一瞬の油断
「――せいっ!!」
効率よく力ののった蹴りが熊型の魔物をボールのように飛ばす。
蹴った熊型は、他の魔物を巻き込み何十メートルも転がってピクリとも動かなくなった。
それでも巻き込んだ魔物の大半はすぐに起き上がり、のろのろと村を目指して進行を再開する。
ここまでくると村を目指す理由があるんじゃないかとすら思えてくる。
背後に流しているマナの動きに変化を感じて体勢を低くした。――瞬間、鋭い刃物のようなものが先程まで僕の首があった辺りを裂いた。
「昆虫って恐いな……」
振り向くとそこに蟷螂をそのまま大きくしたような魔物がいる。そいつは捕らえたと思った獲物がおらず首を傾げているようだ。
「これは危険だから排除」
昆虫は、獣とは違って結構あっさり脚とかもげるものである。
こいつが次に鎌を使う前を狙って間合いを詰め、片方の鎌を蹴り上げる。案の定もげやすかった。
狙った腕は少し反発力はあったが鎌は既に宙を舞っている。もう片方での反撃が恐いので距離をとり、その際邪魔になった別の魔物を蹴り飛ばす。
重力に負けて落ちてくる鎌はラッキーなことに巨大蟷螂の頭部に突き刺さり、耳障りな悲鳴を上げて痙攣し始めた。
倒したか……。だけどこれじゃあらちが明かない。
いや、僕のスタミナが底をついたらそこでアウトか。
魔物の攻撃は避けて自分の攻撃はできる限り急所をつく。そんなことをしてもう何分たったんだろう。違うか、まだ数分しかたってないと取るべきだね……。
慣れてない近距離の戦闘で既に膝は震えてるし腕も重たい。マナで強化している拳も皮が抉れて血が滴ってる。今では手の痛みは感じない。けど乱れた呼吸のせいで、焼けるような喉の痛みだけはしつこく僕を蝕んでいた。
けどまあ……、大きな傷がないのは幸か。
横からくる魔物の爪を大きく後ろに跳んで回避。そこはちょうど蟷螂を倒した場所。他の魔物の間合いには入ってないようで、数秒の休憩を確保できた。
呼吸の乱れを少しでも抑えようと深呼吸を試みたが、これが全然上手く出来ない。それどころか余計に苦しく感じた。
――そこに一瞬の油断を生んでしまった。
ギチギチとなにかが鳴く音がして、僕がマナで張っていたセンサーもどきが急速に降り下ろされる妙なものを捉える。
僕は詰まってました呼吸のせいで反応が遅れてしまったのだ。少し考えればすぐに理解出来ていただろうに……。虫の生命力は異常なのだ。
――つまり、蟷螂はまだ生きていた。
降り下ろされた鎌に、無駄と分かっていながら僕は反射的に腕を頭の上に持っていき防御の構えをとる。
ああ…………死んだな、僕。
おお、とうとう落ちこぼれ魔術師も終わりかー。いやー辛かったですよ? 一日一話 ←休んでた日もあっただろ。
まぁ、終わるわけないんですけどね。ですけど今回なんか短かったですね。(いえ、決して楽をしたわけではなく)
最初に比べて文章表現が進化してるのか退化してるのかよくわかりませんね。ですが読者の皆様にこの世界の雰囲気を感じてもらえたのなら幸いです♪
それではまた次回に……。滝峰つづりでした。




