目が覚めて
地面が揺れてる……。馬の蹄の音と誰かの話し声。うっすらとまぶたをこじ開けるとアーチ状の骨組みに撥水性のいい革を使った屋根、吊るされたランプ。
どうやら僕は今馬車の中にいるようだ。造りや木の板目などに見覚えがあった。概ね僕らが乗ってきた馬車なのだろう。
さらに情報を求めて目を動かす。
目を伏せてなにかを祈るように手を合わせる少女。珍しい白い髪が光の加減で銀色にも見える。
ふと顔を上げた少女、シロと視線がぶつかった。
シロは始め信じられないと言いたげな顔をみせて、次にぼろぼろと大粒の涙をこぼす。
え、ちょっと対応に困る反応されてるんですけど……。
「フェイ、ディーネ! クロが……クロが目を覚ました!!」
「クロくんが!? クロくんアタシが解る?」
苦笑いして頷く。
「……心配ないと説明したはず。ただ過度な疲労に体が睡眠を強制しただけで――」
「なんだかんだ言って一番おろおろしてたのはディーネだったよね」
フェイの一言にビクンと肩を揺らし、危うく大きな水晶を落としかけたディーネ。言い訳のように早口で捲し立てた。
「……ディーネはそもそもああいう事態は初めてだった自分の役割を探して考え事をしてただけ。別にうろたえてないから…………絶対おろおろしてなかった」
そう意地を張るから余計に子供に見えてくるんだよね。
やれやれと上体を起こし、違和感に顔をしかめた。やけにあちこちが痛い。まるで何日もあの体勢で眠り続けてたみたいに。
「あ、無理しちゃ駄目だよ。なにか食べる?」
馬車の外はうっすらと朝日なのか夕日なのかが見えていた。
「今、どの辺にいるの?」
「にゃ? もうちょっとでカルノトルってとこかな」
へー、カルノトルに………………いやいや少し待て。
「カルノトルって……王都カルノトル?」
「……それ以外にカルノトルという場所は知らない」
え? 僕が意識がなくなったのがヘルブの村でしょ? 休まず馬を走らせても三日はかかる距離なんだけど。
「どのくらい僕は寝たきりだったんだ……?」
「……だいたい七日だよ。もう目が覚めなかったらどうしようって……私」
また涙があふれ出そうになるシロをあわてて励ます。
「泣くことないでしょ? ほら、こうして僕は起きてる訳だしさ」
「それは結果だから……。すごく心配したんだよ、ずっとこのままなんじゃないかって怖かったんだよ、もうクロの声が聞けないと思うと胸が苦しかったんだから。…………ばかぁ……」
結局ぐすぐすと泣き始めてしまったシロ。
僕だって望んで長く寝続けてたわけじゃないんだけどな。でも、相当シロを苦しめてしまったみたい。
「シロ――ごめん、ありがとう」
僕はいつ振りかにシロの頭を撫でた。昔はよくこうしてたのを思い出す。
「ぶーっ、アタシたちも心配したんだけどクロくん」
「ディーネたちにはなにもないの?」
なにもって……何を求めてるのさ。
うわぁ……ぎりぎり間に合わなかった………。




