押さえることができない。どうなっているの、私の表情筋は。


「お仕置き…ですか?」


 きらきらとした瞳でアシュレイは私を見つめた。隣の殿下も同じような瞳で私を見ている。

 ……本当にこいつら、どうしようもないドMだな。


「そうね。あなたたちには、お仕置きが必要ね…」

「…一体何をする気なんだ?」


 声音こそいつもと変わらないけれど、殿下のその表情は緩んでいる。

 そんなに私にお仕置きされたいのか…。


「そうねぇ…」


 私がわざとらしく視線を彷徨わせたのち、開いた扇をたたみ、にっこりと淑女らしい笑みを浮かべた。


「何もしないわ」

「えっ!?」

「な…!?」


 驚愕に目を見開く二人の様子に、私はとても満足した。

 そして「それではごきげんよう」と二人の間をすり抜け歩く。

 私を追いかけてくる気配はない。どれだけショックを受けているんだろう…と思いながらも、私は二人を放置して歩く。

 ああ、一人の時間って素敵…。


 しかし、残念なことに、二人は回復をしてしまったようだ。

 またしても私に追いつき、私の行く手を二人して阻む。


「エドナ様!」

「エドナ」


 二人揃って私の名を呼び、そのあとに互いを睨む二人に私は呆れた視線を送った。


「……まだわたくしになにかご用かしら?」


 そう話しかけると二人は睨み合いをすぐにやめて、とても嬉しそうに私を見て同時に口を開く。


「エドナ様! 放置プレイというのも、結構イイですね!」

「あの状態の私たちを置き去りにするエドナは流石だな」


 興奮した様子で告げる二人に私は今度こそ閉口した。

 ……なにも堪えていない。

 放置プレイをすれば少しは堪えるかと思った私が甘かった。

 二人は正真正銘のドMだ。


 説明してもわかって貰えず、頼んでもやめて貰えず、面倒になって放置したらしたで喜ばれ……。

 まさに打つ手なし。お手上げだ。


 私はいったいどうしたらいいんですか。

 誰か教えてください!!




これにて、お題一つ目終わりです!

次からはアシュレイと殿下の双方の視点でのお題挑戦となります。

あと5題ほど、お付き合い頂けたら嬉しいです。

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お題お借りしております
確かに恋だった

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