一目惚れと姉
会場が静まり返った。
「私たち、2856名の新入生は、白凛館大学の学生となることに誇りを持ち、勉学に励み…」
爽やかな声が、ホールにこだまする。
学長の方を向いているので、私たちには後ろ姿しか見えなかったが。
「新入生、起立」
全員がバタバタと席を立つ。
「礼」
そして、彼が振り返った。
会場が一斉に女子の歓声に包まれた。
彼は、すごく、ものすごく美青年だったのだ。
男性に興味はほとんどなかった。
はずだった。
けれども、彼から目が離せなかった。
「…あれはもう、モテモテだろうね…ほんと、あんだけイケメンで主席とか、恵まれすぎてるでしょ…」
ユウの言葉で、わたしは我に返った。
「あれ?エリカもしかして惚れちゃった??」
「えっ!?いや、そ、そんなわけ…」
ほ、惚れた…!?好きってこと??
それって、こんな気持ちになるのかな…??
でも、わたしは…
そう、わたしは………
好きになっちゃダメなんだ。
「…エリカ?」
あ、いけない。思わず黙り込んじゃった。
「あ、ごめんね。ちょっとぼーっとしてた」
「東山くんのことでも考えてたの?」
「ち、違うって…!」
周りの女の子は、みんな東山くん、とか龍様、とかきゃあきゃあ言っていた。
「さぁーて、これは彼が入った部活に新入生集中するパターンかな〜(笑)」
確かに、そうなるかも…
そのあとは、学部ごとに移動して学部長の挨拶があった。わたしはずっとユウと新歓のビラをペラペラとめくりながら他愛ない話をしていた。
ユウが思い出したように言った。
「そういえば、エリカは兄弟とかいるの?」
どくん。
「…………うん。いるよ…。」
にっこり。
ー姉が同じ大学にいるよ、医学科にー
ーそうなんだ!賢いんだねー
ーうん、昔から勉強が得意でいつも成績よかったのー
ーもしかしてー
「一昨年の主席の須宮さんって、エリカのお姉さん?」
どくん。
そうだよ。