迷子の白いローブの子
「あれ? みんなは?」
綺麗なアクセサリが並んだショーウインドウに足を止め、つい見入ってしまっていた私は時間にすれば数十秒、……も、もしかしたら二、三分くらい覗いていたかもしれない。その致命的な時間はみんなの姿は人混みの中に消していた。
「ど……どうしよう……じゃなくて捜さなきゃ!」
幸いにも何度かカルノトルには来たことがあるので程度は知れてるけど土地勘がある。たしかこの先にはウンディーネの噴水広場があるはず。みんなはそこで待ってるかもしれない。
確証はないけど私はこの通り真っ白で目立つ。広い場所なら見つけてもらえる可能性も高い。思い立つやすぐさま広場に向かった。
「…………いない」
ざっと見回してみてもクロたちは見当たらない。
あてが外れて少しヘコんでしまう。こんな広い土地で手当たり次第に人探しするのは骨が折れそう。あっちも捜してくれてるだろうしむしろ動かない方が賢明な判断かもしれないよね。
自分に言い聞かせるようにして、とりあえず中央にある観光名所ウンディーネの噴水の縁に腰かけた。
通っていく人を眺めながら自分のやってしまった失態にため息をついた。
「はぁ……」
「お、シロさんじゃないか。今こっちに着いたの? こんなとこで会うなんてね」
「――――っ!!」
突然男性が横に腰かけてきて反射的に距離を置いてしまう。
唐突なだけに頭の回転が止まりかけたが何とか持ちこたえて顔を上げた。
よく見れば同じ学園の制服で顔にも覚えがある。
「あはは、驚かせちゃった? それとも俺のこと忘れたとか?」
ニヤリと笑う男はどこまでも軽薄そうでいて目は濁ったドブ川のよう。その目で会うたびねっとりとした熱視線を向けてくるのだから忘れられる筈がない。ため息は幸運を逃がすってあながち迷信じゃないみたいだ。
「覚えてますよ……ルドロムさん」
ルドロムはもう片方の討伐隊のリーダー。出発前にクロを孤立させようとしてたのは忘れられない。
学園ではくどく話しかけられること数知れず、酷いときは付きまとわれさえした。私の中で出会いたくない人ぶっちぎりの一位。
出発前の件からクロの素性をあちこちで言いふらしてる犯人であることは明白。問い詰めてもしらを切られるだろうけどね。
「こんなところで何してるんだい?」
「少し、私用で……」
「買い物かなにかでしょ。俺も一緒にいい?」
うわぁ……早くどこかいってよ。これでも話しかけないでオーラを出してるつもりなのに……。
「で、ですが旅の服の類いを選ぼうかと考えているのでルドロムさんの時間を取らせるのは悪いですよ」
というより関わりたくないんだけど。
「大丈夫、時間ならたっぷりあるからさ……君さえよければ夜まででも」
――ぞわっとした。
身の毛もよだつとはまさにこの事なのだと今ほど実感したことはない。
しかし、辛うじて笑顔は取り繕えていた。頬がひきつっていないかは微妙なところだけど……。
この危機を逃れられる方法を必死に模索して言葉にする。この際、後のことは考えない。ルドロムを諦めさせる手を尽くす!
「ルドロムさん、できれば秘密にしておきたかったんですけど……私、人を待っているんです」
「ちょ、ちょっと待ってくれよシロさん。それってもしかして……」
「はい、クロです」
ルドロムの眉間にはシワが寄っていた。うかべている表情は怒りとしか取りようがない。
「またあの無形魔術師か……。シロさん、討伐隊の班分けのときなんであんな落ちこぼれを選んだ? 俺の方が絶対強いのに」
「強いだけじゃ駄目なんですよ。――最も、あなたじゃクロの足下にも及びませんけど……あっ!」
クロを貶されて、らしくもなく考えるより先に言葉が出てしまった。慌てて口を押さえるも既に手遅れ、ルドロムの眉間に刻まれたしわは緩むどころか余計に険しくなっていた。
「あのウンディーネの噴水のとこの子じゃねぇか?」
「――おお、そうそうその白い子! やっと見つけたよ……。ありがとおじさん。だけどおじさんも窃盗には気を付けてね」
人混みの中から聞こえてきた声。私がこの声を聞き間違えることはない。この耳に心地いい声音を持つ人は……。
「……タイミング悪すぎるよクロ」
沸き上がる怒りを露にしてるルドロムの耳に届かないようにぼそりとこぼした。
ごめんなさい、私が余計にこじらせちゃった。
どうやら魃さんは本格的に失踪したご様子……あの……その………バトルの行方は?
仕方ありません、いつか帰ってきたとき無理矢理にでも舞台に立たせましょう。
かく言う私も不定期更新になっちゃってますがね(苦笑)
それではまた次回! 滝峰つづりでした。




