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落ちこぼれ魔術師  作者: 滝峰 つづり
落ちこぼれ魔術師の旅立ち
7/43

シロとクロ


 ふぅ、今日もなんとか終わりました。滝峰つづりです。


 これが7話になると言うことはですよ…………私、一週間も連続して作品を出すことができたと言うことです!! こうしてみると早いものですね、もう一週間ですか……。


 あ、今更なのですがブックマークして下さった読者の方々ありがとうございます! 気づいた時のテンション跳ね上がりました(笑)


 そして(ばつ)さん…………、頑張ってください。私から言えるのはそれだけです。


 それではまた!

 ふと、窓の外をみれば空は綺麗なあかね色に染まっている。

「そろそろ日が暮れるな……」

 ぼそりと独り言をこぼした僕が今何処にいるかというと―――まだ保健室にいた。

 かれこれ三時間以上こうして座っている。

 目の前のベッドにはスースーと規則正しい寝息をたてるシロがいて、保健の先生も帰ってくる兆しが見えない。


「……一人で残すわけにはいかないよね」

 因みに現在保健室を利用している生徒は僕ら以外おらず、かなり静かだ。

 シロの寝顔を見ているとあの日のことを思い出す。


 そういえばシロと出逢ってどのくらいになるのかな――




 青い空、白い雲、嫌いになれない若草と土の匂い。いつもと変わらないこの草原。

 出なくても単位をくれる授業にわざわざ出るつもりはなかった。

 今の時間だと多分学園の方も昼休みに入ってるんじゃないかな。僕もそろそろご飯にしよう。

 その辺に無造作に投げてた鞄を手繰り寄せ、中から布で包んだ弁当箱を取り出す。


「あ、今からお昼? となりいいかな?」

 急に声を掛けられ声の方に顔を向けた。

 珍しい白い髪。魔術師である証であるローブも白く、その中から覗く制服からウチの学園の生徒である事が分かった。


 こんなところでわざわざ食事とは、変わった人だな。まぁ、僕が言えたことじゃないけど。


「どうぞ」

 一言そう告げ、自分の包みをほどいた。

 特に話すようなこともなく、無言で食事が終わった。白い髪の女生徒は満足そうな顔で「またね」と残し、学園の方へと歩いていった。


 少しくらい話せばよかったかもと今更ながら後悔し、多分この先彼女が僕のとなりに来ることはないだろうと確信した。

 が、翌週また彼女が僕のとなりに座った。そのときぎこちないながらも少し話をした。

 そのまた翌週、彼女がやってきて学園での話を楽しそうに教えてくれた。


 次に来たのがその三日後、そのまた次が翌日、ついには毎日来るようになった。


「そういえば君はいつもここにいるね?」

 そう白髪の女性から問われた。

「……僕はここでしか羽を伸ばせないからね」

 学園に行けば無形魔術師だからと差別される。学園の領地外に出るには国の許可が必要。まるでかごの中の鳥だ。


「それに、ここで昼寝するのは気持ちいいよ」

 見本を見せるようにその場で寝転がった。目を閉じ、風の音を聞いているだけでも充分気持ちが安らぐ。

 君もやってみたら? そう言おうと思って彼女を見ると、既に実践していた。


「ホントだ。気持ちいいね!」

 弾んだ調子の声に僕も嬉しくなった。

 しばらくそのままですごし、危うく眠りそうになったので上体を起こし、眠気を吹き飛ばした。


「ごめん、うとうとして………」

 あわてて謝罪し、女性に目を向ける。

 ―――スー、スー。


 …………寝てるし。


 起こそうかとも考えたけど、あまりにも幸せそうな寝顔だったのでもう少しそっとしていようと考えた。

 変わった人だなぁ、本当に。


「ん? なんだこれ……」

 彼女の手から紙切れが落ちたのを目にして拾い上げる。

『今日こそ名前を』

 それだけしか書いてなかったが、言いたいことはわかった。今さらだけど僕らお互いに名乗ってないんだ……。


「ん……。あ! 眠っちゃってた!!」

 ガバッと飛び起き、僕と目が合う。

「や、おはよう」

 彼女の目線はだんだんと下にいき僕の手のところでピタリと止まる。

「ぁ、や………そ、それは………」

 みるみる間にゆでダコのように赤くなっていく女生徒。狙ってるんじゃないかってほどのタイミングで目を覚ましてくれるたものだね。

「そういや、お互いに名前は知らないんだよね。こうなることも運命だと思ってさ……、その~……名乗ろうか」


 こくりと女生徒はうなずいた。

「わ、私はシロ、改めてよろしくね――あうぅ、こんな風に名乗る予定じゃなかったのに」

 シロ、シロか……なんというかまんまだな。


「僕はクロ。因みに隠してた訳じゃないけど無形魔術師だよ」

「――ぷっ……」

 急に吹き出すシロ。

「な、なにかおかしかった?」

「いや……ぷくく………ま、まんまだなって………」

「あんたもそのまんまじゃないか!!」

「黒い髪に黒いフード……なのに肌は白に近い…………だめ、お腹が痛い」

 どうやらシロの笑いのツボはどこかおかしいようだ。


 目に涙をうかべるほど笑ったシロは、息を調えてから最高の笑顔で――――




「――クロ」

 名前を呼ばれて懐かしい記憶が霧散していった。

 声の主はいつの間にか起きていたシロ。

「ん? ああ、起きるの遅いよシロ」

「考え事してたの?」

 シロは不思議そうにこちらを窺う。

「いや、ちょっと思い出に(ふけ)ってたんだよ。さて、帰ろうか」

「うん?」

 よくわからないと言いたげな顔をしたシロだが、すぐに帰りの支度を始め、僕が鞄を持つとベッドから降りて軽く延びをした。


「ねぇねぇクロ」

「ん? なに?」

 僕が振り返ると――

「えへへ、呼んだだけ♪」

 あの日のようにかるく舌を出して笑う楽しそうな少女がいた。


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