群衆と竹刀
すべての式が終わり、俺は席を立った。
校舎の外は、新歓活動をしている在学生で、ものすごい人だかりができていた。
(早く帰りたいけど…面倒だな。)
この服のせいで、異様に目立ってしまう。
「あ!今年の主席来たぞ!!」
群衆が一斉にこっちを向く。
(めんどくさい…俺はもう部活決めてんだよ……)
「背、高いね!バレー向いてると思うよ!」
「囲碁部でその頭使ってみないかい?」
「スタイルいいし、ダンスやったら絶対かっこいいよ!」
ああ。
なんでどいつもこいつも、
俺のこと何も知らないくせに
見た目や成績で判断するんだろう。
その時。
「君、部活決めてる?」
背の高い女性に引き止められた。
「はい、すみません…あっ……」
その人は、竹刀を手にしていた。
いた…
「これからよろしくお願いします。俺、剣道部に入るって決めてたんです。」
やっと見つけた…!
女性の顔がパッと明るくなった。
「あら、そうだったの!嬉しい!!ありがとう!じゃあこれ、部活の予定だから、本新歓までひと月くらいあるし、良ければ見に来てね!」
B5の用紙をそっと差し出し、彼女は帰っていった。
(よかった…探してたんだよな……)
予定表をしっかりと握り締める。
しかし。
龍にはもう一つ気になっていたことがあった。
(あの人は……何部なんだろう…)
龍の頭には、あの女性の美しい歌声が染み付いていた。