古代魔術
人は死を確信した瞬間、脳が情報を処理する速度が増して時間が止まったような錯覚を覚えるらしい。
それは架空の物語が書かれた本の中だけでしか起こらない眉唾ものだと思っていたけど、僕は今、身をもって体験している。
体験しているからこそ感じるものがある。流石に時間が止まると言うのは比喩だってことだ。
なぜなら僕の見えている範囲の魔物に動きがあるのを捉えていたから。
極々微少に、ゆっくりと動いている。
僕はすぐにマナの流れを探った。今、まさに僕の命を刈ろうとしている鎌は何処にあるのかと。
マナは答えてくれた。その鎌が降り下ろされる位置は――
――ガキィィィン。
金属が激しく衝突する音と同時に僕の意識は現実へ還ってきた。そして強い力に地面へ思いっきり叩きつけられる。
口いっぱいに土の不快な味が広がるが皮肉にも今はそれでも生きてる実感が湧いてきた。
自然と口元が弛む。
まさか僕にとっての枷に守られるとは思ってなかった。
目が自然と右手に填めていた魔術を抑えてる腕輪へいく。
一部がくしゃりと拉げ、腕の骨もポッキリいっている。
これは不味いな……一難去ってまた一難か。
ギチギチと冷酷に鎌を振り上げる巨大な蟷螂。痛みはないけど指先一つまともに動かない。
…………だめだ……もう、限界。
――抑えきれない……。
まず始めに僕の回りの草が枯れた。
次に土が干からび、そしてただ砂に還る。
――いらない! 欲しくないっ!! こんなマナ……使いたくないのに……!
心の中で叫ぶが無駄なのは自分がよく知っている。
警戒してか、蟷螂は一段と強く鋭い刃を解き放つ。しかし風を切り僕に迫る鎌は無念にも肌に触れる事なく数センチ前の圧縮されたマナに押し返された。
マナはどんなところにも存在していて、どんな生物も元を辿ればマナで出来ている。
僕は少し変わっていてマナを身体に留めておくことが出来ない。けど、その代わりに大気中のマナを集めて魔術を、もっと言えば命を保っていられた。
――でも、そのマナを集める力は成長と共に強まり、自分ではどうしょうもない程にマナを吸うようになってしまった。
僕にとってこの腕輪は魔術を制限するだけの物じゃない、人間として生きていける小さな希望だった。
腕輪が十分な機能を果たせてない今、僕はただの――化物だ。
ボロボロになっていた拳は最初から傷などなかったかのようにきれいに塞がり、腕の骨も既に繋がっている。あれほど乱れていた呼吸もピークだった疲労も、全てが癒えた。
「さすが化物……これが到底自分の体だとは思えないな」
口に入った砂を吐き出して起き上がる。
もう僕が今やるべきことは一つしかない。早急にこの群を片付けて新しい腕輪を取りに行く、それだけだ。
まずはと蟷螂の足元に火柱を出現させて灰燼に還す。
その間もじわりじわりと草花は枯れて土は砂に変わっていっていく。あまり時間がない、数秒で全てを終わらせる。
「無重力空間ッ!」
オルバークたちに一度使った術。ただ今回は規模が違う。
生死問わず眼に映る魔物一切合切集め圧縮し、大空へ持ち上げる。――そうしなければこの平原に大穴が空くことになるから。
必要になるのは無のマナ。基本は魔術に使われることがない不要とされるもの。しかしそれは時として最強と呼ばれる術に使われる特殊なマナ。
「塵一つ残さず消し飛ばす!」
指先にマナを溜める。
一度唱えるだけで戦争を終結に導いた強大で、横暴で、圧倒的な破壊の魔術。
古に封じられ伝説と化した古代の産物に今日に限り蘇ってもらおう。
しかし、どんな魔法なのか想像するのが難しく、指から漏れだしたマナが、辺りの空気を屈折させてしまう。
それも当然だ、今から放つ術は法式魔術師でも唱えられない封じられた術で、何より初めて使う術。最悪失敗だってあり得る。
不安が頭をよぎるも発動準備は整いつつあった。
自分を中心に風が巻き起こり、ローブを乱暴にはためかせる。極限まで圧縮し濃縮されたマナは空気に触れ時折雷光が迸っていた。
最強にして最恐にして最狂。一撃必殺のその技の名は――
「超大規模空間圧壊魔術・我流解釈ッ!!!」
指先から閃光が走り、空高く上げた魔物の塊にぶつかって……消えた。
まさか…………ここにきて……失敗!?
…………燃え尽きそうです。
思ってたよりずっとバトルが難しいし表現に詰まりました。
そしてまだ続くという……。
今日は連続投稿するつもりだったのですが……このままだと頑張って二作となりかねません……。よし、明日もやりましょう!!
それでは! 滝峰つづりでした。




