勝たないわけ
ば、魃さん……一日一作辛いんですけど…………あ、どうも、滝峰つづりです。
何だかんだで三日連続ですよ! こんなに投稿したの初めてです(笑)
三日も続いて少しずつ馴れてきてる自分が恐いッス。作品の方の伸びも良く、ユニーク数でも勝利しました。しかし、魃さんも次は負けんぞと気合い充分。単なる気合いだけなら押し負けそうなほどです。まぁ、負ける気はありませんが♪
読者の皆様、私は感想などガンガン募集しております。強制はしてませんが、感想を残してくれると私のテンション、やる気なども上がりますので、是非とも残していって下さい!
プライド――法式魔術は強力だ。ある程度は天性によって左右されるが、それでも法式魔術師はそれぞれ魔術に自信を持っている。少なくとも魔術の理論も理解出来ない馬鹿な無形魔術師に負けるハズがないと思ってるだろう。
その凝り固まった常識を僕が崩すことでどうなるか。
「僕は『力で人をねじ伏せる』そんなことが大嫌いなんだ。でもどうしてか法式魔術師はその意識が強く出てるよね……そのせいで差別も生まれてる」
「それは………」
わかってるさと、シロの目を見て続ける。
「だから……なのかな。僕が練習であれ勝負に勝つことで負けた魔術師がこちら側に回ってしまう可能性を考えるとどうしても攻撃に出れないんだ」
相手のプライドのために――自分と同じ立場に立たせてはいけない。
負けた魔術師が差別の対象になられては目も当てられないから。
「…………クロは優しすぎるよ」
シロはぼそりとこぼし、悲しそうに弁当箱を置いた。
まずいな、話を変えよう。
「でもシロはなんでわかったんだ? その、僕が本気じゃないことに」
「覚えてない? もう何年にも前になるけどちょうどこの辺にシルバーウルフが出現したときのこと」
シルバーウルフ、標高の高い山に生息しており山から下りることが滅多にない気性の荒い狂暴な魔物。そんな異常なことを忘れるハズがない。なにしろ僕は悲鳴を聞いて駆けつけたんだから。
「あ、もしかしてあのときの女の子!?」
あの時は必死だったから人の顔なんて見てなかったけど、思えばあの子も白髪だったかもしれない。
「そう、正解! だから君の戦い方、強さ、術の精度。全部手を抜いてることがバレバレだよ」
まいったなと頬を掻く。戦い方を見られてたのなら実技での僕はそうとうふざけてるように映るだろう。
「あのさ、私ね、良いこと考えちゃったよ。すべて丸く収まるハッピーエンドを」
「ハッピーエンド?」
思わず聞き返した僕に、にこりと笑い立ち上がったシロ。逆光に一瞬目を細めてしまい、無意識に腕を出して影を作った。
「―――クラス全員……いや、学園の生徒全員に勝てばいいんだよ!!」
「は、はぁ!?」
ブッ飛んだ考え方に開いた口がふさがらなかった。
「そしたら負けた側も、こんな強いやつなら負けて当然だとか思うじゃん♪」
「いや、そうだけど……力で人をねじ伏せるのは………」
ガシッと陽射しから目を守っていた腕を強引に引っ張られ立たされる。
「私は今、君に負けました」
「はい?」
「こうなってしまっては私はクラスメイト……いえ、教諭にすら酷いあつかいを受けるかもしれません」
「いやいやいや………」
もう! と、頬を膨らませ睨むシロ。
「大事なのは発想の転換だよクロ。人をねじ伏せるなんて考るんじゃなくて、自分と同じ立場の人を護ると思えばいい。ね、簡単でしょ?」
「………………」
正直驚いた。シロの考えは色々問題が多いし、思想は暴論としか言えない。馬鹿げてる。理にかなってない。はっきり言って無茶苦茶だ。けど――――
「いいね、嫌いじゃない」
――そんな問題だらけの解決法が気に入ってしまった。
「ここで私からのお願いです」
シロは手を放し、草原を一歩一歩踏みしめて歩き始めた。
「お願いって?」
僕はシロの後に続いて歩く。
「簡単のようで難しいことだよ」
「だからそれは何なのかを聞いてるんだけど……」
「私は君にシルバーウルフの件で自分はこの人には勝てないなと悟りました。よって私は君に負けたと思ってます」
「なんか強引だよ?」
するとシロは突然足を止める。息継ぎをしてクルリと振り返ったかと思うと笑顔でこう言った。
「だから、まずは私を護ってよ」
純粋な笑顔だけに僕は頷くことしか出来なかった。